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episode.40
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美男子は気になった球体があれば、大小関係なく手を触れてる。
触れた球体から手を離す。
それを繰り返す。
黒岩も美男子と同様の動作をする。
「凄いですね。今回の迷宮界は今までのどれとも違いますね。別の世界に渡り歩いてるのもあれば、虹神様に転生の機会を得ている方までいらっしゃいますね」
美男子は口元を緩め、蒼眼をギラギラと光らせる。
「そうみたいですね。これは私共の知ってる種類のどれにも該当しません。貴方達が向かった第7スポットは、そのどれにも該当しない新たな種類です。その事が今分かりました」
黒岩は映像が流れる球体をそのまま浮かせ、気になった映像を見つけるとそこに足を運び、眺めて触れを繰り返し、別の球体へ足を運ぶ。
「今回の迷宮界……名付けるなら《階層界》でしょうか」
黒岩は俺たちがいた迷宮界を階層界と名付ける。
確かに第1階層だったり、第5階層だったりと色々とあったからな。
「それで間違いないでしょうね。進む毎に違う異世界に渡る事が可能な迷宮界。迷宮界調査隊の意思によっては、そのまま永住も可能でしょうね。こんな事なら、ぼく自ら足を運ぶべきでしたね。そうすれば、少なくとも2つの世界は崩壊出来たと思いますよ」
美男子は黒岩の肩に右手を当て、物凄い発言を微笑み言った。
黒岩の頭からは再び汗が流れ出し、力が抜けたようにヘロヘロと両膝を床に着く。
「申し訳ありません。私共の組織の中で、切り札である貴方を全容不明な迷宮界へは行かせられなかったのです。貴方を万が一にも失う事があれば、私共は代表に――」
「そうでしたね。あれは人を駒としか見ていない人でしたね。あれのおかげで、ぼくは大事な人達を沢山失う事になったんですからね。今でも忘れていませんよ?ぼくにとっては貴方も、あれと同罪だと思っていますから」
両膝を床に着いた黒岩の耳に美男子は小声でボソッと呟いた。
余りにも小さい声で、何を言ったのか聞き取れなかった。
黒岩はガクリと頭を床に向け、頭から汗が濁流のように流れ落ちる。
黒岩の様子が尋常じゃない。
何を言われた?何を言われたんだ?
俺が気になってると美男子が此方を向き、一歩二歩と近づいてくる。
「賢治は話せる状況じゃありませんね。彼に話してもらいたかったのですが、この際ぼくが急遽代役として話しても問題ないでしょう。無関係な君達が巻き込まれた一件は日本国が抱える最も難解な問題です。その為に君達が拉致られた一連の騒動はニュースにすら上がっていません」
ニュースにすら上がってない?
「それはおかしいって。友達や家族が行方不明になれば、心配するはずだ」
「新道先生の言う通りっす!」
左端に座る仁が同意の声を上げる。
視線を向けると仁は左腕を上げてる。
夏奈華はコクコクと頷いてる。
「拉致した際に目撃者でもいた場合、問題視される。目撃者が警察に駆け込んでいれば、間違いなく警察沙汰になる。警察が動けば、ニュースで取り上げられないはずがない」
遠山の言う通りだ。
「そうじゃん。ありえないっしょ」
「そうに決まってるし、うちなんて、会社の後輩と一緒にいたし。今頃ってか、もう警察にだって届けられてるはずだし」
それは決定的だな。だったら尚更、おかしいだろ?
「僕もそれに同感だよ。家族が全力で探してるのは確実だよ」
天音の家は凄そうなイメージあるからな。全力で探してるって天音が思うなら、そうに違いないな。
「おじさんなんて、魔法少女ペペリティーンの最終回先行上映に行けなかったんだよ。おじさんの古い友人が、きっと捜索願出してるはず。そうに決まってる。おじさんが先行上映回に足を運ばないなんて、おかしい。そう友人達は思ってるはずだ」
守山のアニメへの熱意は俺たち全員が知ってる。だったら古い友人なら、俺たち以上に守山の熱意をアニメに対する愛を知ってるはずだ。守山の友人も捜索願出してるかもな。
「友達?家族?後輩?目撃者?そうですね。通常なら心配するでしょうね。後輩の方、目撃者になった方なら、警察に駆け込む可能性は高いでしょうね。しかし君達が関わった一件は、それ以上なんです。どれだけ家族が声を上げようと友達が近代の文通で呼びかけようと後輩や目撃者が警察に捜索願を出そうとその全てが上層部に報告され、瞬く間に潰されてしまう。それが容易にまかり通ってしまうんですよ。この一件では……。君達は知っていますか?日本国内で人が失踪や行方不明になってる数を」
「……まじかよ」
「……それガチなら、ガチのガチでやばいんだけど……」
「……潰されるって……やばすぎじゃん」
「……わけわからないっす……行方不明なんて、俺は知らないっす……」
「……失踪?行方不明?……何言ってるんだよ?」
「……おじさん達が関わったの……そんなに闇が深いとは……」
俺や千葉達が驚きの声を口にする中、遠山だけが違った。
遠山だけが前を向いたまま、美男子の質問に答える。
「年間10万人を上回る数だ。そうだろう?」
美男子は頷く。
「そうです。年間両手では数えきれない数多くの方々が痕跡を残さずに失踪しては行方不明者となり、後を絶たないんです。連鎖が途切れないのは……なぜか?分かりますか?」
「まさか⁉︎」
遠山は叫んだ。
遠山の叫びで、俺も美男子が何を言おうとしてるのか?何を示そうとしているのか?勘づいた。
「……もしかして……」
「……そおいうこと?……」
「……ありえねーっす……」
「……もしかしてじゃないよ……これは確信犯だよ……」
「……一歩先は闇じゃないか……深い闇を覗かされた気分だよ……」
千葉達も答えに辿り着いたのか?明白ではないが、全員が全員思う点はあったようだ。
「お分かりいただけましたか?そうですよ。今君達が思った通りです。年間10万越えの行方不明者が君達と同じく、この一件に関わってるんですよ。家族が、友達が、後輩が、目撃者が、知り合いが声を上げても何か事件沙汰という証拠がない限り、日本国の警察は機能しません。ぼくが所属してる組織は抜かりなく、事に及んでいます。その為に証拠という証拠は1つも現場には残してはいません。一緒に持ち運んで来たものは持ち運ぶ前に処理しています。携帯やスマホ、防犯機器を着用していたとしてもGPSは作動しません。作動していたとしても、君達が運ばれた場所を特定する事すら不可能なんですよ。本当に徹底しますよね?徹底してるのに拉致した全ての人々に解明した範疇の迷宮界の全容を教えようともしないんです。君達も思ったでしょう?もっと情報を聞かされていたら、知ってさえいたら、1人でも多くの人を救えたはずなのにと?そんな無理難題を突きつけられて、君達は帰還したんですよ?初見で、未知の迷宮界を。第1~6スポットの中でも、最短記録で、犠牲者を最小限に抑えて帰還したんですよ。君達同様に迷宮界攻略もしくはお零れや運良くで戻ってきた方々もいますが、君達のような初見攻略者はいません。君達は誇っていいんですよ」
美男子は初めて心から微笑んだ。
触れた球体から手を離す。
それを繰り返す。
黒岩も美男子と同様の動作をする。
「凄いですね。今回の迷宮界は今までのどれとも違いますね。別の世界に渡り歩いてるのもあれば、虹神様に転生の機会を得ている方までいらっしゃいますね」
美男子は口元を緩め、蒼眼をギラギラと光らせる。
「そうみたいですね。これは私共の知ってる種類のどれにも該当しません。貴方達が向かった第7スポットは、そのどれにも該当しない新たな種類です。その事が今分かりました」
黒岩は映像が流れる球体をそのまま浮かせ、気になった映像を見つけるとそこに足を運び、眺めて触れを繰り返し、別の球体へ足を運ぶ。
「今回の迷宮界……名付けるなら《階層界》でしょうか」
黒岩は俺たちがいた迷宮界を階層界と名付ける。
確かに第1階層だったり、第5階層だったりと色々とあったからな。
「それで間違いないでしょうね。進む毎に違う異世界に渡る事が可能な迷宮界。迷宮界調査隊の意思によっては、そのまま永住も可能でしょうね。こんな事なら、ぼく自ら足を運ぶべきでしたね。そうすれば、少なくとも2つの世界は崩壊出来たと思いますよ」
美男子は黒岩の肩に右手を当て、物凄い発言を微笑み言った。
黒岩の頭からは再び汗が流れ出し、力が抜けたようにヘロヘロと両膝を床に着く。
「申し訳ありません。私共の組織の中で、切り札である貴方を全容不明な迷宮界へは行かせられなかったのです。貴方を万が一にも失う事があれば、私共は代表に――」
「そうでしたね。あれは人を駒としか見ていない人でしたね。あれのおかげで、ぼくは大事な人達を沢山失う事になったんですからね。今でも忘れていませんよ?ぼくにとっては貴方も、あれと同罪だと思っていますから」
両膝を床に着いた黒岩の耳に美男子は小声でボソッと呟いた。
余りにも小さい声で、何を言ったのか聞き取れなかった。
黒岩はガクリと頭を床に向け、頭から汗が濁流のように流れ落ちる。
黒岩の様子が尋常じゃない。
何を言われた?何を言われたんだ?
俺が気になってると美男子が此方を向き、一歩二歩と近づいてくる。
「賢治は話せる状況じゃありませんね。彼に話してもらいたかったのですが、この際ぼくが急遽代役として話しても問題ないでしょう。無関係な君達が巻き込まれた一件は日本国が抱える最も難解な問題です。その為に君達が拉致られた一連の騒動はニュースにすら上がっていません」
ニュースにすら上がってない?
「それはおかしいって。友達や家族が行方不明になれば、心配するはずだ」
「新道先生の言う通りっす!」
左端に座る仁が同意の声を上げる。
視線を向けると仁は左腕を上げてる。
夏奈華はコクコクと頷いてる。
「拉致した際に目撃者でもいた場合、問題視される。目撃者が警察に駆け込んでいれば、間違いなく警察沙汰になる。警察が動けば、ニュースで取り上げられないはずがない」
遠山の言う通りだ。
「そうじゃん。ありえないっしょ」
「そうに決まってるし、うちなんて、会社の後輩と一緒にいたし。今頃ってか、もう警察にだって届けられてるはずだし」
それは決定的だな。だったら尚更、おかしいだろ?
「僕もそれに同感だよ。家族が全力で探してるのは確実だよ」
天音の家は凄そうなイメージあるからな。全力で探してるって天音が思うなら、そうに違いないな。
「おじさんなんて、魔法少女ペペリティーンの最終回先行上映に行けなかったんだよ。おじさんの古い友人が、きっと捜索願出してるはず。そうに決まってる。おじさんが先行上映回に足を運ばないなんて、おかしい。そう友人達は思ってるはずだ」
守山のアニメへの熱意は俺たち全員が知ってる。だったら古い友人なら、俺たち以上に守山の熱意をアニメに対する愛を知ってるはずだ。守山の友人も捜索願出してるかもな。
「友達?家族?後輩?目撃者?そうですね。通常なら心配するでしょうね。後輩の方、目撃者になった方なら、警察に駆け込む可能性は高いでしょうね。しかし君達が関わった一件は、それ以上なんです。どれだけ家族が声を上げようと友達が近代の文通で呼びかけようと後輩や目撃者が警察に捜索願を出そうとその全てが上層部に報告され、瞬く間に潰されてしまう。それが容易にまかり通ってしまうんですよ。この一件では……。君達は知っていますか?日本国内で人が失踪や行方不明になってる数を」
「……まじかよ」
「……それガチなら、ガチのガチでやばいんだけど……」
「……潰されるって……やばすぎじゃん」
「……わけわからないっす……行方不明なんて、俺は知らないっす……」
「……失踪?行方不明?……何言ってるんだよ?」
「……おじさん達が関わったの……そんなに闇が深いとは……」
俺や千葉達が驚きの声を口にする中、遠山だけが違った。
遠山だけが前を向いたまま、美男子の質問に答える。
「年間10万人を上回る数だ。そうだろう?」
美男子は頷く。
「そうです。年間両手では数えきれない数多くの方々が痕跡を残さずに失踪しては行方不明者となり、後を絶たないんです。連鎖が途切れないのは……なぜか?分かりますか?」
「まさか⁉︎」
遠山は叫んだ。
遠山の叫びで、俺も美男子が何を言おうとしてるのか?何を示そうとしているのか?勘づいた。
「……もしかして……」
「……そおいうこと?……」
「……ありえねーっす……」
「……もしかしてじゃないよ……これは確信犯だよ……」
「……一歩先は闇じゃないか……深い闇を覗かされた気分だよ……」
千葉達も答えに辿り着いたのか?明白ではないが、全員が全員思う点はあったようだ。
「お分かりいただけましたか?そうですよ。今君達が思った通りです。年間10万越えの行方不明者が君達と同じく、この一件に関わってるんですよ。家族が、友達が、後輩が、目撃者が、知り合いが声を上げても何か事件沙汰という証拠がない限り、日本国の警察は機能しません。ぼくが所属してる組織は抜かりなく、事に及んでいます。その為に証拠という証拠は1つも現場には残してはいません。一緒に持ち運んで来たものは持ち運ぶ前に処理しています。携帯やスマホ、防犯機器を着用していたとしてもGPSは作動しません。作動していたとしても、君達が運ばれた場所を特定する事すら不可能なんですよ。本当に徹底しますよね?徹底してるのに拉致した全ての人々に解明した範疇の迷宮界の全容を教えようともしないんです。君達も思ったでしょう?もっと情報を聞かされていたら、知ってさえいたら、1人でも多くの人を救えたはずなのにと?そんな無理難題を突きつけられて、君達は帰還したんですよ?初見で、未知の迷宮界を。第1~6スポットの中でも、最短記録で、犠牲者を最小限に抑えて帰還したんですよ。君達同様に迷宮界攻略もしくはお零れや運良くで戻ってきた方々もいますが、君達のような初見攻略者はいません。君達は誇っていいんですよ」
美男子は初めて心から微笑んだ。
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