23 / 23
本編 2章
2.
しおりを挟む
「・・・・・・起きましたか」
・・・ん?・・・あ、直江先生・・・・・・。
目を開けるとすぐ横に先生が座っていた。そっと僕のおでこを優しく触れるように撫でる。・・・思わず生理的な涙が出てきて僕は目を閉じた。
「・・・辛かったですね・・・すみません」
「・・・先生」
「噂に聞いてはいたんです・・・。でも、まさか本当のこととは知らなくて――。・・・こんなのは言い訳になりますね・・・すみません。・・・二度も、、私は・・・・・・」
「・・・・・・先生?」
「愛人君の件についても私は知っていました。君の称号のことも。・・・ユウト君は覚えていないかもしれませんが、愛人君の件で君が記憶を失って、しばらくは先生と一緒に寝ていたんですよ?」
先生は夜になるともう8歳であるのに夜泣きで目を覚ます僕の面倒を見てくれてたらしい。さっきみたいに夢に導く・・・みたいな。
「ユウト君、・・・・・・少し昔話をしましょうか――。
以前、私の友人に受け継ぎ型の称号を持った人がいたと言いましたね?・・・その人は『聖姫』を持っていたんです・・・」
え・・・?
「えぇ、その友人は・・・死にました。
・・・今の君のように愛されて、愛したくて、愛されたいのに、愛されないで・・・。愛故に憎まれて、愛故に疎まれて・・・。
毎日の虐めも好意による裏切りも・・・今の君のようでした」
「・・・私は愛故に疎んでいる方の人間でした。彼に何も出来なかった・・・声をかけてあげることもしなかった・・・。
・・・今ではすごく後悔してるんです。彼は決して悪い人間では無かった。寧ろ、他の人間よりより純粋で優しかった・・・」
「・・・・・・今思えば、疎んでいるつもりで愛していたのかも知れません・・・。・・・難しい話でしたね。すみません。
彼に出来なかった分、贖罪と言えば聞こえは良いですね。・・・ただ単に彼への罪滅ぼしと言ったところもあります。しかし、君は第一に私の生徒です。・・・だから、君の力になってあげたいんです・・・・・・もう遅いかもしれませんが」
先生は僕のお腹をとんとんしながら話してくれた。
・・・夜泣きのこと、少し思い出したのは秘密。先生は寝る前にいつもとんとんしてくれてた。
「・・・先生」
「何ですか?」
「・・・・・・僕、もう子供じゃないしとんとんしなくていいよ?それに五十嵐先輩のことは大丈夫。僕には郁だけじゃなくて伽南も愛人君もいるから」
「・・・そう、ですね」
「・・・先生。お話ししてくれて、ありがとう。・・・でも僕は大丈夫だから。・・・僕には、僕を心配してくれる人がいるから。・・・先生もだよ?ふふ」
「・・・はい。・・・・・・では、私の助けが必要ならいつでも言ってください。私はユウト君のことを我が子のように思っていますから。私のことも母と思って接して下さい。・・・父ですかね?」
「うんっ。あ、はい。・・・ありがとう、先生」
・・・やっぱり、直江先生は優しい。
「それと、熱があるようですから・・・迎えを寄越します。お昼休みになったら大江君たちと寮に戻って、今日は休んで下さい。・・・おやすみなさい」
「・・・・・・おやすみなさい」
またふわっとした。
・・・先生が導いてくれてるんだ・・・。
暖かくて、優しくて、・・・僕はまた目を閉じた。
「・・・大江君、少し良いですか?」
1限でユウ先輩のトラウマの原因であると言うあの人の授業になんとか耐え、恐らく保健室であろうユウ先輩の元へ行こうとしたら担任の直江先生に声をかけられました。
「はい・・・?」
「・・・ユウト君のことで」
「・・・ユウ先輩・・・・・・」
「はい。・・・今は保健室で寝ています。熱も出てるので早退させたいのですが、今は静かに寝かせてあげた方がいいと判断して保健室のベッドで療養してもらってます。ですから、お昼休みにお迎えに行ってあげて下さい。それを伝えにと」
「・・・分かりました」
「・・・それから、、。・・・あまり過激なことはしないで下さいね?君たちの気持ちも分からなくはないのですが、あとが大変なので」
「・・・ええ」
・・・・・・お見通しですか。まぁ、それなりに。
しかし、まさかユウ先輩が熱を・・・。
それだけ辛かったんだろうと思うと胸がズキズキと痛んだ。俺だって、あんなことをユウ先輩に言われたとしたら耐えられないくらいなのに――!!
「あと、ちゃんと授業は受けて下さいね?テストで取れても単位が足りないと、再び2年生に戻って頂きますから」
「・・・はい」
そう言い残し、直江先生は離れた。
・・・あの人、静かに怒るとき迫力ありますね・・・。いつも怒られている大久間先生の気持ちが少し分かった瞬間でした。
・・・とりあえず、先のことは桐谷先輩や野崎先輩にもお伝えしておきましょう。
俺はそのまま隣のクラスへ向かった。
3年になると3年生だけ校舎が一棟与えられているので楽ですね。以前はそうもいきませんでした。・・・クラスごとに階数ご変わるのは移動が大変なので。
「・・・桐谷先輩と野崎先輩は――
「おー、イク。・・・あれ、ユウトは?」
「・・・その件でお話が」
隣のクラスに行くと、桐谷先輩は友人でしょうか?と腕相撲をしていました。その表情は変わらず、対面している人の方が顔を真っ赤にしています。
「・・・余裕そうですね」
「あぁ、だって田中の三男弱いから」
「なっ!それはっ――」
あ、確かこの人は田中三郎先輩。
去年の例の魔法訓練でユウ先輩が相手した・・・。
「それで?ユウトのことでって・・・」
「野崎先輩は――」
「あいつはあそこ」
桐谷先輩が指差した先には野崎先輩が四、五人ほどのクラスメイトらしい人たちに囲まれていた。机に腰かけて、腕を組み野崎先輩お得意のキラースマイルを浮かべている。
「はは。そう?」
「そうだよ~。愛人ってば!」
「ごめんね。俺、ちょっとこれから用事あるから」
「えー!!」
「・・・嫌ならバイバイする?」
「ヒッ・・・・・・じょ、冗談だよね?」
「ふふ。うん。冗談だよ。···それじゃ」
・・・ん?・・・あ、直江先生・・・・・・。
目を開けるとすぐ横に先生が座っていた。そっと僕のおでこを優しく触れるように撫でる。・・・思わず生理的な涙が出てきて僕は目を閉じた。
「・・・辛かったですね・・・すみません」
「・・・先生」
「噂に聞いてはいたんです・・・。でも、まさか本当のこととは知らなくて――。・・・こんなのは言い訳になりますね・・・すみません。・・・二度も、、私は・・・・・・」
「・・・・・・先生?」
「愛人君の件についても私は知っていました。君の称号のことも。・・・ユウト君は覚えていないかもしれませんが、愛人君の件で君が記憶を失って、しばらくは先生と一緒に寝ていたんですよ?」
先生は夜になるともう8歳であるのに夜泣きで目を覚ます僕の面倒を見てくれてたらしい。さっきみたいに夢に導く・・・みたいな。
「ユウト君、・・・・・・少し昔話をしましょうか――。
以前、私の友人に受け継ぎ型の称号を持った人がいたと言いましたね?・・・その人は『聖姫』を持っていたんです・・・」
え・・・?
「えぇ、その友人は・・・死にました。
・・・今の君のように愛されて、愛したくて、愛されたいのに、愛されないで・・・。愛故に憎まれて、愛故に疎まれて・・・。
毎日の虐めも好意による裏切りも・・・今の君のようでした」
「・・・私は愛故に疎んでいる方の人間でした。彼に何も出来なかった・・・声をかけてあげることもしなかった・・・。
・・・今ではすごく後悔してるんです。彼は決して悪い人間では無かった。寧ろ、他の人間よりより純粋で優しかった・・・」
「・・・・・・今思えば、疎んでいるつもりで愛していたのかも知れません・・・。・・・難しい話でしたね。すみません。
彼に出来なかった分、贖罪と言えば聞こえは良いですね。・・・ただ単に彼への罪滅ぼしと言ったところもあります。しかし、君は第一に私の生徒です。・・・だから、君の力になってあげたいんです・・・・・・もう遅いかもしれませんが」
先生は僕のお腹をとんとんしながら話してくれた。
・・・夜泣きのこと、少し思い出したのは秘密。先生は寝る前にいつもとんとんしてくれてた。
「・・・先生」
「何ですか?」
「・・・・・・僕、もう子供じゃないしとんとんしなくていいよ?それに五十嵐先輩のことは大丈夫。僕には郁だけじゃなくて伽南も愛人君もいるから」
「・・・そう、ですね」
「・・・先生。お話ししてくれて、ありがとう。・・・でも僕は大丈夫だから。・・・僕には、僕を心配してくれる人がいるから。・・・先生もだよ?ふふ」
「・・・はい。・・・・・・では、私の助けが必要ならいつでも言ってください。私はユウト君のことを我が子のように思っていますから。私のことも母と思って接して下さい。・・・父ですかね?」
「うんっ。あ、はい。・・・ありがとう、先生」
・・・やっぱり、直江先生は優しい。
「それと、熱があるようですから・・・迎えを寄越します。お昼休みになったら大江君たちと寮に戻って、今日は休んで下さい。・・・おやすみなさい」
「・・・・・・おやすみなさい」
またふわっとした。
・・・先生が導いてくれてるんだ・・・。
暖かくて、優しくて、・・・僕はまた目を閉じた。
「・・・大江君、少し良いですか?」
1限でユウ先輩のトラウマの原因であると言うあの人の授業になんとか耐え、恐らく保健室であろうユウ先輩の元へ行こうとしたら担任の直江先生に声をかけられました。
「はい・・・?」
「・・・ユウト君のことで」
「・・・ユウ先輩・・・・・・」
「はい。・・・今は保健室で寝ています。熱も出てるので早退させたいのですが、今は静かに寝かせてあげた方がいいと判断して保健室のベッドで療養してもらってます。ですから、お昼休みにお迎えに行ってあげて下さい。それを伝えにと」
「・・・分かりました」
「・・・それから、、。・・・あまり過激なことはしないで下さいね?君たちの気持ちも分からなくはないのですが、あとが大変なので」
「・・・ええ」
・・・・・・お見通しですか。まぁ、それなりに。
しかし、まさかユウ先輩が熱を・・・。
それだけ辛かったんだろうと思うと胸がズキズキと痛んだ。俺だって、あんなことをユウ先輩に言われたとしたら耐えられないくらいなのに――!!
「あと、ちゃんと授業は受けて下さいね?テストで取れても単位が足りないと、再び2年生に戻って頂きますから」
「・・・はい」
そう言い残し、直江先生は離れた。
・・・あの人、静かに怒るとき迫力ありますね・・・。いつも怒られている大久間先生の気持ちが少し分かった瞬間でした。
・・・とりあえず、先のことは桐谷先輩や野崎先輩にもお伝えしておきましょう。
俺はそのまま隣のクラスへ向かった。
3年になると3年生だけ校舎が一棟与えられているので楽ですね。以前はそうもいきませんでした。・・・クラスごとに階数ご変わるのは移動が大変なので。
「・・・桐谷先輩と野崎先輩は――
「おー、イク。・・・あれ、ユウトは?」
「・・・その件でお話が」
隣のクラスに行くと、桐谷先輩は友人でしょうか?と腕相撲をしていました。その表情は変わらず、対面している人の方が顔を真っ赤にしています。
「・・・余裕そうですね」
「あぁ、だって田中の三男弱いから」
「なっ!それはっ――」
あ、確かこの人は田中三郎先輩。
去年の例の魔法訓練でユウ先輩が相手した・・・。
「それで?ユウトのことでって・・・」
「野崎先輩は――」
「あいつはあそこ」
桐谷先輩が指差した先には野崎先輩が四、五人ほどのクラスメイトらしい人たちに囲まれていた。机に腰かけて、腕を組み野崎先輩お得意のキラースマイルを浮かべている。
「はは。そう?」
「そうだよ~。愛人ってば!」
「ごめんね。俺、ちょっとこれから用事あるから」
「えー!!」
「・・・嫌ならバイバイする?」
「ヒッ・・・・・・じょ、冗談だよね?」
「ふふ。うん。冗談だよ。···それじゃ」
0
お気に入りに追加
119
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結

ツンデレ貴族さま、俺はただの平民です。
夜のトラフグ
BL
シエル・クラウザーはとある事情から、大貴族の主催するパーティーに出席していた。とはいえ歴史ある貴族や有名な豪商ばかりのパーティーは、ただの平民にすぎないシエルにとって居心地が悪い。
しかしそんなとき、ふいに視界に見覚えのある顔が見えた。
(……あれは……アステオ公子?)
シエルが通う学園の、鼻持ちならないクラスメイト。普段はシエルが学園で数少ない平民であることを馬鹿にしてくるやつだが、何だか今日は様子がおかしい。
(………具合が、悪いのか?)
見かねて手を貸したシエル。すると翌日から、その大貴族がなにかと付きまとってくるようになってーー。
魔法の得意な平民×ツンデレ貴族
※同名義でムーンライトノベルズ様でも後追い更新をしています。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる