ダレカノセカイ

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episode.34

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「最後は君ですね」
 美男子が俺に視線を向ける。
「なんで……なんでこんなことが出来るんだよ⁉︎あんたは本当に人間か⁉︎まだ年端もない子供を殺したんだぞ⁉︎一緒に戦った遠山達だって、そうだ!俺たちはただ……ただ理不尽な目にあっただけだったのに……なんでこうなるんだよ⁉︎あんたは悪魔か⁉︎」
 左眼から今も血の涙が流れる。
 友を、心友を、仲間を失った悲しみの涙だ。
 血の涙は止むことはない。
 こいつを倒す、その時まで。
 俺は美男子を一直線に睨み、左手で自分の胸を叩く。
 美男子は俺がどうして、自分の胸を叩いたか理解出来てない。
 これは自分自身への誓いだ。
 友に誓う。心友に誓う。仲間に誓う。
 俺が仇を取ると。
「威勢の良い少年もいたものですね。この時代にも、そのような眼を持つ若者がいるとは……時代を早々に嘆くものではないですね。では最後の相手をしてもらいましょうか?」
 美男子が俺の間合いに瞼を閉じるよりも先に姿を現わす。
 速い!
 だが、予測していた。
 俺は左拳を全力で放つ。
 美男子は軽々と右に避ける。
 それも読めていた。
 ズン!
 右拳を早い段階で放っていたのが、クリンヒットする。
 衝撃波が全体に広がる。
「――なに⁉︎」
 俺はクリンヒットしたのにも関わらず、その場で動きを止めてるだけの美男子を目の当たりにして左眼を見開く。
「気づきましたか?」
 美男子の顔は、俺の全力を受けたにしては腫れも頬を赤くさせてもいない。
 俺の全力を受けて、ほぼ無傷。微動打にしていなかった。
「今の一撃はお見事でしたね。……そう言うと思いました?お見事と言うには甘過ぎますね。一撃を放ったら、次の手を。次の手を放ったら、更に次の手を。将棋と同じ要領です。相手がどう動くのか?自分がどう立ち回りをすれば、相手をどう動かせるのか?先の先を読む。それが出来れば、更に先の先の先の先を読む。それこそが侍の時代から続く《先読み》の力ですよ」
 スパン!
 美男子は笑顔のまま、俺の左腕を斬った。
「それを教訓としてもらいたいですけど、ぼくは戦う相手を決めたら殺すまで戦うのが、ぼく自身の決め事でして……残念ですけど、ここで死んでください」
 ズバッ!スパパパパパパパパパッ!
 俺の頭が宙を飛ぶ。
 くるくる回る視界の先に俺の体が微塵切りにされ、細かく刻まれる姿が映る。
 “新道!”
 “新道くん!”
 “新道!”
 “新道くん!”
 “新道先生!”
 “新道君!”
 “お兄ちゃん!”
 ここにはいるはずもない。
 ここで聞こえるはずがない。
 遠山達の悲鳴に似た叫び声が、幻聴となって聞こえる。
 幻聴か。俺も、とうとう重傷だな。
 そういえば、遠山以外の誰も知らないんだよな。俺が不老不死ってこと。俺がみんなの前で殺されるのは暗黒騎士以来なかったからな。次にみんなの前で殺された時は正直に言おう。そう決めてたのに……まさか、みんな元いた世界……日本に戻って来て早々こんな結末絶望が待ってるなんて……誰も思ってなかった。俺ですら、想像してなかった。みんなに不老不死であることを結局教える機会はなかった。こんな結末が待ってると知っていれば、夏奈華が俺を庇わなくていいように不老不死だと真っ先に伝えたのに……もうそれは叶わない。
 過去を悔やんでも仕方ない。
 今は目の前に集中だ。
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