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本編 1章

9.

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『転送します』

僕は目を閉じると、白い光に包まれた。

次に目を開けた時。
地面のゴム素材の感触が足に触れた。
地面には転移陣。
真っ直ぐ奥には相手。
確か、直江先生クラスの人かな?


『Dブロック第一試合。
牧野 悠仁 VS 田中 三郎』

田中君・・・。
田中君の装備はタンク向けの甲冑。あれ、すごく重いの。
僕の装備はと言うと普通の服。
装備って言う装備って持ってないんだよね・・・。でもこれ、すごく動きやすいんだよ?フード付きで、猫耳になってるんだって。可愛いの。プラムは四角形の端に紐を通せるようになってるから、ペンダントみたいに首に下げてる。
失しちゃうと大変だからね。




「よろしくお願いします。牧野です」
「あ、田中。田中三郎」

自己紹介を軽くしてから魔法訓練の試合は始まる。
僕はぺこりと頭を下げた。




『レディ・・・・・・ファイト!!』

田中君はビクリとした。
やっぱり慣れないよねー。僕も未だにドッキリする。
それでも僕に向かって走り出す田中君。
あの甲冑でよく走れるなぁ・・・・・・。
田中君は腕をクロスして、走ってくる。しかも早い。
・・・・・・プラムは甲冑に仕込んでるのかも。

あ、郁と伽南だ。
二人には良いとこ見せないと。僕も地味なやつだけど、少しはやるなってくらいには思ってほしい。
僕は胸に手をおいた。


「≪展開≫」
「っ!!?」

驚いた様子の田中君。
僕は田中君が僕に突進する直前に避けて甲冑に触れた。

「≪侵入≫」
「うわっっ!!!!!」


ボフンッ






















「・・・・・・何したんですか?」
「ん?」
「・・・・・・・・・今――」
「うん。ユウト?相手のプラムを使用出来なく・・・・・・したんだろ。お前、プラム自作なんだろ?だったら構造くらい知ってるだろ」
「・・・ええ、自分の魔力をプラムに通して安定させる――」
「もし、その魔力が増大したら?」
「え・・・・・・?」
「プラム内部の自分の魔力。それが増大したとしたら?」
「・・・・・・・・・」
「回路に流れる魔力が増大したとき・・・それはプラムの許容量を超えて逆流する・・・・・・」
「・・・そんな魔法が・・・・・・!?」
「癒しの能力の応用だわな。・・・ユウトの能力は対象を癒す。どんな傷であっても触れるだけで治す。そしてその相手の能力を増幅させる・・・・・
「それって・・・」
「魔法なんだよな・・・これが」
「魔法なんですか?」
















『WINNER 牧野 悠仁』


勝っちゃった。
良かったぁ・・・田中君、体が大きいから怖かったし。
でも田中君のプラムが分かりやすくて甲冑も鉄製だったのが良かったのかも。
もし甲冑が魔力を通さないものだったら絶対に危なかった。

まぁ、これもまぐれかな・・・・・・。




「ありがとうございました!!」
「・・・・・・」
「あれ?」

田中君が倒れたまま。
・・・・・・失敗しちゃった・・・・・・・・・?
僕は急いで駆け寄ると、田中君を起こそうとする。

「お、重いぃ・・・」
「すんません・・・・・・この装備慣れてなくて」
「大丈夫?」
「へ、わ、あ、あの・・・僕、大丈夫です。てか離れてくださいぃ・・・!お願いします!!」
「え、、え、?」
「あの、ホント、お願いします!!」
「・・・・・・僕、、嫌われた・・・・・・?」
「いや違くて!ホント大丈夫なんで!!立ちます!自力で!!」
「そう?」
「はい!先に上がってください!!」
「・・・・・・うん、えっと。ありがとうございました」
「うん!ありがとう!!」

田中君は地面に寝転がったままだけど田中君がそう言ってるんだし、大丈夫か。
僕は自分の転移陣へと戻った。後ろ振り向いたらまだ地面に寝転がる田中君。・・・本当に大丈夫?
















「あ、お疲れ様です・・・」
「郁。あれ、伽南は・・・・・・?」
「桐谷先輩は次なので移動しました。それより・・・凄かったです!!あれ、魔法ですか!?」
「ふふっ、驚いた?」
「はい!!」
「僕の力を≪展開≫して、田中君のプラムに≪侵入≫させたの。丁度田中君が強化しようとしてたから・・・それで逆流させたの」

魔法って言うのは使用者のイメージが一番大切になる。
発動にはイメージさえあれば魔法は使える。もちろん無詠唱と言うこと。でも発動のためのキーがあれば、普通に魔法を発動するより格段に違う強さで魔法が使える。

だから僕は≪展開≫や≪侵入≫と言った。
その言葉がキーとなって発動した。キーが何を意味しているのかは使用者しか分からない。だから、僕が≪侵入≫と言っても何を侵入させたかなんて誰も分からないから。

ほんとなら≪増大≫でも良かったんだけど・・・苦手なんだ。



「ユウト先輩凄いです!!ホント――」
「・・・・・・・クソビッチの癖に」

あ・・・・・・。

「今、、ユウ先輩になんか言いました?先輩・・・・・・?」
「郁!」
「あ?別にぃ?」
「・・・・・・ッ――!!」
「ダメ!・・・何でもない。ごめんね?」
「チッ・・・・・・」


・・・同じクラスの人。
――遠藤君はそのまま立ち去ってしまった。

「ユウ先輩。今の――」
「・・・とりあえず、伽南の見に行こ?そのときに話すね・・・」

僕は郁の手を引いて歩き出す。
・・・手、、少し震えちゃってる・・・・・・やばい・・・。

「先輩・・・・・・。分かりました」
「?」
「どうせなら、桐谷先輩に見せつけましょ?」

郁は繋いでいた手を指を絡ませて言った。
・・・恋人繋ぎ・・・・・・。
僕は郁を見る。
「どうしました?」そう言って笑う郁。



「ふふっ、そうだね」

郁は本当に優しくて、いいこだなぁ。




















「おーいっ!!!!!そこっーーー!!見せ付けんじゃねー!!」
「桐谷先輩ー。ガンバッテー。
さ、ユウ先輩!俺の膝の上どうぞっ?」
「≪焔の壁≫!!≪爆裂≫!!
ウォォォォォーーーーーーーーーーーッ!!」

『WINNER 桐谷 伽南』

「ありゃーしたぁッ!!イクッ!!!!!そこで待っとれー!!」


もう、勝っちゃった・・・。やっぱり伽南は強いや。
もう終わったけれど伽南は自分の装備を使ってた。あの綺麗な着物。・・・カッコよかった・・・。
叫び声に驚いて伽南を見たら相手を大きな炎で包んでいて・・・。そのあとに壁の外で炎が爆発した。
壁が消えたら相手は防護壁を展開して倒れていて、すごく心配・・・大丈夫だったかな?

この魔法訓練での勝敗は相手が魔法を使用出来なくなるか、気絶させるか・・・・・・とにかく戦闘不能になることが条件。
あ、もちろん死なない程度だよ?
僕の場合は田中君が甲冑で起きれなかったから勝てたの。

あ・・・。


「イク!!てめぇー」
「先輩。暴力反対ですよー?(棒)」
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