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episode.48
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その後、半強制的に瑞樹が俺の真っ白になった白髪を黒髪に戻すべく、根元から髪の毛を染める。
全体的に塗り終え、瑞樹は汚れてもいいタオルを勝手にタオル入れのカゴから取り出し、俺の首元に巻いてくれる。
「はい!」
バチン!
俺の背中に強烈な平手打ちし、
「あとは少し時間を置くよ」
首元に巻いたタオルをまるで首輪のように握りしめ、瑞樹は歩き出す。
目的地は進む方向で分かった。
グリムのいる茶の間だ。
髪が染まるのに時間が必要だった。
だから俺は茶の間に戻り、自分の定位置の席に腰を下ろすと瑞樹に聞く。
「どうして、家の鍵を持ってたんだ?」
これは最初から気になっていた。
というか、家が隣同士だから家族感が仲が良いのは当たり前だ。
それ故に俺や家族が家の鍵を忘れた際に共有される鍵がどこに置いてあるか?すらも、瑞樹は家の家族のように熟知している。
熟知しているからこそ、俺が一番乗りで家に帰宅した時に俺の家で俺が買っておいたバニラアイスを食べながら、瑞樹が俺の帰りを待っていることもあるくらいだ。
それくらい、家同士の仲は家族同然のように仲が良い。
俺の両親から言わせれば、瑞樹は俺のお姉さん的な存在。
瑞樹の両親から言わせれば、俺は瑞樹の弟分的な存在。
だから俺の家に瑞樹が来ようと俺が瑞樹の家に行こうが、家族同然で受け入れてくれる。
ただそれでもだ。
俺が家出扱いされている上に、鍵を忘れた際に共有されるたった一つの鍵は俺の手元にある。というか、靴箱の上に置いてある。
共有の鍵がないのに瑞樹はどうして、別の鍵を持っていたのか?
俺は鍵が開いた瞬間から、疑問に思っていた。
「鍵はてめぇーの親父から預かってた。使う機会はねぇーと思ってたけど、てめぇーの出直してこいっつー聞き流せねぇー発言があったからさ、使うつもりはさらさらねぇーのに使う羽目になったわ」
親父から預かった鍵を右手で触り、少し苛立ちを覚えた瑞樹がグッと握りしめる。
この流れから行くに殴られるのは、時間の問題だな。
俺はすぐに話の流れを変える。
「なるほどな。それでも、なんで俺がいるかもわからないのにインターホンを鳴らしたんだよ?」
「そんなん決まってる。てめぇーの家に入る人影を昨日いや今日?の夜中見たからに決まってんだろ。夜行くのは危険過ぎだしよ、物盗りだったら女1人超危険じゃねぇーか。だからよ、朝来てみれば、招き猫の銅像の下にあるはずの鍵がねぇーから。あ、これは物盗りじゃねぇー。千が家出から帰って来た?って思えば、知らない奴がインターホンから応答するだろ。やっぱ物盗りじゃねーか?だけど、馬鹿な物盗りもいたもんだ。ウケるーってめっちゃ笑って驚いたわ。あと応答する声の後ろから、てめぇーの声が聞こえた瞬間には苛立ちを覚えたから」
話の流れをインターホンにうまく変えたつもりが、瑞樹の苛立ちの度合いを増やしただけだった。
「まじかよ。あんな遅い時間帯に起きてたのにびっくりだけど、招き猫の方も確認済みとかどんだけ心配してたんだよ?瑞樹にしては珍しいな」
再び話の流れを変える。
もう後がないぞー。
「幼馴染が家出っつーか行方くらまして心配しない奴がどこにいる?家は隣同士だってのに隣に住んでる幼馴染が電話は繋がらねーし、居場所が分からねーのに心配しないとか、ありねーから。心配するほうが当たり前だから。てめぇーが消息を絶って、19日経ってるわけだし」
「え?19日?」
おかしいな。
「それホンマかい?」
グリムも俺の同じ意見のようだ。
俺とグリムの言葉を聞き、苛立っている瑞樹は苛立ちを一旦別の場所に置き去りにし、今の発言がかなり気になったように言う。
「本当だけど?なんで⁇」
草加部は、あの時『1週間』と言った。
「戻って来た日、草加部から聞いた話では1週間って聞いてたんだけどな。草加部の間違いか?」
「兄貴、ちゃうで。わいらはあの日、黒岩っちゅう男に会いに異空間に入ったやんか。あそこは兄貴の今いる世界とは違う時間軸の中にあったはずや。あそこに入ったことによって、わいらが入った当時の時間とまた時間の流れが変わったんや!」
グリムの話を聞き、
「あ!あれか」
俺は自分の両手を軽く叩き、納得する。
俺の反応を見て、グリムはコクコクっと頷く。
「そうや。あれやあれ!」
「ちょい待ち。てめぇーらだけで、話進めんなよ。全然話の輪に入れねぇーじゃんか」
俺とグリムだけが理解出来る内容。
瑞樹は俺たちの会話を聞いても、全く内容を理解出来ずにいる様子だ。
それどころか、瑞樹はグリムとの会話の内容を理解したくて、ウズウズしてる感が半端ない。
「瑞樹は知らなくていいだろ?」
「除け者扱いかよ。千てめぇー、つれねーな。ホントつれねー男はモテねーぞ」
瑞樹は両腕を組み、俺の方へ向けていた顔をプイッと横に向ける。
あ、やばいな。
いつ拳が飛んでくるか、分からない空気だな。ここは知らなくてもいい話なんだけど、教えないといけないか。
「簡単に言えば、消息を絶った日から1週間後には俺は戻って来てたんだよ。それが色々あって、そんだけの日数になってたってわけだ」
俺は瑞樹に答えた。
瑞樹は顔を横に向けたまま、横目で俺の様子を窺う。
「てめぇーが拉致られた件自体やべーのに時間の概念まで捻じ曲がってて、全体的にやばすぎんだろ」
「姉さんのおっしゃる通りやでー。せやから、迷宮界攻略日とは別に時間の経過が更に増えたんや」
「そおいうことだよな」
「あ、そういえば!」
全体的に塗り終え、瑞樹は汚れてもいいタオルを勝手にタオル入れのカゴから取り出し、俺の首元に巻いてくれる。
「はい!」
バチン!
俺の背中に強烈な平手打ちし、
「あとは少し時間を置くよ」
首元に巻いたタオルをまるで首輪のように握りしめ、瑞樹は歩き出す。
目的地は進む方向で分かった。
グリムのいる茶の間だ。
髪が染まるのに時間が必要だった。
だから俺は茶の間に戻り、自分の定位置の席に腰を下ろすと瑞樹に聞く。
「どうして、家の鍵を持ってたんだ?」
これは最初から気になっていた。
というか、家が隣同士だから家族感が仲が良いのは当たり前だ。
それ故に俺や家族が家の鍵を忘れた際に共有される鍵がどこに置いてあるか?すらも、瑞樹は家の家族のように熟知している。
熟知しているからこそ、俺が一番乗りで家に帰宅した時に俺の家で俺が買っておいたバニラアイスを食べながら、瑞樹が俺の帰りを待っていることもあるくらいだ。
それくらい、家同士の仲は家族同然のように仲が良い。
俺の両親から言わせれば、瑞樹は俺のお姉さん的な存在。
瑞樹の両親から言わせれば、俺は瑞樹の弟分的な存在。
だから俺の家に瑞樹が来ようと俺が瑞樹の家に行こうが、家族同然で受け入れてくれる。
ただそれでもだ。
俺が家出扱いされている上に、鍵を忘れた際に共有されるたった一つの鍵は俺の手元にある。というか、靴箱の上に置いてある。
共有の鍵がないのに瑞樹はどうして、別の鍵を持っていたのか?
俺は鍵が開いた瞬間から、疑問に思っていた。
「鍵はてめぇーの親父から預かってた。使う機会はねぇーと思ってたけど、てめぇーの出直してこいっつー聞き流せねぇー発言があったからさ、使うつもりはさらさらねぇーのに使う羽目になったわ」
親父から預かった鍵を右手で触り、少し苛立ちを覚えた瑞樹がグッと握りしめる。
この流れから行くに殴られるのは、時間の問題だな。
俺はすぐに話の流れを変える。
「なるほどな。それでも、なんで俺がいるかもわからないのにインターホンを鳴らしたんだよ?」
「そんなん決まってる。てめぇーの家に入る人影を昨日いや今日?の夜中見たからに決まってんだろ。夜行くのは危険過ぎだしよ、物盗りだったら女1人超危険じゃねぇーか。だからよ、朝来てみれば、招き猫の銅像の下にあるはずの鍵がねぇーから。あ、これは物盗りじゃねぇー。千が家出から帰って来た?って思えば、知らない奴がインターホンから応答するだろ。やっぱ物盗りじゃねーか?だけど、馬鹿な物盗りもいたもんだ。ウケるーってめっちゃ笑って驚いたわ。あと応答する声の後ろから、てめぇーの声が聞こえた瞬間には苛立ちを覚えたから」
話の流れをインターホンにうまく変えたつもりが、瑞樹の苛立ちの度合いを増やしただけだった。
「まじかよ。あんな遅い時間帯に起きてたのにびっくりだけど、招き猫の方も確認済みとかどんだけ心配してたんだよ?瑞樹にしては珍しいな」
再び話の流れを変える。
もう後がないぞー。
「幼馴染が家出っつーか行方くらまして心配しない奴がどこにいる?家は隣同士だってのに隣に住んでる幼馴染が電話は繋がらねーし、居場所が分からねーのに心配しないとか、ありねーから。心配するほうが当たり前だから。てめぇーが消息を絶って、19日経ってるわけだし」
「え?19日?」
おかしいな。
「それホンマかい?」
グリムも俺の同じ意見のようだ。
俺とグリムの言葉を聞き、苛立っている瑞樹は苛立ちを一旦別の場所に置き去りにし、今の発言がかなり気になったように言う。
「本当だけど?なんで⁇」
草加部は、あの時『1週間』と言った。
「戻って来た日、草加部から聞いた話では1週間って聞いてたんだけどな。草加部の間違いか?」
「兄貴、ちゃうで。わいらはあの日、黒岩っちゅう男に会いに異空間に入ったやんか。あそこは兄貴の今いる世界とは違う時間軸の中にあったはずや。あそこに入ったことによって、わいらが入った当時の時間とまた時間の流れが変わったんや!」
グリムの話を聞き、
「あ!あれか」
俺は自分の両手を軽く叩き、納得する。
俺の反応を見て、グリムはコクコクっと頷く。
「そうや。あれやあれ!」
「ちょい待ち。てめぇーらだけで、話進めんなよ。全然話の輪に入れねぇーじゃんか」
俺とグリムだけが理解出来る内容。
瑞樹は俺たちの会話を聞いても、全く内容を理解出来ずにいる様子だ。
それどころか、瑞樹はグリムとの会話の内容を理解したくて、ウズウズしてる感が半端ない。
「瑞樹は知らなくていいだろ?」
「除け者扱いかよ。千てめぇー、つれねーな。ホントつれねー男はモテねーぞ」
瑞樹は両腕を組み、俺の方へ向けていた顔をプイッと横に向ける。
あ、やばいな。
いつ拳が飛んでくるか、分からない空気だな。ここは知らなくてもいい話なんだけど、教えないといけないか。
「簡単に言えば、消息を絶った日から1週間後には俺は戻って来てたんだよ。それが色々あって、そんだけの日数になってたってわけだ」
俺は瑞樹に答えた。
瑞樹は顔を横に向けたまま、横目で俺の様子を窺う。
「てめぇーが拉致られた件自体やべーのに時間の概念まで捻じ曲がってて、全体的にやばすぎんだろ」
「姉さんのおっしゃる通りやでー。せやから、迷宮界攻略日とは別に時間の経過が更に増えたんや」
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