ダレカノセカイ

MY

文字の大きさ
上 下
57 / 67

episode.56

しおりを挟む
 俺の名は、新道千。
 工藤瑞樹の家で夕食を呼ばれ、グリムは俺の新しいペット的なポジションで、瑞樹の両親に紹介して何気ない会話から自然な会話の流れから『家出は大変だっただろう。よく頑張ったな。この時期の男の子なら、そおいう事はよくあることだよ』を繰り広げる。
 俺は心の中で、『家出じゃないんだけどなー。説明すると後々ややこしいことに発展しそうだからなー。とりあえず、家出の方向で話を合わせておくか』と確固たる何かしらの決意を秘めて家出した俺という設定を演じながら、瑞樹や瑞樹の両親と楽しく脇和気藹々とした瑞樹宅での夕食を召し上がった。
 その後、居心地のいい瑞樹宅で、瑞樹から「明日は朝一で学校に行くから寝坊すんじゃねーぞ」と軽く明日の打ち合わせをさせられ、ペットとして食事をたんまり食したグリムと共に家に帰宅した。
 その時点で、違和感に気づく。
 誰もいない家に何かの気配を感じた。
 俺とグリムは気配のするリビングへと物音一つ立てずにダッシュで、リビングの扉をガタッと開ける。
 扉を開けた瞬間、テーブルに置いておいたはずの黒フォンが画面を光らせた状態で、俺に向かって飛んでくる。
 俺はすぐに飛んできた黒フォンを左手で掴み取り、テーブルの方へと視線を向ける。だが、もうそこには誰の姿もない。さっきまであったはずの気配すらも、ない――そう思ったその時、
 画面を光らせた黒フォンが、眩い光を放ったのだ。

 あの時点から、30~40分の時間が経過した。その間に謎の劇場型にいたり、謎のクマが大画面に映ったりと常識破りの連続だった。
 まぁ、拉致られた経験がある俺にしたら、黒フォンの画面から光が消え去った後、別の場所に立っていました的な展開なんて、もう迷宮界を通して慣れに慣れたようなもの。そんなことで、心が揺らいで動じることはないんだけどな。
 動じなかった俺とグリムは謎の劇場型にいた時点で、黒フォンの画面が光った原因だけは解明している。
 俺の持つ黒フォン宛に『映画館への招待券』というメッセージが、連絡先不明で転送して送られてきていたのだ。
 転送されて送られてる事から、誰もいないはずの俺の家に気配を狙ってか?無意識なのか?感じさせた何者かが、この一件に噛んでる事は確かだ。
 俺が何に巻き込まれたのか?原因解明するためにも、先を急ぐ。

 今現在、俺は暗闇の中を疾走する。
 辺り一帯から土砂降りの雨が降り、視界は最悪だ。
 最悪の天候の中、俺は左眼を細めて視界を確保しながら先へ先へと進む。
 [対象:ディケイウォーカー
 レベル:10
 推定脅威度:L]
 慣れ親しんだ声が脳内に響き、左眼の視界に白文字で表示される。
 俺は左手を軽く握り、数メートル先にいた腐敗臭を漂わせて、全身を腐った腐敗と化した人間もどきのディケイウォーカーを軽く叩く。
 [対象:ディケイウォーカー 消滅]
 慣れ親しんだ声が脳内に響き、敵の消滅を知らせてくれる。
 やっぱりか。
 やっぱり、そうなのか。
 俺の左肩に乗るグリムは、全身を雨に打たれながら言う。
「兄貴、また迷宮界に関わってしもたな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

従者が記す世界大戦記

わきげストレート
ファンタジー
世界中で戦争・紛争が巻き起こる時代、大国の聖女を連れ出して逃げた騎士がいた。聖女は戦争の原因となっていた『不老不死の秘法』を握ったまま、自国の騎士に連れ去られたのだ。聖女の行方は誰も知ることはなく、奇しくもそこから各地で戦争が沈静化していくのであった。 時は流れ、各国は水面下にて聖女と共に失われし『不老不死の秘法』を探し求めていた。今まさに再び世界は大戦争へと動き出そうとしていた。

永遠の誓い

rui
恋愛
ジル姫は22歳の誕生日に原因不明の高熱に倒れるが、魔女の薬により一命をとりとめる。 しかしそれは『不老不死』になるという、呪われた薬だった。 呪いを解く方法は、たったひとつだけ……。

因果応報以上の罰を

下菊みこと
ファンタジー
ざまぁというか行き過ぎた報復があります、ご注意下さい。 どこを取っても救いのない話。 ご都合主義の…バッドエンド?ビターエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...