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本編 1章

17.

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「ねぇ、伽南・・・。君なら分かるよね・・・?
・・・あぁ・・・思い出すだけで・・・可愛いユウ・・・俺のユウ・・・」

・・・うわー、、ヤベー・・・。
こいつも変態だった・・・・・・・。

「俺ね。あのときはほんとに狂ってた・・・。ユウが泣く度にゾクゾクして・・・あぁ、虐めたい!!って何度も思ってた・・・でも虐めたいけど優しくして守ってもやりたくて・・・。
俺の欲望が爆発した。
つい能力使って先生とか洗脳しちゃって、色んなとこの頭イカれた研究者とか雇っちゃって・・・。ユウを泣かせては記憶を消して、毎夜毎夜遊んでたんだ。だからユウはあんなショック受けてたのに発狂するほど、元気なくしてなかったでしょ?

まぁ、最後にはユウの記憶消すほど気力無くなってバテちゃって・・・結局病院送りだったよ。若気の至りと言うやつかな?ははっ」
「・・・テメェー・・・・・・」
「ん?」
「歯ァ食いしばれよ!!」

俺は耐えきれなくなって、愛人を殴った。
さっきから聞いてれば・・・!!

ガッっと鈍い音と愛人が床に転がる音がした。


「っ・・・・・・痛ぁ・・・」
「いくらテメェが狂ってようとそんなん関係ねーだろ!!ユウトはお前のせいで苦しんだ!!今でさえ、苦しんでる!!もうこれ以上ユウトを追い詰めんなよ!!」

俺は愛人の部屋を飛び出した。



胸クソ悪ィ・・・・・・。






















・・・伽南、まだかな?
何か持ってくるといってもう30分以上経つ。

「・・・桐谷先輩遅いですね・・・」
「・・・うん・・・何かあったのかな・・・・・・?」
「そうですね・・・。と言うかそろそろ夕食ですからね・・・。あ、ユウ先輩はどうしますか?」
「え?」
「怪我です。夕食時には食堂混みますから危ないでしょう?俺、おばちゃんにお願いしてお弁当作って貰ってきます。ユウ先輩のお部屋で一緒に食べましょう?」
「でも・・・」
「俺に甘えてくれません?ユウ先輩にパシられるのは本望ですよ。ね?」
「う、・・・うん」

郁がそう言って首を傾げた。
優しいその動きを見て・・・甘えても良いのかなって・・・。
ふと郁の顔が近づいてきた。

「・・・ごめ、遅くなった――
「あ」
「・・・イークー?」
「はぁ・・・空気読んで下さいよ・・・・・・これだから桐谷先輩のこと好きになれないんですよね・・・」
「あー、そーかいよ。俺もお前のこと好きになれねーや」
「なんで?僕は二人とも好きだよ?」
「「」」

「と、とりあえず俺、食堂行ってきます」
「ん?」
「あ、郁がおばちゃんにお願いしてお弁当作って貰って来てくれるって・・・お願いしちゃった」
「あぁ、ありがとな」
「いいえ、行ってきます」


やっぱり二人は仲良しだと思う。






















郁が行ってから、伽南にもお茶を出そうとしたんだけど自分でやるって止められちゃった。でもよくコップの場所知ってるなぁ・・・。
伽南は青い方のコップを持ってくる。
あれ、僕の黄色のと同じ柄なんだよね。
あれ?でも伽南が僕の部屋に来るの初めてのはず・・・・・・初めて・・・?

「・・・伽南・・・。伽南、僕の部屋に来るの初めてだよね・・・?」
「・・・は?・・・・・・そうだけど」
「・・・ううん・・・違う」
「・・・ユウト?」

違う。
僕の部屋、、伽南、来る、、、・・・お揃いの、、コップ。


「あ、、、あ、、」
「ユウト・・・・・・?」
「か、伽南!!痛い!、、頭、痛い!!」
「ハッ、、、ユウト!しっかりしろ!!今、職員室に――」



覚えてる。そうだ・・・伽南は――。
記憶が戻ってくる。
モノクロのシーンが頭の中にぐるぐると巡っていく。

一緒に玩具で遊んでた記憶。
お昼寝のとき隣で寝てた記憶。
内緒だよってみんなに秘密で貰ったおやつを食べてる記憶。
もっともっとたくさん・・・・・・。


それと・・・。
心配そうな伽南の顔。

倒れては起き上がって・・・最後には起き上がることも出来ないほどに疲弊していたのに、無理して起き上がって・・・・・・動けなくなった愛人君――。


ッ――。








「・・・・・・カナちゃん・・・」
「ユウ、ト・・・・・・」
「・・・・・・アイちゃん・・・は・・・?」
「思い、、出したのか・・・・・・?」

思い出したよ・・・・・・。
僕はぐったりとして、倒れかけてる僕を支えようとしていた伽南に凭れかかった。
目を開けると頭が痛い。
でも、目を閉じると・・・涙が出てくる・・・・・・。

「・・・・・・思い出したよ。ごめん、、ね・・・」

伽南は何も言わずに頭を撫でてる。
いつもは嫌なのに、今はすごく気持ちが良い・・・・・・。

「ユウト・・・・・・。良かった・・・・・・」
「ごめん、
「謝るな。・・・お前は悪くない」
「・・・うん。・・・・・・愛人は・・・?」

知りたかった。愛人が無事なのか・・・。
もしかしたら、、あの声は――。

「・・・・・・今日。ユウトを助けたのは愛人だ」
「じゃ、あ
「あぁ」
「・・・良かった・・・」


ほんとに・・・良かった・・・・・・・。
僕は重い目蓋に逆らえず、そのまま意識を落とした・・・。















まさか記憶が戻るなんて思わなかった。
もしかしたら、もう一生このままだとも覚悟してた。でも・・・俺のこと、思い出してくれた・・・・・・!

でも・・・二言目に愛人の安否を気にするユウトに暗い念が湧く。ユウトが愛人になついてたのは分かる。でも――。

あれだけのことをしたやつの心配なんて――。
ユウトは・・・愛人のことが好きなんだろうか・・・・・・。




















「・・・すみません。お願いします」
「いいーのよー。直江先生や荒井先生には聞いているから!・・・あの子は不幸が絶えないわね~・・・。まだ虐められてるの?」
「・・・まぁ」
「愛人君が居なくなっちゃってから、あの子ずっと苛められてたの。伽南ちゃんはしばらく視力落としてたし・・・そしたらクラスも別々でしょ?それにあの子の記憶喪失もあったから・・・」

・・・なかなか戻れそうにないですね・・・。
俺は今、食堂のおばちゃんに捕まっているんです・・・。ベテランさんかと思って声かけたのがいけなかったな・・・。

「それでそれで!クラスの中で称号のことバラされちゃって・・・苛めの対象みたいにされちゃって・・・。まったく可哀想な子よ・・・。よくおばちゃんに相談してくれてたもの。夜中眠れなくなって、寮内を散歩してたりしたから、よく一緒に寝てあげてたわ~」
「それ、どういうことですか?」
「え?・・・って、愛人君!帰ってきたのね~おかえり」

後ろを振り向くと、あの野崎 愛人がいた。
白の軍服が彼の白銀の髪と言い具合に、好青年、美青年を醸し出していると言ったところ。・・・左頬が腫れてるのが気になりますが。

「ただいま。・・・河合さん変わらないですね。相変わらずの美しさ・・・羨ましいです」
「まっ!社交辞令もほどほどに!」
「そんなことないですよ!で?さっきの話。僕にも聞かせてくださいよ」

このおばちゃんは河合さんと言うらしい。
いや、そうじゃなくて!

「あんたが学園から消えてあの子はもっと不幸になったって話。称号のことで苛められて、運命だからって諦めて、可愛いからって遊ばれて・・・・・・ほんとに可哀想な子だよ・・・」
「・・・へぇ、俺以外が・・・」


・・・同じ匂いがする。
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