離れる気なら言わないで。~運命に振り回される僕はいつ自由になれるのかな?~

紡月しおん

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本編 1章

14.

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「そのあと・・・。
気を失ってた俺が目覚めたら、目の前に学園長が居た。と言っても、そんとき俺は失明してたらしくて見えなかったんだけど学園に監査が入ったんだと。前の『闇姫』が予知夢で視て・・・そんで警察が動いたんだよ・・・。
お陰で先生だとかは信用の置ける人にしてくれたし、ユウトの称号についても箝口令を敷いてくれた。
それでも・・・・・・。

ユウトは記憶を失ってた・・・。
愛人は帰ってこなかった・・・・・・」



イクは静かに聞いている。
この話を知ってるのは俺と・・・愛人と・・・そのくらい。
いきなり、こんな暗い過去を話されて驚かない奴なんていないはずだしな・・・。


「ユウトはあの実験場で起きてたことや、愛人のことだけじゃなくて・・・俺のことまで忘れてた。今でも思い出すよ・・・。
・・・・・・愛人はそのまま病院に送られたらしい。怪我だけじゃなくて、今までの受けた怪我が蓄積されてて完治まで何年かかるか分からないほどだった」


イクは腕を組んで、何か考え込んでいるようだった。しばらくしてイクが顔を上げ、落ち着いた口調で話し出す。

「・・・それでも、、何故桐谷先輩はその・・・野崎先輩を憎むんですか?・・・理由は――
「理由?そんなん決まってる。
・・・あいつが全て仕組んでたんだからなっ!!」
「し、仕組む・・・?」
「学園に監査が入ったとき、『闇姫』が精神干渉系の魔法で教師だとか関係者を調べたからな・・・。それで愛人が――愛人が全てを指揮してたと分かった。
あの愛人を攻撃してた奴らも先生も・・・愛人が金と洗脳で雇った奴らだったんだ!!」

「・・・っ、、それって・・・・・・」
「分かったか?・・・頭のいいお前なら分かるだろ?
・・・・・・そうだよ。愛人は強くなりたかった。だから、回復した相手のステータスを全て上げることの出来るユウトを使ったんだ!!」

真相に辿り着いたらしいイクは、もう何も言わなかった。

「・・・だから、、俺はユウトを守る。あのとき――。
・・・・・・泣き叫んでいたユウトを、、俺は・・・・・・動けなかった、俺は・・・・・・っ・・・」
「・・・・・・先輩、、」
「だからっ!!お前も、、ユウトを守ると約束しろ!!」
「っ、、えぇ。勿論。・・・桐谷先輩に言われなくともユウ先輩を守るのは俺です。貴方より先に先輩の元に・・・」
「・・・そう言うと思った。ははっ」
「聞かせてくれてありがとうございます。・・・それより――」

それより?
イクは目線を未だに目覚めず青い顔をして保健室のベットに横たわるユウトに向ける。
ユウトが保健室に運ばれてから既に一時間。魔法訓練の実習はユウトの件で一旦中止となった。・・・正確には新たな問題があって・・・・・・。

「さっきの人。・・・野崎先輩でしたっけ・・・」
「・・・あぁ」
「最後まで勝ち残ればあの人と演習することが出来る・・・でしたね。何故です?桐谷先輩の話だと・・・」
「知らないのか?・・・あいつ今年、騎士団に入団したんだよ。俺も急なことで驚いたけど、ユウトには聞かせないようにしてたからな」
「・・・なるほど。この学園で在学中に騎士団ですか・・・」
「それも全部、ユウトのお陰なのにな・・・・・・。おっと、また暗い話になるとこだった」
「まぁ、桐谷先輩の気持ちも分かりますからね・・・。複雑です」
「・・・・・・」
「ま、ユウ先輩の敵なら俺の敵ですけど」
「ユウトはあいつの記憶は失ってる。けど、いつ思い出すか分かんねー。あんなこと・・・思い出して欲しくねーよ」




















夢を見てるのかな・・・・・・。
分かんない。

確かに知ってるはずなのに・・・。















っ、、・・・痛い。

「はっ、ユウト!!」
「ユウ先輩!!」

目を開ける。・・・デジャブ。
目の前に伽南と郁の顔のドアップがあった。

「・・・・・うっ」
「動くな。今、荒井先生呼んでくるから」
「俺、氷水替えますね。・・・まだ腫れも引いてないので」
「・・・え?」
「桐谷先輩。宜しくお願いします。ついでに直江先生にも報告してきて頂けると有り難いです」
「分かった。ユウトは無理しないようにな」

・・・なんか・・・・・・二人とも格段に仲良い?

「・・・・・・ユウ、、先輩・・・その顔」
「ユウト・・・・・・それ、反則・・・」
「?」

二人とも真っ赤になっちゃった。
そう言って伽南は保健室から出て行っちゃったし、郁も氷水替えるって冷蔵庫でごそごそしてる。
・・・嬉しくてつい頬が緩んじゃっただけなんだけどな・・・。反則の顔ってどんな顔?そんなに変な顔してたかな・・・?


「はい。頭少し支えますね。・・・あのあと、地面に落ちたときに頭を打ったらしいですよ。だから少しくらくらするかも」
「・・・うん。少しだけ」
「・・・・・・あと左の肋骨折れてます」
「・・・・・・」
「左腕は靭帯もやられてるらしいです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの佐々屋って人ですか?」
「っ、、・・・・・・何でもない」
「・・・何でもなくないです。佐々屋さんは今、事情聴取を受けてますよ。明日にでも、警察が――
「違う!!違うよ!!・・・悪くない!!悪いのは・・・僕だから!!」
「それにしてもあの魔法は校則違反です。あれは明らかにユウ先輩の生命に関わった・・・」

それでも・・・僕が反抗したからいけないんだよ。

「・・・泣かないで下さい。分かりましたから。・・・とりあえず、荒井先生がユウ先輩が気を失ってるときに応急措置で靭帯も骨折もくっつけといてくれました。でも安静にしてください」

そう言って、郁はベットの端から離れようとした。
・・・怒ってる?
郁はさっきから僕の顔を見ようとしてない気がする。


「・・・郁・・・・・・っう」
「え、、どどうしたんです!?」
「っふ・・・うっう・・・・・・なんでっ、、怒ってる、のぉっぅ」
「え
「ぼく、、怒らせたっ、、っ?」
「ち、違います!!泣かないでっ」
「じゃあ、っ、、なんでっ・・・・・・」
「なんでって・・・ユウ先輩、泣かないで・・・・・。俺、別に怒ってなんてないですから。ごめん。ごめんなさい。お願いだから、泣かないで・・・俺が耐えらんない・・・・・・っ!」

「何やらお困りのようだな!青少年!助けてやろうか?」
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