ある日隣の変態と結婚することになりまして

紡月しおん

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2章

2.そう言う訳で

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「と、まぁこんなことがあって」
「・・・・・・瑠衣ちゃんの手料理・・・」
「ん?うん・・・その、お世話になる間は僕が家事とかやるから・・・。いやだった?」

途端に首を振る海渡。
・・・首がもげないか心配になるよ・・・。

「いや、嫌な訳ないじゃん!!瑠衣ちゃんの手料理だよ!?死んでも食べたいくらいなのに!!」
「え、死んでもって・・・僕は嫌だからね?海渡が死ぬなんて・・・そんなことになるなら作らない」

せっかく仲直りしたのにそれが無駄になるっ!!
僕の恥辱が無駄になるじゃないか!!

「・・・・・・瑠衣ちゃん。大丈夫、俺は死なないよ!!だって、瑠衣ちゃん・・・君を愛してるからぁっ!!」
「茶番劇はそれくらいにして――。好き嫌いあったっけ?あと凪さんと巳波さんも」

海渡は分かりやすく項垂れたあと、ポカーンとした表情で首を傾げた。
・・・犬っころまんまだけどな。

「なんで・・・兄貴たちも・・・・・・?」
「佐紀さんに頼まれたから。それにお世話になるんだから海渡の分だけ用意するなんて出来ないでしょ」
「・・・う、そっか。分かったよ」

今度は眉が八の字に下がってる・・・。
・・・・・・なんか・・・可愛く見える。後で眼科行こ。

「海渡?僕には海渡が犬にしか見えなくなってきたんだけど・・・」
「・・・え?・・・そっか、やっぱり抜けないもんだね・・・。
俺さ、瑠衣ちゃんに甘えたくてさ・・・。子供の頃からどうすれば瑠衣ちゃんは許してくれるんだろう?どうすれば瑠衣ちゃんは俺だけを見てくれるんだろ・・・ってずっと考えた挙げ句に――。子供の頃はさ俺の方が背、低かったから・・・まずは弟みたいな感じになれないかなって・・・思って。だから『こっち見てこっち見て!!』って無意識にアピールしてたんだと思う。多分それ。
仲直りのとき・・・言ったでしょ?犬を被らないように、って・・・。猫を被るじゃないけどさ、俺は瑠衣ちゃんの前ではほんとの自分でいたいなぁって・・・えへへ」

海渡ははにかんで笑った。その笑顔はとてもかっこよく見えた。・・・一瞬、ドキッとしたよ。やっぱり顔はイケメンだよね・・・。内容もカッコ可愛い感じで・・・なんかきゅんとした。
いやいやいや!!何思ってるんだ、僕!?

「・・・海渡・・・・・・あり・・・がとう・・・?」

僕はつい恥ずかしくなって目を背けてしまった。けど、これだけは伝えたくなった。

――好きになってくれてありがとう。

――教えてくれてありがとう。

――伝えてくれてありがとう。

とにかく言いたくて堪らなくなった。
海渡の真剣な表情とか、照れてはにかんだ顔とか、ずっと慕ってくれていたこととか。

僕は海渡が好きなのかもしれない。
まだ“たぶん”だけど・・・。今は“確かに”な気分だ。

「その・・・・・・言いたく・・・なった・・・から
「っ!!~~~!!瑠衣ちゃん!!」




ちゅっ


海渡の顔が離れていった。



「こちらこそありがとう!瑠衣ちゃ
「ふざけんな変態!!」

バチっ!!

前言撤回だ!!少し気を許しただけで手を出してくるなんて・・・!ただの変態だ!!












「瑠衣ちゃ~ん。ごめん~!!許して~」
「・・・・・・」
「だって、瑠衣ちゃん可愛かったんだもーん」
「・・・・・」
「あれは俺を煽った瑠衣も悪いでしょー」
「・・・・・」

現在、放課後。下校途中。
僕は開き直ってうざくなった海渡を無視している。それでもめげずに話しかけてくる海渡。
・・・確かに無意識に煽っていたのかもしれない。
でも、それとこれとは別。自制心を鍛えろと言うだけの話だし、煽った僕が悪いなんてそれこそただの被害妄想だ。

「あ、瑠衣ちゃん!!コンビニ寄るでしょ?」

僕は無言で頷く。
当たり前だ!!可愛い妹たちが家で待っているんだから!!もちろんフラッペだから一番家に近いコンビニに寄る。

急に海渡が静かになった。
もうそろそろかな・・・?



「・・・瑠衣ちゃん・・・。ごめん・・なさい・・・もうしないから・・・。お願い、せっかくのデートなのに」

よし、

「・・・言質は録ったぞ」
「え、、」

そう、僕は待っていた。
海渡が『もうしない』と言うのを。
それを録音機で録った。これは海渡から誕生日祝いに貰ったものだからね?

「さっ、デートしにコンビニへ行こう!!」

目的のコンビニまではあと300mほどだけどデートはデート。別に構わないよねー。
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