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本編 1章
21.
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後ろで伽南と郁の驚いた声が聞こえた。
「僕、嫌だった。・・・アイちゃんのこと好きだったもん!!それなのに、アイちゃん・・・愛人君は――」
もう、耐えられなかった。
言いたいこともたくさんあるのに言葉が出てこなくてその代わりみたいに涙が出てくる。泣きたい訳じゃないのに、言いたいのに――。
「・・・・・・ユウ・・・ごめん。・・・ごめん」
「・・・・・・」
「・・・でもね。覚えておいてよ・・・ユウ。・・・あのときのアイちゃんはもう居ない。俺は愛人。・・・もう、君を泣かせたいだけの狂ったやつなんだよ、、ごめん・・・」
「アイちゃんに虐められたことなんてないもん・・・」
「・・・うん」
「泣かされたことなんて一度もないもん・・・いつも慰めてくれてたもんっ。・・・もう、あんなこと・・・しないでっ!!」
「・・・しない。・・・約束するっ!・・・・・・でも、そろそろギブ・・・」
「え――?
「はいはーい。ユウ先輩。野崎先輩との面会はこれまででお願いします。桐谷先輩、ユウ先輩を」
「分かった。・・・ユウ、まだ愛人は完全に回復してないんだ・・・。あとは休ませてやろう。な?」
「え・・・。そうなの・・・・・・・?」
郁は愛人君に駆け寄ってしゃがみこんだ愛人君を介抱してる(?)僕は後ろ髪を引かれながら伽南に腕を引かれてく。
・・・そっか。まだ愛人君、調子悪いんだ・・・。
叩いちゃったの・・・ダメだったかな・・・・・・。
「よく耐えてくれました・・・」
「・・・・・・ハァ・・・自分でも成長したと思うよ」
「俺も野崎先輩の気持ち分かった気がします・・・」
「ユウの泣き顔・・・。腰にくるよね・・・」
「・・・否定しません」
ユウ先輩が野崎先輩を叩いたのには驚きました。
しかし・・・これで良かったんでしょうね・・・・・・。
「俺、初めて叩かれたよ・・・。痛くなかったけど」
「・・・はい」
「でも・・・痛くなかったんだけど、胸が痛くなったって言うのかな・・・・・・?泣かせたいけど、あの瞬間泣かせたくないって思ったんだよね・・・」
「・・・えぇ」
「・・・ねぇ、俺も伽南や郁君のライバルになっていい?」
「拒否します」
「ははっ、言うと思った。でも・・・もう無理」
「俺、行きます。・・・それ、しばらく頭冷やした方がいいですよ?」
「・・・仕方ないでしょ。あれみたら煩悩くらい働くよ」
「失礼します」
・・・・・・どうしましょうねー・・・。
・・・まさかユウトが愛人を叩くなんて、思わなかった・・・。それにしても、パチンッって・・・どれだけ非力なんだ?ユウト。
「・・・痛かったかなぁ・・・」
「ん?」
「愛人君。・・・まだ調子悪いんでしょ?それなのに、僕、、」
「あぁ、気にすんな。アイツの生命力ゴキブリ並だから」
「そうなの?」
「そうだろ」
「・・・そっか」
「そう。それにあれは今までユウトが痛かった分、だろ?だったら受けて当然だ。(俺としては羨ましいくらいなんだが・・・」
「・・・うん」
「さて、中庭行くか」
「うん!」
そんなことまで信じちゃうなんて・・・ユウトは可愛過ぎる。
ほんとに心配になってくるわ・・・。
屋上を出て、僕と伽南は中庭に向かった。
昨日とは違ってやっぱり人が多い。ベンチも既に使われてた。まぁ、芝生の上でもいいか。暖かいし。
「気持ちーね・・・」
「・・・そうだな。何度も思ったけど、ほんとに外にいるみたいだ。風もそよいでるしな」
「ふふ。そうだね」
芝生の上で購買で用意した菓子パンの入った袋を置く。
購買では僕たち孤児は学園で行ってるクエストをクリアするとポイントが貰えて、それを現金に換えられるんだ。なんかギルドと同じ仕組みになってるから郊外学習ならぬ校内学習。
僕も薬師のギルドに入りたい。
それで、旅をして貧しい人や僕らみたいな孤児に癒しを与えたい。・・・でも、、国連の本部に勤めることになるのかな・・・。
「伽南は・・・進路、どうするの?」
「俺?・・・俺は・・・放浪する。外の世界を見て回りたいからな・・・それと、、俺の兄弟を探す」
「・・・兄弟」
「うん。・・・俺、双子の兄貴が居たらしいんだ。でも・・・兄貴はどこかの養子になったとかで・・・」
「・・・・・・僕も」
「ん?」
「僕も一緒に旅をしたい・・・」
「・・・」
「ダメなのかな・・・」
伽南と一緒に旅出来たら・・・どんなに楽しいんだろう。
・・・でも、、僕の称号は保護対象。国連の職員として働きながら監視されないといけない・・・。
「・・・行こう」
「・・・え?」
「一緒に。逃げよう。・・・運命から」
運命から・・・・・・逃げる・・・・・・・・・。
「逃げて、逃げて、・・・それでもダメなら、俺がユウトを助けるから。そんときはきっと・・・そこのストーカーも助けてくれんだろ」
「・・・?スト?」
「・・・はぁ、居るの分かってるなら声かけて下さいよ。入りづらいでしょ」
「あ、郁・・・」
すぐ近くにあった気の影に郁がいた。
・・・気づかなかった・・・・・・。
「んで?お前はユウトを助けんの?」
「もちろんです!!・・・と、言いたい所なんですけど・・・俺も国連の職員としてユウ先輩を監視しないと」
「は?
「え?
「そう言う称号なんです。ま、国連に訴えはしますよ?ユウ先輩を解放するようにとは」
「・・・マジか・・・」
「まぁ、上手くいったら三人で旅でもしましょう」
「はぁ、お前に頼りたくはないけど、頼んだ」
「頼まれたくありませんが、決定事項ですからね」
「・・・やっぱり、仲良いねっ」
「良くない!!
「ありません!!
「ふふ」
この時間がずっと続けばいいのに――。
どうなるかは運命次第なんだよね・・・・・・。
本編 1章 完
※1章 完とありますが、続くか分かりません・・・。
2章と番外編を書きましたがしばらく更新しないかもです。
「僕、嫌だった。・・・アイちゃんのこと好きだったもん!!それなのに、アイちゃん・・・愛人君は――」
もう、耐えられなかった。
言いたいこともたくさんあるのに言葉が出てこなくてその代わりみたいに涙が出てくる。泣きたい訳じゃないのに、言いたいのに――。
「・・・・・・ユウ・・・ごめん。・・・ごめん」
「・・・・・・」
「・・・でもね。覚えておいてよ・・・ユウ。・・・あのときのアイちゃんはもう居ない。俺は愛人。・・・もう、君を泣かせたいだけの狂ったやつなんだよ、、ごめん・・・」
「アイちゃんに虐められたことなんてないもん・・・」
「・・・うん」
「泣かされたことなんて一度もないもん・・・いつも慰めてくれてたもんっ。・・・もう、あんなこと・・・しないでっ!!」
「・・・しない。・・・約束するっ!・・・・・・でも、そろそろギブ・・・」
「え――?
「はいはーい。ユウ先輩。野崎先輩との面会はこれまででお願いします。桐谷先輩、ユウ先輩を」
「分かった。・・・ユウ、まだ愛人は完全に回復してないんだ・・・。あとは休ませてやろう。な?」
「え・・・。そうなの・・・・・・・?」
郁は愛人君に駆け寄ってしゃがみこんだ愛人君を介抱してる(?)僕は後ろ髪を引かれながら伽南に腕を引かれてく。
・・・そっか。まだ愛人君、調子悪いんだ・・・。
叩いちゃったの・・・ダメだったかな・・・・・・。
「よく耐えてくれました・・・」
「・・・・・・ハァ・・・自分でも成長したと思うよ」
「俺も野崎先輩の気持ち分かった気がします・・・」
「ユウの泣き顔・・・。腰にくるよね・・・」
「・・・否定しません」
ユウ先輩が野崎先輩を叩いたのには驚きました。
しかし・・・これで良かったんでしょうね・・・・・・。
「俺、初めて叩かれたよ・・・。痛くなかったけど」
「・・・はい」
「でも・・・痛くなかったんだけど、胸が痛くなったって言うのかな・・・・・・?泣かせたいけど、あの瞬間泣かせたくないって思ったんだよね・・・」
「・・・えぇ」
「・・・ねぇ、俺も伽南や郁君のライバルになっていい?」
「拒否します」
「ははっ、言うと思った。でも・・・もう無理」
「俺、行きます。・・・それ、しばらく頭冷やした方がいいですよ?」
「・・・仕方ないでしょ。あれみたら煩悩くらい働くよ」
「失礼します」
・・・・・・どうしましょうねー・・・。
・・・まさかユウトが愛人を叩くなんて、思わなかった・・・。それにしても、パチンッって・・・どれだけ非力なんだ?ユウト。
「・・・痛かったかなぁ・・・」
「ん?」
「愛人君。・・・まだ調子悪いんでしょ?それなのに、僕、、」
「あぁ、気にすんな。アイツの生命力ゴキブリ並だから」
「そうなの?」
「そうだろ」
「・・・そっか」
「そう。それにあれは今までユウトが痛かった分、だろ?だったら受けて当然だ。(俺としては羨ましいくらいなんだが・・・」
「・・・うん」
「さて、中庭行くか」
「うん!」
そんなことまで信じちゃうなんて・・・ユウトは可愛過ぎる。
ほんとに心配になってくるわ・・・。
屋上を出て、僕と伽南は中庭に向かった。
昨日とは違ってやっぱり人が多い。ベンチも既に使われてた。まぁ、芝生の上でもいいか。暖かいし。
「気持ちーね・・・」
「・・・そうだな。何度も思ったけど、ほんとに外にいるみたいだ。風もそよいでるしな」
「ふふ。そうだね」
芝生の上で購買で用意した菓子パンの入った袋を置く。
購買では僕たち孤児は学園で行ってるクエストをクリアするとポイントが貰えて、それを現金に換えられるんだ。なんかギルドと同じ仕組みになってるから郊外学習ならぬ校内学習。
僕も薬師のギルドに入りたい。
それで、旅をして貧しい人や僕らみたいな孤児に癒しを与えたい。・・・でも、、国連の本部に勤めることになるのかな・・・。
「伽南は・・・進路、どうするの?」
「俺?・・・俺は・・・放浪する。外の世界を見て回りたいからな・・・それと、、俺の兄弟を探す」
「・・・兄弟」
「うん。・・・俺、双子の兄貴が居たらしいんだ。でも・・・兄貴はどこかの養子になったとかで・・・」
「・・・・・・僕も」
「ん?」
「僕も一緒に旅をしたい・・・」
「・・・」
「ダメなのかな・・・」
伽南と一緒に旅出来たら・・・どんなに楽しいんだろう。
・・・でも、、僕の称号は保護対象。国連の職員として働きながら監視されないといけない・・・。
「・・・行こう」
「・・・え?」
「一緒に。逃げよう。・・・運命から」
運命から・・・・・・逃げる・・・・・・・・・。
「逃げて、逃げて、・・・それでもダメなら、俺がユウトを助けるから。そんときはきっと・・・そこのストーカーも助けてくれんだろ」
「・・・?スト?」
「・・・はぁ、居るの分かってるなら声かけて下さいよ。入りづらいでしょ」
「あ、郁・・・」
すぐ近くにあった気の影に郁がいた。
・・・気づかなかった・・・・・・。
「んで?お前はユウトを助けんの?」
「もちろんです!!・・・と、言いたい所なんですけど・・・俺も国連の職員としてユウ先輩を監視しないと」
「は?
「え?
「そう言う称号なんです。ま、国連に訴えはしますよ?ユウ先輩を解放するようにとは」
「・・・マジか・・・」
「まぁ、上手くいったら三人で旅でもしましょう」
「はぁ、お前に頼りたくはないけど、頼んだ」
「頼まれたくありませんが、決定事項ですからね」
「・・・やっぱり、仲良いねっ」
「良くない!!
「ありません!!
「ふふ」
この時間がずっと続けばいいのに――。
どうなるかは運命次第なんだよね・・・・・・。
本編 1章 完
※1章 完とありますが、続くか分かりません・・・。
2章と番外編を書きましたがしばらく更新しないかもです。
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