離れる気なら言わないで。~運命に振り回される僕はいつ自由になれるのかな?~

紡月しおん

文字の大きさ
上 下
7 / 23
本編 1章

7.

しおりを挟む
「ユウ先輩のせい?」
「うん・・・・・・」
「・・・・・・俺は・・・俺は違うと思いますよ?それはユウ先輩のせいなんかじゃなくて、称号のせいです」

・・・・・・伽南と同じだ。
僕が伽南の方を見ると伽南も笑っている。

「・・・・・・僕は能力の対価で相手を自分に惹かせるんだよ?ほんとの僕は本当に地味で暗くて――」
「ユウ先輩。顔あげて?」
「・・・・・・好きって、、郁は言うけど。違うよ?」
「ユウ先輩・・・・・・」
「僕を好きじゃなくて、対価のせいで僕に惹かれてるんだよ?そのうちこんな僕、嫌になるよ?」
「ユウ先輩。俺の目、見て?」

そう言うと僕の顔を覗きこんだ。

「・・・・・・何?」
「俺は――俺も、桐谷先輩も。ユウ先輩の性格やちょっとした仕種・・・少し天然なところ。器用なのに無器用で、素直で優しいユウ先輩が好きなんです。運命とか関係ないです」
「でも――っ」
「お前が自分に自信ないのはアイツのせいだろ?それは運命のせいでもあるけど、お前がそこまで思い込んでるのはアイツのせいだ」
「アイツ?」
「あ、・・・・・・ユウト・・・アイツのことは、、話すのか?」
「・・・・・・・・・・・・うん」
「・・・・・・アイツ?」

あの人――。

「イク、、抑えろよ?」
















「ユウ。おはよ」
「・・・・・・ぉ・・・ょぅ・・・ぃ・・・・・」
「ん?」
「お、、おは、、、」
「おはよ。寝癖ついてる・・・可愛い。好きだよ?」
「へ、、?/////」

五十嵐 叶先輩。僕が初めてお付き合いした人。
今までも告白されたりしたけど付き合うのは初めてだった。
高校生になって先輩と出会ったんだ・・・。


「ユウ。手、繋ご?」
「!・・・うん、、」
「今日は少し寒いね・・・もう四月も半ばなのに」
「・・・・・・うん。寒冷前線が近づいてるって」
「え、ほんと!?昨日はぽかぽかしてたのにね。ようやく春らしいと思ったら・・・まぁ冬でもユウが暖かいからいいか」
「え?」
「冗談」
「むー!!先輩、からかわないでよっ」
「はいはい。ははっ」


楽しかった。
ほんと。
でもあの日はもう戻ってこない。


叶先輩には称号のことは言わなかった。
先輩は知らない人だし、言わなければこのまま、、このままで居られるような気がしたから・・・・・・。

いつも笑顔で優しくて、かっこよくて、強くて――。
尊敬してた。でもそれがいつなのか『好き』になった。
叶先輩のことを思うと自然と『好き』って言葉が出てくる。
毎日ってほど叶先輩は僕に好きと言った。
僕もつい言いそうになったけど、恥ずかしくて言えない。
そんな日が続いた。



「先輩」
「あ、ユウ・・・・・・。来てたんだ」
「えっと・・・風邪でお休みって聞いて、、その――」
「だぁれ?その子」

その日は先輩が風邪で学園をお休みしてた。
先輩は一般からこの学園に来たから一般寮に住んでた。三学年の一般寮の寮長さんにお願いして先輩のお部屋で待たせて貰ってたんだ。
でも、先輩は部屋にいなくて・・・風邪なのに無理してお買い物にでも行ったのかなって思って待ってた。
なのに――戻ってきた先輩は綺麗な男の人を連れていた。

「ん?・・・友達?」
「え・・・」
「もうー!カナタの友達?だったら言ってよー!!もし浮気相手とかだったらって睨んじゃったじゃん」
「・・・・・・そんな訳ないだろ?」
「何その間ー」
「ユウ。今日は帰って」
「・・・先輩――」
「万智。少し待ってて」
「おっけー。買ってきたお菓子食べてる」

先輩は微笑んだ。
僕に向けてたみたいな優しい眼差しで。
腕を引かれて、外に出る。
先輩が帰ってきたときに寒くないように付けてた暖房の暖かさから、五月に変わろうとしてるのに未だ三月のような冷気に身を震わせてもう一度先輩を見る。
先輩の目は外の冷気より凍えそうなほど冷たかった。

「別れる」
「・・・・・・え?」
「・・・やっぱり、ユウへの好意はユウの称号せいだって気づいたんだ。俺はユウを好きじゃない。好意であっても好きじゃないんだって」
「先輩――」
「だから別れる。よく考えたらユウみたいな地味な子好みじゃないし。恋愛対象でもない。・・・好きでもない」
「っ・・・・・・・・・」
「じゃ」


ガチャン

目の前のドアは閉じた。
・・・・・・なんで・・・・・・・・・?なんで――。

「・・・・・・あれ?ユウト?・・・泣いてんの・・・・・・?」
「え、、?」
「ユウトっ!!」

















「・・・・・・郁も叶先輩みたいになると思う。あれだけ好きって言ってくれた先輩でさえそうなのに・・・僕を知っていくうちに離れたくなるんだもん」
「イク」
「だから、、僕は・・・郁に後悔してほしくない。僕のこと好きって一時の気の迷いで離れてほしくない。ごめんね」
「イク!!」
「?郁・・・・・・??どうしたの?」

僕が話終わって、伽南が郁を呼ぶ声が聞こえた。
思わず顔をあげた。
・・・・・・え?

「酷い・・・。なんで・・・・・・」
「・・・郁?」
「ユウ先輩に、、よくそんなこと・・・・・・許せない」

郁の目には怒りとも悲しみとも似つかない感情が映っていた。憤り、憤怒、焦燥、悲観、・・・分からない。
なんで郁がそんな顔をするの・・・・・・?

「郁・・・・・・怒ってる?」
「ええ。今すぐに転移してその五十嵐って人を殴って葬りさりたいくらいには」
「イク・・・・・・大丈夫だ。殴るぶんには俺がユウトの仇とったから」
「足りませんよ!!」
「・・・足りないな。でもこういうのは今じゃないだろ?」
「チッ・・・・・・」
「焦んなよ。こういうのはゆっくり・・・・・・」
「なんの話??」
「ユウトは気にするな」
「ユウ先輩のことは俺が守ります」

伽南・・・・・・。郁・・・・・・。

「・・・・・・・・・・・・勝手にして」
「ユウト・・・・・・」
「はい!勝手にします。俺がユウ先輩を――」
「でも、郁はそれを聞いても僕と友達でいてくれるの?」
「ユウ先輩が望むなら友達以上でも――」
「それ以上は言わせねぇよ!?」
「ちょっと桐谷先輩は黙っててもらえます?」
「さっきから、聞いてりゃお前は――」
「ありがとう!!」
「え、、?」
「二人とも。ありがとう・・・僕のことが嫌になったら言ってね」
「そんなこと絶対ない!!」
「生涯有り得ません!!」

そんなことはないと思うんだけど・・・・・・。
でも、、すごく嬉しい・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運命の番が解体業者のおっさんだった僕の話

いんげん
BL
僕の運命の番は一見もっさりしたガテンのおっさんだった。嘘でしょ!?……でも好きになっちゃったから仕方ない。僕がおっさんを幸せにする! 実はスパダリだったけど…。 おっさんα✕お馬鹿主人公Ω おふざけラブコメBL小説です。 話が進むほどふざけてます。 ゆりりこ様の番外編漫画が公開されていますので、ぜひご覧ください♡ ムーンライトノベルさんでも公開してます。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

変異型Ωは鉄壁の貞操

田中 乃那加
BL
 変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。  男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。  もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。  奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。  だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。  ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。  それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。    当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。  抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?                

どうやら手懐けてしまったようだ...さて、どうしよう。

彩ノ華
BL
ある日BLゲームの中に転生した俺は義弟と主人公(ヒロイン)をくっつけようと決意する。 だが、義弟からも主人公からも…ましてや攻略対象者たちからも気に入れられる始末…。 どうやら手懐けてしまったようだ…さて、どうしよう。

ツンデレ貴族さま、俺はただの平民です。

夜のトラフグ
BL
 シエル・クラウザーはとある事情から、大貴族の主催するパーティーに出席していた。とはいえ歴史ある貴族や有名な豪商ばかりのパーティーは、ただの平民にすぎないシエルにとって居心地が悪い。  しかしそんなとき、ふいに視界に見覚えのある顔が見えた。 (……あれは……アステオ公子?)  シエルが通う学園の、鼻持ちならないクラスメイト。普段はシエルが学園で数少ない平民であることを馬鹿にしてくるやつだが、何だか今日は様子がおかしい。 (………具合が、悪いのか?)  見かねて手を貸したシエル。すると翌日から、その大貴族がなにかと付きまとってくるようになってーー。 魔法の得意な平民×ツンデレ貴族 ※同名義でムーンライトノベルズ様でも後追い更新をしています。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

【完結】泡の消えゆく、その先に。〜人魚の恋のはなし〜

N2O
BL
人間×人魚の、恋の話。 表紙絵 ⇨ 元素🪦 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定です ※◎は視点が変わります(俯瞰、攻め視点etc)

処理中です...