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episode.51
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「うーん?」
「おいおーい」
「あかねーぞ」
大画面の左右端にある非常口とは別に左側から下って行けば、劇場から出られる扉が一つだけあるの発見する。
シアタールームの出入り口に辿り着いた俺たちは、3人の男達が力づくで扉を開ける姿を目の当たりにする。
「何してるんですか?」
声をかけると男達は扉に力を入れるのを止め、振り向く。
「入口が鍵がかかってるのか?開かない」
「くそー誰かが鍵かけてる」
2人は『今まさに扉を開けているところだよ』と雰囲気で語り、扉が鍵がかかっていることを教えてくれる。
「くそったれがー!」
もう1人は扉に足蹴りして、キレている。
カルシウムが足りていない人だ。
「ちょっと試してもいいですか?」
俺は3人の男達が自分よりも年上であるのを見て、敬語で話す。
「うーん。変わらないと思うけど……やってみて」
俺は本当かどうかをまず確認する為に扉の前に立ち、扉を軽く押す。
開かない。
「なんで?」
俺は力を入れて、再び扉を押す。
……開かない。
「……どうなってるんだ」
俺は一歩二歩と後ろに下がる。
後ろに立っていた薫が俺の背中を軽くポンと叩き、
「鍵がかかってたら、しょうがないよ」
扉が本当に開かないのを確認して、目を瞑る。
「いいえ、かかってないわ。鍵はかかってないわよ。万が一の為に劇場では外側と内側の両方に施錠出来る仕組みになってるの。……ほら、ここを見てみるといいわ」
俺たち5人とは別に出入り口に来た10代後半、俺と大して変わらないくらいの女性――セクシーなパジャマ姿をした――が後ろから歩いてくる。
俺の隣を横切って、銀髪の髪からほのかな香りを漂わせる女性は扉の真下にある手動で簡単に鍵を開け閉めできると思しき箇所を指差す。
「あ!」
「あー!」
「くそが!開いてるじゃねーか!」
「本当だ」
「え?鍵開いてるの?」
俺たち5人は女性の指差した箇所を見るなり、指差したり、口に手を当てたり、壁に足蹴りするなりとそれぞれが女性の言葉を聞いて驚いた声を上げた。
「だったら、どうして?」
俺は鍵が開いているのにも関わらず、扉が開かないことに疑問を持つ。
当然、その問いも鍵の開け閉めを知っている彼女なら知っているだろう。そう思い、俺は彼女を見つめる。
しかし、彼女は顔を横に振る。
「扉が開かない理由までは分からないわ」
彼女の言葉を聞き、俺を含めたこの場にいる5人は落胆する。
「くそが!じゃーなんだ⁉︎俺らはここに缶詰された状態ってわけかよ⁈」
カルシウムが足りてない男が両足をバタバタと床に思いっきり踏みつけ、苛立ちが最大にまで上昇しっぱなしだ。
男の近くにいる他の2人も、
「……なんで、こんなことに……」
「……こんな目に遭う道理はない……
」
扉を何度も両手で叩き、扉が開かない現実に目を背けようとしている。
「どうすれば……」
俺は顔に右手を当て、他にこの場から出る方法がないかを頭の中で考えて模索する。
だが、一向に他に出る方法は思い浮かばない。
そんな中で、薫がこの状況を打破する言葉を口にする。
「救助を待つとか?待たなくても、営業時間になったら映画館の従業員さん来るよね?それを待ってたら、長くても数時間くらいで出れるんじゃない?」
「そうか。それがあったか!」
「……た、たしかに」
「……そ、それだ」
「……ったく、待ってたら従業員が来るってか。それなら待つしかねーな。来るってんなら、それまで俺は椅子に座ってるとすっか」
薫の思わぬ言葉で、この場にいる全員に希望が見えた。
カルシウムの足りない男は出入り口からシアタールームの方へと戻って行き、他の2人も男につられるように戻って行く。
「彼女の言う通り、待つのが最善策と言えるわね。ただし、これが普通の場合なら……の話だけど」
希望が見えた中、曲げた人差し指を口に当てた彼女は意味深な言葉を呟く。
え?普通の場合なら?
どおいう意味……だ⁇
「それって――」
「しんちゃん、戻ろう」
俺が彼女に問いかけようとすると問いかけを遮る形で、薫が俺の右腕に両腕を組んでくる。
「ほら、早く早く」
薫は俺の右腕を強引に引っ張る。
扉が開くのも、時間の問題だし……仕方ないか。
「分かった分かった。戻るよ」
俺は彼女が言った言葉に対する質問を止め、薫と一緒に元の席に戻る。
戻る中、300~400人……正確に下からざっと目で見た感じでは400人はいるんじゃないだろうか。
500人は優にキャパが入りそうな劇場型に集められた人々。
「なにこれ?」
「俺だって知らねえよ」
「なんか、出られないらしい?」
「嘘?まじで?」
「さっき出入り口から来た人が言ってた」
「やばいやばい」
「出れないなら、私たち……どうなるの?」
「なんか従業員の人が来るって」
「なーんだ。従業員がいるなら問題ないじゃん」
シアタールームにいる全員が誰かしらと言葉を交わし、この状況に対応しつつある。
これなら出入り口から出られるのも、時間の問題と言っていい。
「しんちゃん」
「どうした?」
「みんな、分からないみたいだね」
「俺も分からないし、なんでここにいるのかすら分からないのは当然さ。まぁ、従業員が来れば帰れるだろうから問題ないよ」
「そうだね。待ってれば、帰れるよね?」
薫は心配そうな顔をする。
全く従業員が来れば、出られるという言い出しっぺなのに心配性なやつだ。
俺は薫の頭を優しく右手で撫でる。
「大丈夫。帰れるよ。家に帰るまで俺がずっと側にいるから。安心していいよ。薫」
「……うん。ありがとう」
薫はホッとした表情で、俺の右肩に頭を置く。
「なんか安心したら眠くなっちゃった」
「全くしょうがないなー。ここから出れるようになったら起こすから、それまで寝てるといいよ」
俺が左手で薫の頭を撫でた瞬間――
「おいおーい」
「あかねーぞ」
大画面の左右端にある非常口とは別に左側から下って行けば、劇場から出られる扉が一つだけあるの発見する。
シアタールームの出入り口に辿り着いた俺たちは、3人の男達が力づくで扉を開ける姿を目の当たりにする。
「何してるんですか?」
声をかけると男達は扉に力を入れるのを止め、振り向く。
「入口が鍵がかかってるのか?開かない」
「くそー誰かが鍵かけてる」
2人は『今まさに扉を開けているところだよ』と雰囲気で語り、扉が鍵がかかっていることを教えてくれる。
「くそったれがー!」
もう1人は扉に足蹴りして、キレている。
カルシウムが足りていない人だ。
「ちょっと試してもいいですか?」
俺は3人の男達が自分よりも年上であるのを見て、敬語で話す。
「うーん。変わらないと思うけど……やってみて」
俺は本当かどうかをまず確認する為に扉の前に立ち、扉を軽く押す。
開かない。
「なんで?」
俺は力を入れて、再び扉を押す。
……開かない。
「……どうなってるんだ」
俺は一歩二歩と後ろに下がる。
後ろに立っていた薫が俺の背中を軽くポンと叩き、
「鍵がかかってたら、しょうがないよ」
扉が本当に開かないのを確認して、目を瞑る。
「いいえ、かかってないわ。鍵はかかってないわよ。万が一の為に劇場では外側と内側の両方に施錠出来る仕組みになってるの。……ほら、ここを見てみるといいわ」
俺たち5人とは別に出入り口に来た10代後半、俺と大して変わらないくらいの女性――セクシーなパジャマ姿をした――が後ろから歩いてくる。
俺の隣を横切って、銀髪の髪からほのかな香りを漂わせる女性は扉の真下にある手動で簡単に鍵を開け閉めできると思しき箇所を指差す。
「あ!」
「あー!」
「くそが!開いてるじゃねーか!」
「本当だ」
「え?鍵開いてるの?」
俺たち5人は女性の指差した箇所を見るなり、指差したり、口に手を当てたり、壁に足蹴りするなりとそれぞれが女性の言葉を聞いて驚いた声を上げた。
「だったら、どうして?」
俺は鍵が開いているのにも関わらず、扉が開かないことに疑問を持つ。
当然、その問いも鍵の開け閉めを知っている彼女なら知っているだろう。そう思い、俺は彼女を見つめる。
しかし、彼女は顔を横に振る。
「扉が開かない理由までは分からないわ」
彼女の言葉を聞き、俺を含めたこの場にいる5人は落胆する。
「くそが!じゃーなんだ⁉︎俺らはここに缶詰された状態ってわけかよ⁈」
カルシウムが足りてない男が両足をバタバタと床に思いっきり踏みつけ、苛立ちが最大にまで上昇しっぱなしだ。
男の近くにいる他の2人も、
「……なんで、こんなことに……」
「……こんな目に遭う道理はない……
」
扉を何度も両手で叩き、扉が開かない現実に目を背けようとしている。
「どうすれば……」
俺は顔に右手を当て、他にこの場から出る方法がないかを頭の中で考えて模索する。
だが、一向に他に出る方法は思い浮かばない。
そんな中で、薫がこの状況を打破する言葉を口にする。
「救助を待つとか?待たなくても、営業時間になったら映画館の従業員さん来るよね?それを待ってたら、長くても数時間くらいで出れるんじゃない?」
「そうか。それがあったか!」
「……た、たしかに」
「……そ、それだ」
「……ったく、待ってたら従業員が来るってか。それなら待つしかねーな。来るってんなら、それまで俺は椅子に座ってるとすっか」
薫の思わぬ言葉で、この場にいる全員に希望が見えた。
カルシウムの足りない男は出入り口からシアタールームの方へと戻って行き、他の2人も男につられるように戻って行く。
「彼女の言う通り、待つのが最善策と言えるわね。ただし、これが普通の場合なら……の話だけど」
希望が見えた中、曲げた人差し指を口に当てた彼女は意味深な言葉を呟く。
え?普通の場合なら?
どおいう意味……だ⁇
「それって――」
「しんちゃん、戻ろう」
俺が彼女に問いかけようとすると問いかけを遮る形で、薫が俺の右腕に両腕を組んでくる。
「ほら、早く早く」
薫は俺の右腕を強引に引っ張る。
扉が開くのも、時間の問題だし……仕方ないか。
「分かった分かった。戻るよ」
俺は彼女が言った言葉に対する質問を止め、薫と一緒に元の席に戻る。
戻る中、300~400人……正確に下からざっと目で見た感じでは400人はいるんじゃないだろうか。
500人は優にキャパが入りそうな劇場型に集められた人々。
「なにこれ?」
「俺だって知らねえよ」
「なんか、出られないらしい?」
「嘘?まじで?」
「さっき出入り口から来た人が言ってた」
「やばいやばい」
「出れないなら、私たち……どうなるの?」
「なんか従業員の人が来るって」
「なーんだ。従業員がいるなら問題ないじゃん」
シアタールームにいる全員が誰かしらと言葉を交わし、この状況に対応しつつある。
これなら出入り口から出られるのも、時間の問題と言っていい。
「しんちゃん」
「どうした?」
「みんな、分からないみたいだね」
「俺も分からないし、なんでここにいるのかすら分からないのは当然さ。まぁ、従業員が来れば帰れるだろうから問題ないよ」
「そうだね。待ってれば、帰れるよね?」
薫は心配そうな顔をする。
全く従業員が来れば、出られるという言い出しっぺなのに心配性なやつだ。
俺は薫の頭を優しく右手で撫でる。
「大丈夫。帰れるよ。家に帰るまで俺がずっと側にいるから。安心していいよ。薫」
「……うん。ありがとう」
薫はホッとした表情で、俺の右肩に頭を置く。
「なんか安心したら眠くなっちゃった」
「全くしょうがないなー。ここから出れるようになったら起こすから、それまで寝てるといいよ」
俺が左手で薫の頭を撫でた瞬間――
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