ある日隣の変態と結婚することになりまして

紡月しおん

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2章

3.準備

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「瑠衣ちゃん」
「・・・母さん・・・・・・?それなに・・・」
「ん?だってお泊まりするんだから、ちゃんと準備していきなさい~」

母さんは僕の目の前にボストンバッグをドサッと投げ置いた。・・・このボストンバッグ、小5以来使ってなかったヤツ・・・。

「こんな大きなバッグはいいって・・・」
「なんで?」
「だって、とりあえず2日分ずつ持ってくから」
「えぇ!!?」

なぜか、驚かれた。
母さんが目をパチパチしている。
いやだって隣同士なんだよ?着替えとか必要なものはユニ○ロとかし○むらとかで一々買う意味ないし、歯磨き粉もコンビニとか行って買うなんてことしないでしょ?

すると母さんはワナワナと震えだした。

「・・・・・・瑠衣ちゃん、お泊まりの一週間はお家に帰ってきちゃダメよ」

は?

「そんな暇あるなら、海渡君か凪君か巳波君とイチャイチャして・・・・・・ごほんっ、海渡君たちのことについて真剣に考えなさい?海渡君は本気で瑠衣ちゃんのことを好いてくれてるし、凪君だっておおらかで優しくて良い子じゃない~、巳波君だって昔から瑠衣ちゃんと遊んでくれてたじゃない!?もしかしたら、ね?」

母さんが慌てて言い繕った。
聞こえてたからね。母さん?

「と、とにかくっ!!お泊まり中は帰宅は許しません!近況報告なら許可します」


母さんが腕を組んだ。
こうなった母さんは何を言っても聞いてはくれない。普段おおらかな母さんの唯一の欠点だ。
でも、

「・・・・・・分かったよ。確かに母さんの言う通りかもしれないし」

海渡とのこと・・・・・・真剣に考える良い機会かもしれない。僕の海渡に感じるこの気持ちが友情でない好きなら・・・・・・。

「そうと決まれば、瑠衣ちゃん!お買い物行くわよ!!」

は・・・い?









僕は母さんに引きずられるようにして帆山ショッピングモールに連れていかれた。
帆山ショッピングモールはたくさんの人で賑わっていた。4階あるが3階の洋服店売り場へと向かった。

「さぁ、瑠衣ちゃん!!いざ出陣よ~」
「・・・母さん?ここ・・・・・・」

そこはピンクでギラギラな恐らく女子高生とかしか入らなそうな(いや、女子高生も入るか分からない)ショップだった。

「ふふっ♪お母さん、ここのショップのオーナーさんとお友達でぇ~なかなか売り上げが伸びないって言うから瑠衣ちゃんに宣伝モデルやって貰おうかな~って。引き続きモデルやってくれたら無料でその服をくれるって言われてね~」

モデル・・・だと・・・・・・?
母さんは両頬に手を当ててくねくねしてる。

「最新のトレンド服とかっ、ちょっとお高めなブランドの服とかっ、ちょーっと綺麗な服着てお写真撮るだけでタダなのよ!?タダ!!」
「母さん、服ならたくさん持ってるから帰ろ」

僕は即答した。
だって僕みたいな平凡もしくはブスがモデルをやったところで意味ないし、それにこの店にはどう見ても女子高生の服しかないよね?
 
「お願いよ~瑠衣ちゃん~!!ママの“この世で”最後のお願い~。親孝行だと思って~」

やけに『この世で』を強調して言う。

「うっうっ・・・最近、家計が厳しくてね・・・。出来れば、雫や静にもモデルをやってもらおうかとも思ったのよ・・・・・・シクシクシク・・・
「母さん!!僕がやるよ!!」

あんな可愛い子たちを世間に晒すなんてッ!!そんなことになるなら僕が代わりに・・・っ。
僕は即答した。

そのとき母さんがガッツポーズをしていたことを僕は知らない。










「あー、なかなかの収穫じゃない~?」
「・・・うん、ソウダネ」

僕と母さんは両手に抱えきれないほどの紙袋を持っている。これ全部、サンプルだって。
まぁ、そんなことはどうでもいいよ?
でも・・・・・・。

「瑠衣ちゃんすごく似合ってたじゃない~!!」

解せない!!それはほんとに解せない!!
だって、スカート着ても変じゃなくて。女子が着て可愛いパンツでもボーイッシュな女子に見えると誉められた。

「でも、男子でも着れる服も貰えたんだし・・・結果的に良かったんじゃない?あ、帰りにクレープ食べて帰りましょ~」

母さんはホクホク顔でそう言った。

「いや、家計がキツいなら帰ろ」
「は?・・・あー、大丈夫よ。だって母さんの臨時収入で全然まかなえるから♪てっちゃんも頑張ってくれてるしぃ~。瑠衣ちゃんはチョコバナナクレープで良いかしら?あたしはいちご~♪」

は・・・い?つまり僕は嵌められた?
騙されたってこと?

「母さん!!」




まぁ、でも新しい服も貰えたんだしいいか。男のプライドは砕かれても以外と好きな服もあったし(もちろん男女兼用のやつ)女子が着るようなのは妹たちにあげればいいし。

僕はクレープを頬張った。
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