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episode.30
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「もうやめてくれー‼︎」
天音が叫んだ。
銃声が響く。
「凝りませんね?何度も、ぼくは見せましたよね?銃弾を受け止めては地面に捨てる姿を……それなのに同じ過ちを繰り返すとは情けないですね。そこの男性も飽きました」
美男子が消える。
俺は夏奈華を一点に見つめ、両手を伸ばす。
「……そ、んな……ななか……夏奈華‼︎」
俺は夏奈華の元に駆けつける。
「汝の姿をおじさんの姿に宿せ!《魔装変身》‼︎」
守山の声が耳に聞こえる。
声がする方向へ視線を向けたい気持ちはある。でも今はそれどころじゃない。
俺はうつ伏せに倒れた夏奈華を両腕で抱き寄せ、右手で体温を感じる。
冷たい。
冷たくなっていってる。
俺は全身に嫌な汗が流れ出す。
「夏奈華⁈夏奈華⁉︎おい起きてくれよ⁉︎なぁ、夏奈華返事してくれよ‼︎⁉︎」
夏奈華の頬を何度も触り、温かい熱が冷めるのを感じた。
夏奈華は血を口から流し、両目は虚ろだ。
「……そんなこと……あってたまるか!……夏奈華!起きてくれよ!夏奈華!なぁー返事してくれよ‼︎⁉︎」
俺は夏奈華の冷たくなる一方の体を力強く全身で抱きしめた。抱きしめて、俺の体温で夏奈華の冷たくなる体温を上げる。上げているはずなのに夏奈華は目を開けない。
「千葉……さん……千葉さん‼︎夏奈華を……夏奈華に回復をー‼︎」
俺は千葉のいる方向へ顔を向ける。
千葉は戸倉に付ききりで、俺の言葉に返事してくれない。
「そんな……そんなのありかよ⁉︎……千葉さん!千葉さん‼︎」
俺は千葉の元に夏奈華を連れて行く。
その際に右肩に顔が乗った夏奈華がボソッと呟く。
「……おにぃ……ちゃ……ん……生きて……」
「夏奈華⁉︎おい、夏奈華‼︎⁉︎俺は生きてるぞ!だから返事してくれ‼︎なぁーもう一回だけ……頼む‼︎夏奈華、返事してくれー‼︎⁉︎」
俺は千葉の元に辿り着く。
千葉は戸倉に全魔力を集中していて、他の人に回復を回す力はないと言われた。戸倉に集中して、俺の顔は一切見ない。
「そんなのありかよ⁉︎夏奈華が、夏奈華が瀕死なんだぞー‼︎⁉︎」
俺は地面に寝かせた夏奈華を見つめたまま、大きく叫んだ。
そして千葉は俺の方に顔を向かせ、
「夏奈華ちゃんは……もう死んでる」
見ようとしなかった現実を突きつける。
千葉の言葉が頭の中をぐるぐると回る。
頭がどうにかなりそうだ。
夏奈華が死んだ?ありえない。
夏奈華はまだ生きてる。死んでなどいない。
「俺は……俺は……」
両手を強く握りしめ、道路の硬いアスファルトに拳を振るう。
ズン!
アスファルトの地面に亀裂が入る。
許せない。
夏奈華の言葉が頭に何十、何百、何千となって同じ言葉がリピートされる。
『お兄ちゃん、生きて』と。
俺は夏奈華の隣に漆黒スーツで、ぐっすり寝かせていたグリムを寝かせる。
あいつだけは許せない。
あいつは俺が倒す!
俺は自分の足で立ち上がる。
後ろを振り返ると天音が、美少女に変身した守山が、仁が美男子と戦っている。
美男子は3人を相手取り、俺のいる方向は視界に入ってない。
行ける!
俺は全開でアスファルトを蹴った。
コンマ数秒で、美男子の背中に一撃が放てる距離に間合いを詰める。
「この一撃で終わりだ!」
俺は叫び、左拳に全神経を研ぎ澄まして放った。
ブォーン!
「――見えてますよ。敵の後ろを狙うとは卑怯と言えますが……一撃を振るうと同時に声を上げたので卑怯とは呼べないですね。あのまま叫ばなければ、もしかしたらもしかしたかもしれませんよ?」
風を、空気を、空間を、俺の放った風圧のみで捻じ曲げる。それだけの威力があったのに関わらず、美男子は髪の毛一本も風圧に流されず、今立ってる位置から飛ばされる事もなかった。
俺の全神経を注いで放った一撃は、美男子に届かなかった。あっさり避けられた俺の一撃。俺は地面に足を着く前に「少し邪魔ですね。少しくたばっててください」と美男子が放った足蹴りをもろにダイレクトにど真ん中に受けた。
「――がはっ⁉︎」
美男子の足蹴りは重い一撃だった。
俺は軽々と後方に吹き飛ばされる。
空中で勢いを殺せず、そのままガードレールに背中から衝突する。
ガタン‼︎
「くはっ⁉︎」
俺は体内の空気を吐き出してしまう。
力が入らない。
力が出ない俺は力無く、地面にお尻を着いた。
両脚に力が入らない。
両腕にも力が入らない。
力のベクトルが、まるで制限されたかのように1ミリも体を動かせない。
動かない俺の体。
ガードレールが背もたれとなる。
身動きが取れない状況で、俺の左眼だけが美男子と3人の戦いを視野に映す。
天音が叫んだ。
銃声が響く。
「凝りませんね?何度も、ぼくは見せましたよね?銃弾を受け止めては地面に捨てる姿を……それなのに同じ過ちを繰り返すとは情けないですね。そこの男性も飽きました」
美男子が消える。
俺は夏奈華を一点に見つめ、両手を伸ばす。
「……そ、んな……ななか……夏奈華‼︎」
俺は夏奈華の元に駆けつける。
「汝の姿をおじさんの姿に宿せ!《魔装変身》‼︎」
守山の声が耳に聞こえる。
声がする方向へ視線を向けたい気持ちはある。でも今はそれどころじゃない。
俺はうつ伏せに倒れた夏奈華を両腕で抱き寄せ、右手で体温を感じる。
冷たい。
冷たくなっていってる。
俺は全身に嫌な汗が流れ出す。
「夏奈華⁈夏奈華⁉︎おい起きてくれよ⁉︎なぁ、夏奈華返事してくれよ‼︎⁉︎」
夏奈華の頬を何度も触り、温かい熱が冷めるのを感じた。
夏奈華は血を口から流し、両目は虚ろだ。
「……そんなこと……あってたまるか!……夏奈華!起きてくれよ!夏奈華!なぁー返事してくれよ‼︎⁉︎」
俺は夏奈華の冷たくなる一方の体を力強く全身で抱きしめた。抱きしめて、俺の体温で夏奈華の冷たくなる体温を上げる。上げているはずなのに夏奈華は目を開けない。
「千葉……さん……千葉さん‼︎夏奈華を……夏奈華に回復をー‼︎」
俺は千葉のいる方向へ顔を向ける。
千葉は戸倉に付ききりで、俺の言葉に返事してくれない。
「そんな……そんなのありかよ⁉︎……千葉さん!千葉さん‼︎」
俺は千葉の元に夏奈華を連れて行く。
その際に右肩に顔が乗った夏奈華がボソッと呟く。
「……おにぃ……ちゃ……ん……生きて……」
「夏奈華⁉︎おい、夏奈華‼︎⁉︎俺は生きてるぞ!だから返事してくれ‼︎なぁーもう一回だけ……頼む‼︎夏奈華、返事してくれー‼︎⁉︎」
俺は千葉の元に辿り着く。
千葉は戸倉に全魔力を集中していて、他の人に回復を回す力はないと言われた。戸倉に集中して、俺の顔は一切見ない。
「そんなのありかよ⁉︎夏奈華が、夏奈華が瀕死なんだぞー‼︎⁉︎」
俺は地面に寝かせた夏奈華を見つめたまま、大きく叫んだ。
そして千葉は俺の方に顔を向かせ、
「夏奈華ちゃんは……もう死んでる」
見ようとしなかった現実を突きつける。
千葉の言葉が頭の中をぐるぐると回る。
頭がどうにかなりそうだ。
夏奈華が死んだ?ありえない。
夏奈華はまだ生きてる。死んでなどいない。
「俺は……俺は……」
両手を強く握りしめ、道路の硬いアスファルトに拳を振るう。
ズン!
アスファルトの地面に亀裂が入る。
許せない。
夏奈華の言葉が頭に何十、何百、何千となって同じ言葉がリピートされる。
『お兄ちゃん、生きて』と。
俺は夏奈華の隣に漆黒スーツで、ぐっすり寝かせていたグリムを寝かせる。
あいつだけは許せない。
あいつは俺が倒す!
俺は自分の足で立ち上がる。
後ろを振り返ると天音が、美少女に変身した守山が、仁が美男子と戦っている。
美男子は3人を相手取り、俺のいる方向は視界に入ってない。
行ける!
俺は全開でアスファルトを蹴った。
コンマ数秒で、美男子の背中に一撃が放てる距離に間合いを詰める。
「この一撃で終わりだ!」
俺は叫び、左拳に全神経を研ぎ澄まして放った。
ブォーン!
「――見えてますよ。敵の後ろを狙うとは卑怯と言えますが……一撃を振るうと同時に声を上げたので卑怯とは呼べないですね。あのまま叫ばなければ、もしかしたらもしかしたかもしれませんよ?」
風を、空気を、空間を、俺の放った風圧のみで捻じ曲げる。それだけの威力があったのに関わらず、美男子は髪の毛一本も風圧に流されず、今立ってる位置から飛ばされる事もなかった。
俺の全神経を注いで放った一撃は、美男子に届かなかった。あっさり避けられた俺の一撃。俺は地面に足を着く前に「少し邪魔ですね。少しくたばっててください」と美男子が放った足蹴りをもろにダイレクトにど真ん中に受けた。
「――がはっ⁉︎」
美男子の足蹴りは重い一撃だった。
俺は軽々と後方に吹き飛ばされる。
空中で勢いを殺せず、そのままガードレールに背中から衝突する。
ガタン‼︎
「くはっ⁉︎」
俺は体内の空気を吐き出してしまう。
力が入らない。
力が出ない俺は力無く、地面にお尻を着いた。
両脚に力が入らない。
両腕にも力が入らない。
力のベクトルが、まるで制限されたかのように1ミリも体を動かせない。
動かない俺の体。
ガードレールが背もたれとなる。
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