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episode.52
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俺が左手で薫の頭を撫でた瞬間――
ブーーーーーーーーーーーーーーー‼︎
映画を上映開始する時に鳴る合図が、シアタールーム全体に響き渡る。
バタン!
シアタールームに点灯していた照明が、一斉に消える。
「なっ⁉︎」
「えっ⁉︎」
「なんだ⁉︎」
「なにがおこった⁉︎」
「ちょ、ちょ⁉︎」
「怖いよー⁉︎」
「なになになになに⁉︎」
「くそが⁉︎」
この場にいる全員が悲鳴を上げ、驚きの声を上げる中、暗闇に包まれた劇場の大画面に映像が映し出される。
「やっほクマー!やほほほクマヨー!みんな、やっほクマー!やほほほクマヨー!起きたクマカナー?起きてない人いないクマヨネー?まだ寝てる人いるクマカ?みんな、やっほクマー!やほほほクマヨー!大きい声で、もう一度クマ!やほほほほほほほほクマヨー!やっほぉおおクマー!起きたクマカナー?起きたクマヨネー?起きてない奴は……いないクマネー」
大画面に熊のぬいぐるみ――全体的に黒系の色が多い――が映し出される。黒一色のハット帽子を斜めから被ってるぬいぐるみの両眼には、人間の眼?動物の眼?生き物の眼だろうか?本物かどうかは俺には分からないが、人間の眼球と別の動物の眼球が左右に縫い付けられている。口には人の唇が左、真ん中、右にバランスよく縫い付けられ、その3つの唇がタイミングを合わせたように動き出し、言葉を喋る。
「誰だ⁉︎」
「おい⁉︎」
「どこから見てる⁉︎」
「これは中継か⁉︎」
「中継?……いや配信か⁈」
「そんなもん、どーだっていい!お前が俺らをここに缶詰にしたのか⁉︎」
大画面に映像が映ったことで、真っ暗だった辺り一帯が薄っすらと見える。
変わったところはない。
誰かが言ったように配信?中継なのか?
「おい!見ろ!」
「あそこに監視カメラ?があるぞ!」
俺は真下から指を指し、声を大にして叫んだ男の声を聞き、指を指してる方向の天井を見上げる。
大画面の左右の隅に2台。
映像を投影する真後ろの左右の隅に3台。
監視カメラかは分からないが、この場の映像を撮ってると思しきカメラが計5台ある。
あれから、この場を覗いていたのか?
「そうクマ。よく見つけたクマネ。見つけた褒美に1つ教えてあげるクマ。この映画館には、君達以外の招待されてない人間は……だーれもいないクマ」
「はぁ⁈」
「なっ⁉︎」
「いない⁉︎」
「招待⁉︎」
「どおいうことなの⁉︎」
「今営業時間外ってこと⁉︎」
「もっと情報プリーズ!」
「セッカチな人間クマネ。情報いいクマヨ。君達はイマカラ……シアタールームから出入り口へ向かってもらうクマ。出入り口を出たら、そこから冒険の始まりクマヨ。まずみんなを食べようとする怪物が襲ってくるクマ。その怪物を倒すも、逃げるも好きにしていいクマ。冒険先の何処かに外に出られる扉が1つだけあるクマ。それを見つけたら、終わりクマ。とーっても単純クマヨー」
冒険って……。
「逃走する番組がテレビで……よくあるよな?」
「あ!」
「あるある!」
「それじゃない⁈」
「まじ⁉︎」
「芸能人は⁈」
「俳優さんは⁉︎」
「どこどこ⁉︎」
「え⁉︎これって、テレビの撮影なの⁈」
「馬鹿馬鹿しい!なんだよ⁉︎俺らを缶詰したら、次は撮影かよ⁉︎あとで、ただじゃ済まさねーぞ」
「早く私たちをここから出して!」
「いいクマヨ」
ガチャン!
「扉は開いたクマ。幸運を祈るクマヨー」
大画面越しから、ぬいぐるみの熊は小さな手を振る。
「ちっ!行くか!」
「俺たちも行こう」
「ここにいたって……何も進展しないだろうし……」
「スマホや携帯、誰も持ってないらしいしな」
「撮影で使われないように回収されちゃったのかな?とりま、行こ!」
「ふさげんな!」
「何が冒険だ⁉︎ただの撮影だろ⁉︎んなもんに参加する必要はなくとも、参加しなくちゃならんのだろ!」
「ちょっとちょっと!撮影とか最悪⁉︎」
「スッピン晒されるとか、超最悪なんですけどー」
「勝手に撮影とか、萎えるわ~」
「テレビに放送された時、ぜってーいいねしてやんない!」
「抗議だ!抗議!」
「許可取ってから撮影しろ!」
「人権をなんだと思ってる⁉︎」
「ここを出たら、直訴しに行ってやるからな!」
誰もが大画面に映る熊に罵倒の声を上げ、シアタールームから出て行く。
大画面に映る熊は小さい腕を小刻みに振る。
ブーーーーーーーーーーーーーーー‼︎
映画を上映開始する時に鳴る合図が、シアタールーム全体に響き渡る。
バタン!
シアタールームに点灯していた照明が、一斉に消える。
「なっ⁉︎」
「えっ⁉︎」
「なんだ⁉︎」
「なにがおこった⁉︎」
「ちょ、ちょ⁉︎」
「怖いよー⁉︎」
「なになになになに⁉︎」
「くそが⁉︎」
この場にいる全員が悲鳴を上げ、驚きの声を上げる中、暗闇に包まれた劇場の大画面に映像が映し出される。
「やっほクマー!やほほほクマヨー!みんな、やっほクマー!やほほほクマヨー!起きたクマカナー?起きてない人いないクマヨネー?まだ寝てる人いるクマカ?みんな、やっほクマー!やほほほクマヨー!大きい声で、もう一度クマ!やほほほほほほほほクマヨー!やっほぉおおクマー!起きたクマカナー?起きたクマヨネー?起きてない奴は……いないクマネー」
大画面に熊のぬいぐるみ――全体的に黒系の色が多い――が映し出される。黒一色のハット帽子を斜めから被ってるぬいぐるみの両眼には、人間の眼?動物の眼?生き物の眼だろうか?本物かどうかは俺には分からないが、人間の眼球と別の動物の眼球が左右に縫い付けられている。口には人の唇が左、真ん中、右にバランスよく縫い付けられ、その3つの唇がタイミングを合わせたように動き出し、言葉を喋る。
「誰だ⁉︎」
「おい⁉︎」
「どこから見てる⁉︎」
「これは中継か⁉︎」
「中継?……いや配信か⁈」
「そんなもん、どーだっていい!お前が俺らをここに缶詰にしたのか⁉︎」
大画面に映像が映ったことで、真っ暗だった辺り一帯が薄っすらと見える。
変わったところはない。
誰かが言ったように配信?中継なのか?
「おい!見ろ!」
「あそこに監視カメラ?があるぞ!」
俺は真下から指を指し、声を大にして叫んだ男の声を聞き、指を指してる方向の天井を見上げる。
大画面の左右の隅に2台。
映像を投影する真後ろの左右の隅に3台。
監視カメラかは分からないが、この場の映像を撮ってると思しきカメラが計5台ある。
あれから、この場を覗いていたのか?
「そうクマ。よく見つけたクマネ。見つけた褒美に1つ教えてあげるクマ。この映画館には、君達以外の招待されてない人間は……だーれもいないクマ」
「はぁ⁈」
「なっ⁉︎」
「いない⁉︎」
「招待⁉︎」
「どおいうことなの⁉︎」
「今営業時間外ってこと⁉︎」
「もっと情報プリーズ!」
「セッカチな人間クマネ。情報いいクマヨ。君達はイマカラ……シアタールームから出入り口へ向かってもらうクマ。出入り口を出たら、そこから冒険の始まりクマヨ。まずみんなを食べようとする怪物が襲ってくるクマ。その怪物を倒すも、逃げるも好きにしていいクマ。冒険先の何処かに外に出られる扉が1つだけあるクマ。それを見つけたら、終わりクマ。とーっても単純クマヨー」
冒険って……。
「逃走する番組がテレビで……よくあるよな?」
「あ!」
「あるある!」
「それじゃない⁈」
「まじ⁉︎」
「芸能人は⁈」
「俳優さんは⁉︎」
「どこどこ⁉︎」
「え⁉︎これって、テレビの撮影なの⁈」
「馬鹿馬鹿しい!なんだよ⁉︎俺らを缶詰したら、次は撮影かよ⁉︎あとで、ただじゃ済まさねーぞ」
「早く私たちをここから出して!」
「いいクマヨ」
ガチャン!
「扉は開いたクマ。幸運を祈るクマヨー」
大画面越しから、ぬいぐるみの熊は小さな手を振る。
「ちっ!行くか!」
「俺たちも行こう」
「ここにいたって……何も進展しないだろうし……」
「スマホや携帯、誰も持ってないらしいしな」
「撮影で使われないように回収されちゃったのかな?とりま、行こ!」
「ふさげんな!」
「何が冒険だ⁉︎ただの撮影だろ⁉︎んなもんに参加する必要はなくとも、参加しなくちゃならんのだろ!」
「ちょっとちょっと!撮影とか最悪⁉︎」
「スッピン晒されるとか、超最悪なんですけどー」
「勝手に撮影とか、萎えるわ~」
「テレビに放送された時、ぜってーいいねしてやんない!」
「抗議だ!抗議!」
「許可取ってから撮影しろ!」
「人権をなんだと思ってる⁉︎」
「ここを出たら、直訴しに行ってやるからな!」
誰もが大画面に映る熊に罵倒の声を上げ、シアタールームから出て行く。
大画面に映る熊は小さい腕を小刻みに振る。
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