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episode.57
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「兄貴、また迷宮界に関わってしもたな」
原因解明を急ぐ中、何に巻き込まれたのか?皆目検討がついた。
俺とグリムが今いる場所。
ここは迷宮界だ。
迷宮界で何度も聞こえた声が、先を急ぐ暗闇の中で再び聞こえた。
あの時と同じ声が、俺の視界に捉えた敵の名前とレベルと推定脅威度を教えてくれる。
それに進化でもしたのか?
視界に名前とレベルと推定脅威度を表示してくれる。視界を妨げないように工夫してるのか、中央に表示されてすぐに左四隅に表示を切り替えてくれる。おまけ付きだ。
「ああ。もう関わることもないと思ってたのにな。何者かは皆目検討もつかないが、瑞樹宅に行ってる留守を狙って侵入し、俺が帰ってくるその時を待っていたのか?タイミングよく俺たちが帰ってきたのか?自分の姿を俺たちに見せないために意表を突いて、黒フォンを投げるなり、黒フォンに転送しておいた映画館への招待券で俺とグリムごと、迷宮界に引きずり込むとは瑞樹宅で何気なく楽しい会話をしてる時には想像も予想すらもしてなかったな」
「わいもそんなんがあるとは知らんかったわ。迷宮界は特定の場所に出現するだけで、特定の場所に近づきさえせんかったら迷い込むことも、入ることもあらへんのにな。またわいらの知らん間に新たな迷宮界が誕生したってわけやろな」
「誕生したって言っても、あのクマの口ぶりからして、俺たちが関わったのは9回目らしいけどな。知らない間に8回も、何も知らない人間を迷宮界に引きずり込んでたんだろうな」
「そうやな。兄貴の言う通りやでー。あんクマは、わいと同じ……守護者かもしれへん。奴のレベルは映像越しで、見れへんかったけど……兄貴、あんクマが現れた際には油断は禁物やで」
「分かってる。言われなくても、油断はしない!」
俺は目の前に突如現れたディケイウォーカーを軽く打撃を与え、撃破する。
[対象:ディケイウォーカー 消滅]
「っちゅうても、あんクマ以外は油断してても倒せる相手やけどな。わいらを脅かすレベルがいるかと思えば、レベル10やから肩すかしにもいいところやでー」
「レベル10以外にも、ボス的な奴がいる可能性もあるしな。状況が状況なだけに最後まで映画館にいたのは良かったが、出遅れ感が半端ないな。とりあえずはクマが言っていた出口を探すのと巻き込まれた人たちを可能な限り助けるのを最優先で行こう。グリムは俺とわかれて、人助けを頼む」
「あい。わいに任せときー!」
グリムは俺の左肩から飛び降り、暗闇の中に姿を溶け込み消す。
「何かあったら、すぐに連絡くれよな」
「わかったでー!任せときー!」
暗闇の中から、グリムの声が大きく聞こえる。
グリムと主従契約を結んでいる恩恵として、グリムが俺と離れていようと何処に今現在いるか?GPS機能のように居場所が逐一分かる。
連絡手段も、グリムと心が繋がっているために相手に伝えたいと強く念じれば、すぐに連絡のやり取りが可能。
グリムと主従契約を結んだ際に手に入れたスキル《心話》で、どんなに離れていようと容易に話すことが出来る。
俺は暗闇を無闇矢鱈と突き進まない。
進んだところで、視界は土砂降りの雨と暗闇で何処を進んでいるのか?簡単には確認が取れない。
簡単に確認が出来ないだけで、暗闇を見通す目は今までの経験から持ち合わせているんだけどな。
ただ俺やグリムと違って、迷宮界に巻き込まれた人たちは暗闇に慣れてもいなければ、土砂降りの雨が追加されたこの場所を突き進むのは困難と言える。
見えない。
確認できない。
自分の居場所が不確か。
この3コンボがある中で、敵に遭遇した場合、逃げ切る事は不可能だ。
足場は、ぬかるみ。
安定しない足場で、敵から逃げるのは容易じゃない。
運動に長けた人間なら回避出来る可能性もなきにあらずだが、日常生活のみに特化した人たちにはきついのには変わりない。
だからこそ、俺は右手を真上に上げる。
「炎魔法《爆炎》」
太陽ほどではなくとも、地平線の彼方まで灯りとして届く規模の大きさの球体を生み出す。
今の俺なら、太陽までとはいかなくても大空を埋め尽くすだけの球体を生み出せる。というか、生み出せるようになっていたが正解か。
「いっけー!」
ブオォーーン。
爆炎を暗闇に飲み込まれた大空よりも、更に天高くまで放り投げる。
一瞬にして、地平線を越えた辺り一帯がパァーッと明るくなる。
明るくなると同時に空から降っている土砂降りの雨が、真っ赤な雨だった事に気づく。
血の匂いはしない。
ベトっとした感触は、これのせいだったのかもな。
明るくなった視界の先に人が2人いる。2人の先に一体のディケイウォーカーが襲いかかろうとしていた。
やばいな。
後ろ姿から察するに俺と同じくらいの歳かもしれないな。
俺はドロドロにぬかるんだ大地を蹴る。
景色が風のように流れ、変わる。
「しんちゃん!」
女の声が耳に入る。それと同時に俺はディケイウォーカーの間合いに入り込み、軽く顔面を殴る。
「グヘッ!」
ディケイウォーカーの声を耳にする。
初めて耳にしたけど、ガラガラ声に近いな。
[対象:ディケイウォーカー 消滅]
脳内に慣れ親しんだ声が、再び響く。
「――え?」
「――あれ?」
地面に座り込んだ2人が、俺を見て声を上げる。
男の方は、顔色が真っ青。
女の方は、血色はいい方だが体が男と同じでガタガタと震えてる。
「もう大丈夫だから、安心していいからな」
原因解明を急ぐ中、何に巻き込まれたのか?皆目検討がついた。
俺とグリムが今いる場所。
ここは迷宮界だ。
迷宮界で何度も聞こえた声が、先を急ぐ暗闇の中で再び聞こえた。
あの時と同じ声が、俺の視界に捉えた敵の名前とレベルと推定脅威度を教えてくれる。
それに進化でもしたのか?
視界に名前とレベルと推定脅威度を表示してくれる。視界を妨げないように工夫してるのか、中央に表示されてすぐに左四隅に表示を切り替えてくれる。おまけ付きだ。
「ああ。もう関わることもないと思ってたのにな。何者かは皆目検討もつかないが、瑞樹宅に行ってる留守を狙って侵入し、俺が帰ってくるその時を待っていたのか?タイミングよく俺たちが帰ってきたのか?自分の姿を俺たちに見せないために意表を突いて、黒フォンを投げるなり、黒フォンに転送しておいた映画館への招待券で俺とグリムごと、迷宮界に引きずり込むとは瑞樹宅で何気なく楽しい会話をしてる時には想像も予想すらもしてなかったな」
「わいもそんなんがあるとは知らんかったわ。迷宮界は特定の場所に出現するだけで、特定の場所に近づきさえせんかったら迷い込むことも、入ることもあらへんのにな。またわいらの知らん間に新たな迷宮界が誕生したってわけやろな」
「誕生したって言っても、あのクマの口ぶりからして、俺たちが関わったのは9回目らしいけどな。知らない間に8回も、何も知らない人間を迷宮界に引きずり込んでたんだろうな」
「そうやな。兄貴の言う通りやでー。あんクマは、わいと同じ……守護者かもしれへん。奴のレベルは映像越しで、見れへんかったけど……兄貴、あんクマが現れた際には油断は禁物やで」
「分かってる。言われなくても、油断はしない!」
俺は目の前に突如現れたディケイウォーカーを軽く打撃を与え、撃破する。
[対象:ディケイウォーカー 消滅]
「っちゅうても、あんクマ以外は油断してても倒せる相手やけどな。わいらを脅かすレベルがいるかと思えば、レベル10やから肩すかしにもいいところやでー」
「レベル10以外にも、ボス的な奴がいる可能性もあるしな。状況が状況なだけに最後まで映画館にいたのは良かったが、出遅れ感が半端ないな。とりあえずはクマが言っていた出口を探すのと巻き込まれた人たちを可能な限り助けるのを最優先で行こう。グリムは俺とわかれて、人助けを頼む」
「あい。わいに任せときー!」
グリムは俺の左肩から飛び降り、暗闇の中に姿を溶け込み消す。
「何かあったら、すぐに連絡くれよな」
「わかったでー!任せときー!」
暗闇の中から、グリムの声が大きく聞こえる。
グリムと主従契約を結んでいる恩恵として、グリムが俺と離れていようと何処に今現在いるか?GPS機能のように居場所が逐一分かる。
連絡手段も、グリムと心が繋がっているために相手に伝えたいと強く念じれば、すぐに連絡のやり取りが可能。
グリムと主従契約を結んだ際に手に入れたスキル《心話》で、どんなに離れていようと容易に話すことが出来る。
俺は暗闇を無闇矢鱈と突き進まない。
進んだところで、視界は土砂降りの雨と暗闇で何処を進んでいるのか?簡単には確認が取れない。
簡単に確認が出来ないだけで、暗闇を見通す目は今までの経験から持ち合わせているんだけどな。
ただ俺やグリムと違って、迷宮界に巻き込まれた人たちは暗闇に慣れてもいなければ、土砂降りの雨が追加されたこの場所を突き進むのは困難と言える。
見えない。
確認できない。
自分の居場所が不確か。
この3コンボがある中で、敵に遭遇した場合、逃げ切る事は不可能だ。
足場は、ぬかるみ。
安定しない足場で、敵から逃げるのは容易じゃない。
運動に長けた人間なら回避出来る可能性もなきにあらずだが、日常生活のみに特化した人たちにはきついのには変わりない。
だからこそ、俺は右手を真上に上げる。
「炎魔法《爆炎》」
太陽ほどではなくとも、地平線の彼方まで灯りとして届く規模の大きさの球体を生み出す。
今の俺なら、太陽までとはいかなくても大空を埋め尽くすだけの球体を生み出せる。というか、生み出せるようになっていたが正解か。
「いっけー!」
ブオォーーン。
爆炎を暗闇に飲み込まれた大空よりも、更に天高くまで放り投げる。
一瞬にして、地平線を越えた辺り一帯がパァーッと明るくなる。
明るくなると同時に空から降っている土砂降りの雨が、真っ赤な雨だった事に気づく。
血の匂いはしない。
ベトっとした感触は、これのせいだったのかもな。
明るくなった視界の先に人が2人いる。2人の先に一体のディケイウォーカーが襲いかかろうとしていた。
やばいな。
後ろ姿から察するに俺と同じくらいの歳かもしれないな。
俺はドロドロにぬかるんだ大地を蹴る。
景色が風のように流れ、変わる。
「しんちゃん!」
女の声が耳に入る。それと同時に俺はディケイウォーカーの間合いに入り込み、軽く顔面を殴る。
「グヘッ!」
ディケイウォーカーの声を耳にする。
初めて耳にしたけど、ガラガラ声に近いな。
[対象:ディケイウォーカー 消滅]
脳内に慣れ親しんだ声が、再び響く。
「――え?」
「――あれ?」
地面に座り込んだ2人が、俺を見て声を上げる。
男の方は、顔色が真っ青。
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「もう大丈夫だから、安心していいからな」
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