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本編 1章

1.

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分かってるんだ。
先輩は優しい人だけど、今までの人と変わらないって。




「・・・・・・悠仁ユウト。ごめん、、別れて」
「・・・・・・・・・・・・・・・だから言ったじゃないですか・・・」
「え・・・?」
「・・・・・・・いいえ、何でもないです。分かりました」
「・・・・・・・・・ほんと、、ごめん、俺――」
「じゃ、僕は帰ります。失礼しますね」
「は、、あ、あぁ・・・・・・気をつけて」


ほら・・・・・・。

あーあ、これで七回目。
















先輩と付き合いだしたのは今年の四月。
高校二年になって、前の恋人と別れたことが広まってからすぐに先輩の方から呼び出されて告白された。

僕はその先輩のこと知らなかったけど。


まぁ、いつからか付き合ってから好きになればいいと思うようになってたし、恋人もいないし、それで付き合おうと思ったんだ・・・。
それに、あれだけしつこく言われたら断れないよ・・・。

あ。
でもちゃんと僕なんて止めた方がいいですよ?後悔しますよ?って言ったんだけどね・・・・・・。
僕も傷つくの嫌だし。


だから誓約付きで、
1.『好き』なんて言わないこと
2.僕を女の子と同じように扱わないこと
3.別れるときは短的に告げること
をお願いした。

・・・・・・変かな?
でも先輩はすぐにOKしたよ?
まぁ、普通の人からしたらそんなことを言われて引く人がほとんどかなって思ったからなのに、なのになんでかみんな「それでもいいから」って言って結局付き合って別れる。

付き合ってもみんながみんな二週間も続かない。
・・・・・・みんな、、変わんないよ。







「また別れた?」
「ん、伽南カナン・・・・・・?うん」

わしゃわしゃわしゃわしゃ。
伽南が僕の頭を撫でる。・・・そんな高速に撫でられるとただでさえ寝癖の直らない髪がもっとぐしゃぐしゃになる。

「はぁ、、災難だったなぁ」
「うん?」
「いいや、なんでも。で?俺と付き合う気になったか?」
「?」
「うっ、、そんな顔されると何も言えねー」
「そんな顔ってどんな顔なの・・・僕、そんな目つき悪い?」
「は?違うわ!可愛いわ!・・・・・・ほんとお前好き」
「ふふ。今ので伽南はダメ」
「うっ、、、好きって言うのがダメなんて――辛すぎる」

わしゃわしゃわしゃわしゃ。

「・・・・・・やめてよ。僕、それ嫌だよ」
「あ?俺じゃないけど――っ、お前!!」
「ユウ先輩、、今日も可愛いですね・・・///」
「黙れ、この腹黒ストーカー後輩。俺のユウトに触らないでくれないかな?ユウトが穢れる」
「あ、桐谷先輩居たんですね。俺の視界にはユウ先輩しか居ませんでした。俺の視界が穢れます。消えてください」
「ユウトー!!後輩が虐めるー!!」
「ほんとに仲良いよなぁ二人とも」
「「違うわ!!(違います!!)」」

何が違うのかは分からないけど、まぁいいか。

イク。おはよ」
「はい!!おはようございます!」
「何か用事?」
「はい!!先輩に朝のご挨拶を。校門でお見掛けしたんですけど、風紀に捕まっちゃって・・・・・・」
「また、危険物の持ちこみか?ははっ」
「違いますー。桐谷先輩は俺イコール危険物とでも思ってるんですか?消えてください」
「ユウト~!!」
「よしよし」
「ユウ先輩、、俺にもー!!」
「はいはい、これでいい?」
「ユウトー、俺の方が短い。もっと」
「んー」
「先輩っ!俺も俺も!!」
「ん、、もういい?」

少し腕が疲れてきた。
二人とも、頭を近づけてくれるのはいいけどやっぱり背が高いし腕を伸ばさないと撫でられないんだよ・・・。
僕の懐いてくれるのは嬉しいけど。

「おい、イクはそろそろ自分の教室に戻れよ」
「いえ、始業までまだ5分あるので」
「んー?でも郁の教室は2階でしょ?僕も戻った方が良いと思うんだけどな」
「ユウ先輩・・・・・・そんなに俺のこと心配してくれるんですね!!大丈夫です!!俺の教室、この下なんで」

んー、郁はそう言うけど・・・ほんとに大丈夫?
僕はとりあえず1限の授業の魔学の教科書を取り出した。あれ?今日って小テストあったっけ・・・・・・?

「ごめん、、郁・・・・・・僕、勉強したいからかまってあげられないんだけど・・・・・・」
「」
「」

二人とも急に黙りこんでしまった。
あれ?今日はテスト無いのかな?それとも次の授業って魔学じゃないのかな・・・・・・?

「二人とも?」
「俺、、、戻ります。すみません、、、、、」
「おー、、お疲れー・・・・・・。俺、ちょっとトイレー・・・・・・」
「あ、俺も途中まで一緒します、、、」
「え・・・・・・?二人とも?もう授業始まるよ?」

二人は僕の声が聞こえてないのかフラフラとドアを開けて出ていってしまった。入れ替わりに魔学の先生の声。
・・・・・・大丈夫、、かな?















「おい、何でてめぇまでトイレ来てんだよ!
2階のトイレ行け」
「そこまで萌えが持ちません。階段のとこで爆発したらどうします?俺、ユウ先輩にあんなことやこんなことしたいー!!って叫びますよ?そしたらそれ聞いた人みんな聞きますし、想像するでしょうね。良いんですか?」
「マジやめろ!!色んな意味でやめろ!!」
「ハァハァハァ、、、それにしてもほんと可愛かったですよねー、、辛いですよ・・・あれで無自覚なのは」
「チッ、、仕方ねーけど同感だ。あれは酷い・・・・・・」
「ユウ先輩が教科書を、、両手で、顔の前で、、口許隠して、、、上目づかいとか、、、、殺人級ですよ・・・・・・」
「それな、、しかもうっすら赤くなってるし、目は潤んでるし・・・・・・。あいつ自覚ねーから尚悪いわ」

















伽南がトイレに行ってしまって、僕が先生に言うことになっちゃったよ・・・・・・。手をあげるとか目立つし嫌なんだけどなぁ。

「えーと、、今日はーお休みは・・・・・・」
「あ、あのっ!か、、伽南は、桐谷君はトイレです・・・」
「そうですか。ありがとう、牧野君。
では、桐谷君が戻ってくるまで小テストの勉強の時間にしましょう。皆さん、苦手なところを確認しておきましょうね」

あ、、
伽南のおかげで少し勉強時間ができた・・・・・・。
ここは感謝するところかな?









僕は牧野 悠仁。17歳。高校二年。
身長は163センチ。小柄で、伽南や郁と比べても頭一つ分くらいの身長差がある。・・・こんぷれっくす。

それはともかく。
ここは男子校で男子しかいない。
だから、さっき話してた僕が別れた先輩って言うのも男。小柄な僕はとてもモテる。らしい。伽南がくれぐれも気を付けるようにって初めて会った瞬間の第一声がそれだった。
男に気を付けろはないと思ってたんだけどね。

それからまぁ、何度か告白された。
断るのも悪いと思って付き合ってから好きになればいいと思ってた。けど・・・・・・。



最初に付き合った人。三年の・・・先輩だった。
その人は優しくて、笑顔で、格好良くて――。
僕も好きになりかけてた。でも・・・・・・・・・・・・。

その前にフラれた。
あんなに好きだって、、あんなに僕に言ってくれてたのに。フラれた。別れる、って言われて。

それが、、。
そのときのことがトラウマになっちゃって・・・・・・。
僕は条件をつけることにした。
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