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episode.41
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「しかし」
微笑みは一瞬で消え去る。
「君達はまだ何も知らないんです。迷宮界を日本国に出現させる神の存在を」
「「「神?」」」
俺と守山と天音の声がハモる。
夏奈華は神という言葉を聞き、
「神って、なーに?」
逆に疑問形で返す。
隣にいる仁が「神は神っすよ。たぶん!」と答え、教える。
千葉は困惑した様子で言う。
「……神様ってこと?」
「そうじゃないん?」
戸倉が千葉の言葉に返答した。
「神だと?神とは御利益を齎す神様と認識しているが……その神が迷宮界を出現させてるのか?」
遠山は美男子を真っ直ぐ見たまま、美男子の言う『神』と遠山がその言葉で連想した『神』と噛み合ってるのかを確認する。
「そうです。御利益を齎す神はいますが、今ぼくが言った神は御利益とは真逆の厄災を齎す神ですね。君達は迷宮界で名前を耳にしたかは不明ですが、黒神という厄介な神がいるんですよ」
「黒神⁉︎」
俺は声を上げた。
「ご存知でしたか。そうです。その黒神は君達のいる世界の他に既存する異世界全てに戦争を宣戦したんです。今のところ、他の異世界の神々は静かに戦況を見守っていますが……どの世界にも黒神の手の者が徐々に広がりを見せているのは間違いありませんね。黒神が厄介という所以は、全ての世界を操作出来る力です。好き勝手に操作出来るが故に迷宮界を作り上げ、その中に別の世界を限定的にしろ無制限にしろ組み込み上げるんですよ。それ故に異なる世界と接点のない異世界同士がぶつかり合ってしまう。今現在、酷い有様ではないにしろ……君達が攻略した新たな迷宮界が生まれた以上、他の世界にも混沌と混乱は広がるでしょうね。君達とは逆に君達の世界にやってくる者もいずれは出てくるでしょうね。新道君、君の反応から察するに黒神の名をご存知なんでしょう?」
「ああ。知ってる。第3階層にいた人喰いも、第5階層にいた僧侶や革ジャン仮面も、黒神と繋がってるのは間違いないと思う。あんたの話を聞いて、人喰いがあの時言っていた話が歯車みたいに噛み合って確信した。やっぱり、そいつが元凶なんだな?」
「そうですね。黒神こそ全ての元凶であり、始まりなんですよ。といっても今の話全てではないにしろ、あれの受け売りで聞いた話に変わりないんですけどね」
美男子は不敵に笑う。
口は笑ってるのに眼は一切笑ってない。
「ぼくが話せる迷宮界については、ここまでです。あそこで汗を流すのを拭くだけの賢治よりは情報を君達に教えられたと思いますよ。最後にぼくが所属する組織は、どんな組織か話を聞いて分かりましたよね?この世界を、人々を駒の一つとして使い、可能な限りの人々を守る組織です。君達は迷宮界を攻略して帰還した。君達が望めば、組織はいつでも君達を歓迎するでしょう。今すぐ日常に戻りたいなら自由に戻るのをぼくが許可します」
汗を拭う黒岩は美男子の発言を聞き、バッと顔を上げる。
黒岩の顔は鬼気迫るものがあった。
「それは貴方の権限では――」
「少し黙りましょうか?」
美男子は黒岩を見下ろす。
「……あとで何を言われるか、知りませんよ」
美男子の眼差しに怖気ずき、黒岩は顔を下げる。
「言われなくとも、それくらい分かってますよ。……賢治から聞く予定だった迷宮界についてのお話はこれにて終了です。では行きましょうか。帰り支度の用意はさせます」
美男子は立ち上がるように促す。
俺たちは立ち上がる。それを合図に美男子は黒岩が使っていた短い棒を軽く振るい、温もりを残した椅子を元の位置に一瞬で戻す。
散らばった資料もまた椅子と同じく、宙に浮かせて1束にまとめ上げる。
まとめ上げられた資料と短い棒を机に置き、美男子は黒岩を放置する形で大聖堂内の入り口へ向かって歩き出した。
微笑みは一瞬で消え去る。
「君達はまだ何も知らないんです。迷宮界を日本国に出現させる神の存在を」
「「「神?」」」
俺と守山と天音の声がハモる。
夏奈華は神という言葉を聞き、
「神って、なーに?」
逆に疑問形で返す。
隣にいる仁が「神は神っすよ。たぶん!」と答え、教える。
千葉は困惑した様子で言う。
「……神様ってこと?」
「そうじゃないん?」
戸倉が千葉の言葉に返答した。
「神だと?神とは御利益を齎す神様と認識しているが……その神が迷宮界を出現させてるのか?」
遠山は美男子を真っ直ぐ見たまま、美男子の言う『神』と遠山がその言葉で連想した『神』と噛み合ってるのかを確認する。
「そうです。御利益を齎す神はいますが、今ぼくが言った神は御利益とは真逆の厄災を齎す神ですね。君達は迷宮界で名前を耳にしたかは不明ですが、黒神という厄介な神がいるんですよ」
「黒神⁉︎」
俺は声を上げた。
「ご存知でしたか。そうです。その黒神は君達のいる世界の他に既存する異世界全てに戦争を宣戦したんです。今のところ、他の異世界の神々は静かに戦況を見守っていますが……どの世界にも黒神の手の者が徐々に広がりを見せているのは間違いありませんね。黒神が厄介という所以は、全ての世界を操作出来る力です。好き勝手に操作出来るが故に迷宮界を作り上げ、その中に別の世界を限定的にしろ無制限にしろ組み込み上げるんですよ。それ故に異なる世界と接点のない異世界同士がぶつかり合ってしまう。今現在、酷い有様ではないにしろ……君達が攻略した新たな迷宮界が生まれた以上、他の世界にも混沌と混乱は広がるでしょうね。君達とは逆に君達の世界にやってくる者もいずれは出てくるでしょうね。新道君、君の反応から察するに黒神の名をご存知なんでしょう?」
「ああ。知ってる。第3階層にいた人喰いも、第5階層にいた僧侶や革ジャン仮面も、黒神と繋がってるのは間違いないと思う。あんたの話を聞いて、人喰いがあの時言っていた話が歯車みたいに噛み合って確信した。やっぱり、そいつが元凶なんだな?」
「そうですね。黒神こそ全ての元凶であり、始まりなんですよ。といっても今の話全てではないにしろ、あれの受け売りで聞いた話に変わりないんですけどね」
美男子は不敵に笑う。
口は笑ってるのに眼は一切笑ってない。
「ぼくが話せる迷宮界については、ここまでです。あそこで汗を流すのを拭くだけの賢治よりは情報を君達に教えられたと思いますよ。最後にぼくが所属する組織は、どんな組織か話を聞いて分かりましたよね?この世界を、人々を駒の一つとして使い、可能な限りの人々を守る組織です。君達は迷宮界を攻略して帰還した。君達が望めば、組織はいつでも君達を歓迎するでしょう。今すぐ日常に戻りたいなら自由に戻るのをぼくが許可します」
汗を拭う黒岩は美男子の発言を聞き、バッと顔を上げる。
黒岩の顔は鬼気迫るものがあった。
「それは貴方の権限では――」
「少し黙りましょうか?」
美男子は黒岩を見下ろす。
「……あとで何を言われるか、知りませんよ」
美男子の眼差しに怖気ずき、黒岩は顔を下げる。
「言われなくとも、それくらい分かってますよ。……賢治から聞く予定だった迷宮界についてのお話はこれにて終了です。では行きましょうか。帰り支度の用意はさせます」
美男子は立ち上がるように促す。
俺たちは立ち上がる。それを合図に美男子は黒岩が使っていた短い棒を軽く振るい、温もりを残した椅子を元の位置に一瞬で戻す。
散らばった資料もまた椅子と同じく、宙に浮かせて1束にまとめ上げる。
まとめ上げられた資料と短い棒を机に置き、美男子は黒岩を放置する形で大聖堂内の入り口へ向かって歩き出した。
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