離れる気なら言わないで。~運命に振り回される僕はいつ自由になれるのかな?~

紡月しおん

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本編 1章

16.

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「でも、抑え込んだって・・・」
「俺、寝技得意なんだわ。・・・試す?」
「今度ね」
「遠慮します。ユウ先輩に掛けようとしたら俺、許しませんからね?それだけは頭の片隅にでも入れておいて下さい」
「・・・怖ぇー・・・」
「ふふっ、二人とも仲良いね」
「「そんなことない!!(ありません!!)」」

照れなくてもいいのに・・・。










二人と話してるうちに部屋についた。
僕と伽南はこの学園が家だから一人部屋。郁は一般寮だから二人部屋。一般寮は三年生になると一人部屋になるんだよね・・・・・・。

「・・・二人とも上がってく?」
「良いんですか!?俺、今日から二年に特進したんで部屋申請したんですけど・・・一人部屋みたいで、どんなのか見たかったんです!!」
「・・・正確にはユウトの部屋が見たかったんです。だろ?」
「だったら、何です?」
「いいや?俺、一度戻るわ。なんか持ってくる」
「うん。分かった。・・・じゃ、どうぞ」
「わーい!」

僕の部屋は入ってすぐ左がキッチン。少し行って右がトイレとかシャワールームになってる。奥の一部屋にベットとテーブル、テレビとかがあるんだ。
郁もやっぱり二人部屋とは違う内装にキョロキョロと部屋を見渡している。・・・恥ずかしいな。

「汚いとこだけど、座って?」
「そんなことないですよ!
失礼します。・・・以外と狭いんですね・・・」
「?そうなのかな?でも使い勝手いいよ。お風呂が大浴場にしかないのが辛いけどね」
「あぁ、分かります。・・・ユウ先輩、大浴場使ったこと有るんですか?」
「え、?うん。ちっちゃい頃とかだけど。・・・最近は・・・目線が気になるって言うか・・・なんか・・・それで部屋のシャワー使ってるよ」
「・・・目線・・・」
「・・・うん。なんて言うんだろ・・・見られてるって言うか」
「っ・・・」

・・・血の涙ってほんとに流れるんだ・・・。
あ、

「俺、その目線の奴ら消してきます」
「え・・・?」
「ユウ先輩は気にしないで下さい!ふふふ」
「えー。気になるよー。あ、あとで一緒にお風呂行く?郁とならその目線とかも気にならないかもだし!」
「え・・・・・・」
「ダメ・・・?」
「いえ!ぜひ!!・・・・・・ユウ先輩の・・・・・・」
「良かったぁ」

これで久しぶりにおっきなお風呂入れるー。


















「・・・なんだよ」
「・・・久しぶり。ちょっといい?」
「お前と話すことなんてない」
「・・・そう」

チッ・・・・・・。
なんでこんなとこで出会すんだよ・・・。

「ユウの部屋。変わってないんだ」
「っ!?・・・ユウトのとこ行こうとしてんのか」
「うん。・・・謝りたくて」
「止めろ」
「・・・何故?」
「もう、お前のことなんて思い出す必要ないからだ」
「・・・」
「これ以上ユウトに近づくなよ!!」
「・・・・・・俺は・・・」
「ユウトはお前のことなんて覚えてない」
「は?」
「・・・・・・自業自得だろ」
「それって――
「いいか!?ユウトには近づくな!!これ以上苦しめる必要ない・・・!」

思わず、胸ぐらを摑んでしまった。
・・・こいつに触るのさえ反吐がでる。それくらいには精神的に受け付けていない。

「・・・分かった」

あまりにも簡単に引き下がる愛人にホッとするような、カッとなるような・・・複雑な思いが沸き上がる
・・・近づくなって言ってんのに、何思ってんだよ俺。これで良いに決まってんだろ。

「伽南。・・・少し話せないかな?」
「・・・は?お前と話すことなんてないだろ」
「俺はあるよ。・・・せめて、言い訳くらいはさせてほしい」
「言い訳・・・」
「あぁ・・・。俺の部屋でいいか?」
「・・・」

何を思ったのか。
愛人についていってしまったこのときの俺を呪う。






愛人の部屋は特別寮。
学園の寮は俺らの家――学園寮、と郁のような高校からの一般の奴でも入れる一般寮、そして成績優秀であることや将来有望であると見られた奴のみ入れる特別寮の三つがある。恐らくこれからは郁もここになるんだろう。

「まぁ、座ってよ」
「・・・・・・」

俺は無言で指定されたソファに座る。
やはり特別寮だけあって部屋も広い。・・・ふと、右端にあるキャビネットに飾ってある写真が目に入った。
愛人と・・・ユウトと俺。
あの雪の日に撮った写真だ。

「・・・・・・なんでだよ・・・」
「ん?」
「お前、、なんで――ユウトを・・・・・・」
「待って伽南。まずは俺の話を聞いてくれない?」
「チッ・・・」
「・・・うん。その反応が正しいんだろうけどね・・・」
「当たり前だろ・・・」

久しぶりに話す愛人。
・・・あのときに戻ったみたいだ・・・・・。いや、違う。

「とりあえず、紅茶でも飲む?長くなるし」
「・・・いらん」
「ま、そんなこと言わないでよ。・・・・・・はい」

要らないと言っているのに・・・。
目の前に出されたカップを見る。

「飲んでよ」
「・・・変なもの入っていたらどうする」
「俺が先に飲もうか・・・間接キスしちゃう?」
「・・・・・・」
「ごめんごめん・・・」


愛人の冗談は無視して、注意しながら紅茶を口に含む。

「俺、病院じゃなくて精神科のある収容施設に入ってたんだ」

ぶふっ

「ちょ、伽南・・・驚いたからって吹かないでよ。汚い」
「・・・待て、は?」
「学園では俺のこと病院に長期入院ってなってただろうけど、ほんとは囚人としてお国に奉仕してたんだよ」

冗談半分に言いながら愛人はキッチンから布巾を持ってきて、俺の吹いた紅茶を片付ける。
・・・よく考えれば、収容されてたとしても当然か・・・。
今まで長期入院と信じていたが、あれだけのことをして罪に問われないのが不思議なくらいだよな。たとえ、罪に問われない年齢だったとしても。

「それで、一応回復はしたんだ・・・。
だから戻ってきた。俺の入った収容施設に学園長が面会に来てくれて・・・。罰金払えば出られたらしくて・・・俺が反省したか確認しに来たんだ」
「何が言いたい?・・・反省したからユウトに会わせろか?」
「違う。って言ったら嘘になる。
でも、さっきも言ったでしょ?言い訳くらいさせてって」
「ふざけんなよ!!」
「ふざけてないよ。俺だって必死なんだから」

愛人の真剣な表情に一瞬怯む。

「俺だって・・・またユウの泣き顔みたいんだから!!」
「・・・・・・は?」


俺はどんな反応をすればいいんだ・・・・・・?
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