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本編 1章

13.

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※残酷描写入ります。
苦手な人は気を付けて下さい。


ーーー   ーーー   ーーー   ーーー   ーーー



「・・・桐谷先輩。話して下さいよ」
「・・・何をだよ」
「さっきの・・・知り合いですよね?それに、ユウ先輩とも」
「・・・・・・」
「お願いします。・・・俺も知りたい」

驚いた。
イクが俺に頭を下げるなんて――。
イクの顔は俺と言いあいしてるいつもと違いいつになく真剣で・・・ほんとにユウトのことを想っているんだろうと思う。

「・・・・・・アイツが、、ユウトの想い人・・・野崎 愛人。・・・ユウトに嘘ついて、裏切って・・・傷つけた――最低なヤツだ」
「・・・・・・何があったんですか?」
「・・・・・・10年前。ユウトと俺と愛人は友達だった・・・」

だった。過去形だ。
アイツは・・・・・・嘘をついた上にユウトを騙して裏切った。あの純粋無垢で何も知らないユウトを。

「・・・ユウトにはそのときの記憶がぽっかり抜けちまってる。だから、俺のことも覚えてない・・・俺とは五十嵐の件で会ったのが初めてだと思ってるけど、そうじゃない・・・・・・!!アイツが・・・・・・アイツが・・・・・・・・・俺らを壊した・・・・・・・・・!!」
「落ち着いて下さい!!先輩!!桐谷先輩!!」
「ハッ、、、・・・・・・ごめん・・・・・・・・・」
「いえ、ゆっくりでいいです。あの人が、本当に悪い人だと言うなら俺も少しは役に立つかもしれない!!・・・教えて下さい」

イクに揺さぶられて我に帰る。
手のひらを見ると血が滲んでいた。

「・・・話す。だから、、お前もユウトを守れ!!」



















10年程前。
生まれたときから孤児の俺といつからいたのか分からないけど理由があってここにいる愛人は物心つく頃から友達だった。
愛人にここに来た理由を聞いても微笑むだけで教えてはくれなかった。だから勝手に同じ孤児だと思ってた。

それからユウトがこの学園に来た。

俺や愛人も小さかったけどそれよりもっと小さくて可愛いユウトに俺らはいつも近くにいて守ってあげると約束した。


そのときから。
愛人とは一年のうち、冬の幾日かしか会えなくなった。
先生に聞けば愛人は孤児でなく学園長の知り合いの子で、遠くにいた親族が愛人を引き取ろうとしていたらしい。
・・・友達に家族が出来るのは嬉しかったけど、寂しくもあった。それはユウトも同じで毎年毎年帰ろうとする愛人を引き留めては泣いていた。



『アイちゃん・・・』

『また来るよ』



何度も見た。
寂しそうなユウトと、そんなユウトを宥める愛人。
白い雪が舞う頃に愛人は学園に戻ってくる。
でも――。


ユウトが8歳の冬。それは途絶えた。
ちょうど、ユウトの称号が分かった年。それを知ったときは驚いたけれどユウトは俺と愛人で守ると決めていたから、愛人がいない間は俺が守ると約束していた。




あるときからユウトが寮の部屋に帰ってくるのが遅くなった。何故か問い詰めたら、先生からお願いされて実験を手伝っていると言っていた。
俺も何度か実験を手伝ったことがあったし、ユウトの称号のこともあって、危険はないだろうと思っていたんだ。

でも、何日も帰ってこない日があったり・・・日に日に暗くなるユウトに何かがあったのは分かった。
だから・・・こっそりユウトのあとをつけた。


地下の実験場まではコンクリートの冷たい道が続く。ひたひたと俺の足音も響くほどなのに、ユウトは気づかない。それくらい疲れきっている様子で・・・・・。

時々フラフラと壁に凭れたり・・・。
思わず駆け寄りそうになったけれどバレたら部屋に戻されるから我慢した。



一番奥の、実験場に繋がる扉の前でユウトは一度止まった。そのままひたりと座り込んだ。

『・・・・・・アイ、、ちゃん、、、、』

ドキリとした。
ユウトはやっぱり愛人のことが好きなんだろうし、愛人になついてたのは分かっていたから。だからこそ、その愛人を呼ぶくらいに辛い思いをしているのかと・・・。

明日、先生にユウトの実験の手伝いを辞めされてやれないかお願いしよう。
そう思って引き返そうとした。
その時――。


『悠仁君。こんばんわ・・・今日も頑張ろうね?』

振り替えると先生に手を引かれて実験場に入るユウトがいた。扉が閉じる寸前に俺は気づけば実験場に侵入していた。



しばらく、どうしようと考えていた。
俺の身長じゃ扉の取っ手には手が届かない。いや、届いても引けないし扉の電子キーを解除しないと開かない。

仕方なく進むことにした。
この実験場は練習場みたいだ・・・。きっと、新しい魔法の開発にでも――。

『うわぁあぁ゙゙あぁぁああ゙ぁ゙゙あ゙ーーーーーー!!』

っ!?・・・・・・ユウ、、ト・・・・・・?

『あ、あ、あ、あ、』
『悠仁君ー。落ち着いてー。大丈夫だから。君が治せば愛人君も痛いの消えるから。ね?』
『あ、うっうぁ、ぁぁあ・・・・・・あ、アイ、、ちゃんっ』

驚いて実験場を覗きこむとそこには――。
血溜まりに倒れこんでいる愛人とその傍で泣き叫ぶユウト。ユウトが動かない愛人に手を触れ力を使おうとしていた。光り出す愛人。しばらくして愛人が起き上がる。

『・・・ユウ・・・』
『アイちゃん・・・・・・』
『頑張って』

愛人はそう言うと笑った。
ユウトから離れる。

『始めて下さい』
『はい。準備ー』

愛人と先生と・・・他にも数人いた。
先生とその数人が愛人に、、焔に氷に雷の魔法を・・・。
みんな嘲笑していてその様子はまるで・・・地獄絵図だった。
再び血の海に倒れ込む愛人。

『悠仁君。頑張って』
『も、、やっ!!』
『ユウ・・・・・・。君のためなんだ・・・』
『あ、、アイちゃん!!もう、止めて!!』
『嫌だよ。・・・早く、、俺を・・・もっと・・・・・・』


その繰り返しだった。
俺は・・・・・・長い間、呆然とその様子を眺めていた。

いつも間にかユウトの瞳は光を写さなくなった。
愛人や先生に言われるまま体を動かしている。


『流石ですね・・・流石は聖を持つだけある・・・』
『坊っちゃんもやりますねー』
『ほんとに能力増加してるんですか?』
『それは確かだ。あの力を使い続けて、二人とも格段に能力が上がっている』
『そうか・・・ではあの子を使えば・・・・・・』



俺は幼いながらに理解した。
こいつらは敵だ。ユウトを虐める、敵だ。
そして、攻撃を受けては倒れて笑いユウトに治されてまた攻撃を受けては倒れる愛人・・・。
どう見ても、ユウトの味方にはみえない・・・。



『うっ、、、うっうぅぁあぁっ!!やっー!!』
『おっと・・・ちょっと休みー。・・・どうしたの?悠仁君。今日はあと20回くらいやんないと・・・』
『いやっ!!アイちゃんがっ!!』
『ふふっ。悠仁君が治せばいいでしょう?』
『無理、、むり、むりむり!!』

既に愛人は起きる気力も無いのか寝転がっている。

『愛人君は?まだいけるよね?』
『・・・はい。ユウ・・・やろ?もっと俺を強くして』
『始めましょう!』


そして、また愛人に攻撃が放たれた。

『うぁあぁああぁあぁーーーーーーーー!!』







見えたのは。

動かない愛人。

動けないユウト・・・。
泣いて、泣いて、叫んで・・・・・・。

周りの大人たちも突然のアクシデントに驚いて騒々しいくらいに悲嘆し、嘲笑し、激怒し・・・・・・。子供の俺でも分かるくらいに愛人やユウトの生命なんて関係ないみたいな態度。


『失敗ですね』
『あーあ・・・ん?あ、生きてるな・・・』
『とりあえず、兵器の方は病院で称号持ちの方はしばらく様子を見ますかね・・・』


俺たちなんて・・・モノとしか思ってないんだろうか?

ユウトを助けるなんて考えてる暇が無いくらいに頭が真っ白で、ユウトの純粋で素直な優しささえ踏みにじるような愛人の言動。どんな理由があったとしても、それは許されない。



もう、、何をすればいいか・・・分かんねーよ・・・・・・。





気づいたら俺は気を失ってた・・・・・・。
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