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1章
18.・・・
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・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
何も感じない。
分からない・・・。怖い・・・。
いっそ・・・ここから消えて・・・。
がちゃ
玄関のドアが開いた音がした。
「はぁ・・・やっぱり海渡君帰っちゃったかー。下に誰も居ないんだからもし、空巣みたいのきたら怖いわー」
「いや、電気ついてないし空巣が入って一番ヤバイのは兄さんでしょ!?あっ、そしたらかい兄さん飛んでくんじゃない?」
静と母さん、あと雫が何やら言いながらリビングに入っていったのが分かった。
静の『かい兄さん飛んでくんじゃない?』と言う言葉ははっきりと聞こえた。
今までだったらそうかもしれないけど、もう・・・。そんなことは絶対にあり得なくなってしまった。思えば思うほど痛い、苦しい・・・空気が吸えないそんな感覚。
トンッ トンッ トンッ
誰かが階段を上がってきた音。
先程・・・いや、かなり前の出来事を思い出す。
自然と体が硬直し始める。
足音は僕の部屋の前で止り、代わりにノックする音が2回聞こえた。
「お兄ぃ?晩ご飯やよって・・・入ってええ?」
「っ・・・今日はお腹すいてないから要らないって母さんに言って」
ほんとはこんな目で妹たちの前に居たくないから。雫のことだから、自分も泣いてしまうのではないか。静のことだから、悔しそうな泣きそうな顔で抱きついてくるのでは――。
そう思った。
「あーい・・・でもあんまし食べんと体、壊すよってー。あ、あとで軽食運ぶ」
と、言い残して雫は階下に降りていった。
・・・寝たふりで誤魔化せるかな?
そう考えながら、僕はベッドに腰かけた。
ーーーーーーーーーーーー
「雫・・・やっぱ、ダメだった?」
静が瑠衣に声をかけてきた雫に不安げに聞いた。
「・・・うん。お兄、夕飯いらんって・・・声・・・泣いてたよ。それに震えてた・・・まだ・・・っ」
「あー、あっ・・・と雫、良いじゃん。兄さんが要らないってんならほっといてあたしたちだけで食べようぜっ・・・ほらっ雫の好きな福田の珈琲ゼリー!期間限定のやつっ!・・・なっ?」
静は双子の妹と言えど、姉である雫をフォローしている。・・・これが男の双子だったらさらに萌えたと思ってしまった私は母親失格かもしれない。
「まぁまぁ、これからよ。・・・いくら瑠衣ちゃんでも明日は顔を出すわよ。いつまでもこのまま沈んでばかりじゃないわ」
「な!雫は心配し過ぎ。兄さんだって男なんだからさっ、それにあたしらの兄さんじゃん」
「・・・そうだね・・・。うん、明日お兄が元に戻ったら普通にしてあげなきゃっ!ごめんね?静・・・お姉ちゃんなのに・・・」
「ん、ははっ。だって雫っておっとりしてっから妹とか関係なく世話焼いちゃうんだよな~」
「えっ、ごめん?・・・て言うかおっとりって何!」
つくづく惜しいと思ってしまった私は母親失格かもしれない。
「あ、お兄にあとで軽食持ってぐって言っちゃったから・・・雫が作っていい?」
雫は控えめにそう言った。
恐らく、雫なりの瑠衣への心配。
「いいわよ。あ、でも火を使うなら気を付けなさいね」
「うん!!分かった・・・静、手伝ってくれる?」
「いいよ~」
「じゃあ、夕飯食べちゃいましょうか」
「「は~い!」」
二人は元気に返事をした。
その一方、私はかなり焦っていた。
瑠衣ちゃんが今までこうなってしまったことは私の記憶にはない。娘たちは知っていたみたいだけど・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
何も感じない。
分からない・・・。怖い・・・。
いっそ・・・ここから消えて・・・。
がちゃ
玄関のドアが開いた音がした。
「はぁ・・・やっぱり海渡君帰っちゃったかー。下に誰も居ないんだからもし、空巣みたいのきたら怖いわー」
「いや、電気ついてないし空巣が入って一番ヤバイのは兄さんでしょ!?あっ、そしたらかい兄さん飛んでくんじゃない?」
静と母さん、あと雫が何やら言いながらリビングに入っていったのが分かった。
静の『かい兄さん飛んでくんじゃない?』と言う言葉ははっきりと聞こえた。
今までだったらそうかもしれないけど、もう・・・。そんなことは絶対にあり得なくなってしまった。思えば思うほど痛い、苦しい・・・空気が吸えないそんな感覚。
トンッ トンッ トンッ
誰かが階段を上がってきた音。
先程・・・いや、かなり前の出来事を思い出す。
自然と体が硬直し始める。
足音は僕の部屋の前で止り、代わりにノックする音が2回聞こえた。
「お兄ぃ?晩ご飯やよって・・・入ってええ?」
「っ・・・今日はお腹すいてないから要らないって母さんに言って」
ほんとはこんな目で妹たちの前に居たくないから。雫のことだから、自分も泣いてしまうのではないか。静のことだから、悔しそうな泣きそうな顔で抱きついてくるのでは――。
そう思った。
「あーい・・・でもあんまし食べんと体、壊すよってー。あ、あとで軽食運ぶ」
と、言い残して雫は階下に降りていった。
・・・寝たふりで誤魔化せるかな?
そう考えながら、僕はベッドに腰かけた。
ーーーーーーーーーーーー
「雫・・・やっぱ、ダメだった?」
静が瑠衣に声をかけてきた雫に不安げに聞いた。
「・・・うん。お兄、夕飯いらんって・・・声・・・泣いてたよ。それに震えてた・・・まだ・・・っ」
「あー、あっ・・・と雫、良いじゃん。兄さんが要らないってんならほっといてあたしたちだけで食べようぜっ・・・ほらっ雫の好きな福田の珈琲ゼリー!期間限定のやつっ!・・・なっ?」
静は双子の妹と言えど、姉である雫をフォローしている。・・・これが男の双子だったらさらに萌えたと思ってしまった私は母親失格かもしれない。
「まぁまぁ、これからよ。・・・いくら瑠衣ちゃんでも明日は顔を出すわよ。いつまでもこのまま沈んでばかりじゃないわ」
「な!雫は心配し過ぎ。兄さんだって男なんだからさっ、それにあたしらの兄さんじゃん」
「・・・そうだね・・・。うん、明日お兄が元に戻ったら普通にしてあげなきゃっ!ごめんね?静・・・お姉ちゃんなのに・・・」
「ん、ははっ。だって雫っておっとりしてっから妹とか関係なく世話焼いちゃうんだよな~」
「えっ、ごめん?・・・て言うかおっとりって何!」
つくづく惜しいと思ってしまった私は母親失格かもしれない。
「あ、お兄にあとで軽食持ってぐって言っちゃったから・・・雫が作っていい?」
雫は控えめにそう言った。
恐らく、雫なりの瑠衣への心配。
「いいわよ。あ、でも火を使うなら気を付けなさいね」
「うん!!分かった・・・静、手伝ってくれる?」
「いいよ~」
「じゃあ、夕飯食べちゃいましょうか」
「「は~い!」」
二人は元気に返事をした。
その一方、私はかなり焦っていた。
瑠衣ちゃんが今までこうなってしまったことは私の記憶にはない。娘たちは知っていたみたいだけど・・・。
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