ある日隣の変態と結婚することになりまして

紡月しおん

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2章

5.凪さん

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凪さんは現在自室に引きこもっているらしい。
以前、佐紀さんから聞いた話だ。
23歳の時に結婚して(僕も結婚に行くはずだった。でも宮代家側の法事と被っちゃって行かなかったけど)去年離婚して今は独身。
精神的な色々あって次期社長としての自信を失い、部屋に引きこもっている。

――そんな凪さんを僕に助けて欲しい。
――凪さんのことも考えて欲しい。
――出来れば支えてあげて欲しい。

僕は母さんや佐紀さんにお願いされた。
僕なりに頑張ってみるつもりはある。事情を聞かされたからには放っておけない。


とにかくまずは始めの一歩。
沖江家は三階建てプラス地下室がある。(エレベーター付きだ)
一階が家族の共有スペース。キッチン、風呂、トイレ、リビング、ダイニング、応接間、等々で
二階は佐紀さんと鳴海さんの部屋や書斎、小さめな(と言っても一般家庭にはない)図書室がある。
そして、三階が凪さんと巳波さんと海渡の部屋があり二部屋ほど余っていた。恐らく僕はこのどちらかに泊まらせて貰うんだろう。
地下室は・・・・・・何に使っているのかは分からない。




トントンっ

「凪さん、おはようございます」

10時32分の今はおはようございますだと思ってノックした凪さんの部屋に声をかける。

「・・・・・・・・・・・・」

室内からはパソコンをカタカタと鳴らしている音は聞こえるのに凪さんの声はしなかった。

「凪さんっ。僕、瑠衣です!!・・・えっと今日からお世話になります。また、お昼に来ますね!」
「・・・・・・・・・・・・」

やはり声は聞こえなかった。
無視されるってやっぱり悲しいなぁ・・・。でも今はパソコンに真剣なのかも知れないし、邪魔するのは申し訳ないよね・・・。
そう思って三階を後にした。






一階のリビングに戻ると海渡がソファに倒れこんでいた。

「え、海渡!?ちょっ、え、大丈夫!?」
「う、う~ん・・・大丈夫~。へへっ食べ過ぎちゃった・・・」

見るとお皿に入っていた計12個のおにぎりは10個減っていた。

「何で・・・バカっ。ちょっと待ってろ」

いくら小さいからと言って女子には普通くらいの大きさだよ!?それを6個くらいなら食べれるかと思ったのにそんなに食べるなんて・・・。
僕は胃薬を探しにキッチンへ走った。

やはり他人の家だとどこに薬があるのか見つけづらいなぁ。手に薬と水の入ったコップを持ってリビングに向かった。



「兄さん!!それ、俺のだって!!」
「はぁ?おにぎりの1個や2個別に良いだろ?」
「1個や2個、って――俺にとっては貴重なものなんだよ!!それにどうせ彼女の家で食べてきただろ!」
「生憎、俺の彼女。料理出来ないんだよねぇ・・・まぁ、彼女と言っても遊びだけど」

何やら騒がしいと思ったら巳波さんが帰ってきたらしい。話を聞いていると残りのおにぎりをめぐってケンカしているようだった。

「海渡!!・・・おはようございます巳波さん。今日から一週間お世話になります」

とりあえず、今にも巳波さんに噛みつく勢いの海渡を制して凪さんに挨拶した。

「瑠衣・・・・・・?」
「はい。お久しぶりです」

・・・巳波さん・・・・・・?
目を瞬かせている巳波さん。久しぶりにあったから僕の顔忘れちゃったのかな?
巳波さんは幼い頃に遊んでもらった時より、やはりと言うかなんと言うかイケメンになってた。海渡がふんわりした茶髪でタレ目に対し、巳波さんは茶に黒が混じっている髪をワックスで固め前髪をあげている。目もとはキリッとしていて海渡の外見が優しそうなら巳波さんはいかにもな遊び人と言う感じがした。


「・・・・・・へぇ。・・・ふ~ん、そっか」

巳波さんはニヤニヤして僕と海渡を見比べる。

「なるほどなぁ・・・・・・。このおにぎりは瑠衣が作ったのか?」
「え?あ、はい。・・・お口に合いませんでしたか?」
「いや?美味かった。今まで食べた料理の中で一、二を争うくらい」
「だよね!!瑠衣ちゃんの手料理が不味いなんて言ったら兄さんでも海に沈めるから」

海渡がなにやら不吉なことを言ったがそれは無視して、巳波さんは朝食を食べていなかったらしくお腹が空いたからと部屋に軽食を持ってきて欲しいと言った。(終始ニヤニヤしていた)
そのまま巳波さんはシャワーを浴びに浴室へ向かった。

「海渡、薬」
「ありがと。瑠衣ちゃん~」

ふざけるなっ!!
バシンッ

腰に抱きついてきた海渡に平手を繰り出すと、僕はキッチンに逃げ込んだ。
再びソファに沈んだ海渡は置いといて巳波さんにお願いされた軽食の用意を始めた。・・・サンドウィッチで良いかな?
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