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1章
13.ギューの正体
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「ごめんね・・・瑠衣ったら。海渡君、気を悪くしないでね・・・」
「いえ、大丈夫です。・・・それじゃ、失礼します」
そんな声が玄関の辺りから聞こえてきた。
海渡のプレゼンを途中で終わりにしてしまい、自室に籠った僕をさすがの母さんも怒っているらしい。
海渡の寂しそうな声と母さんの無機質な声はドアの側にうずくまった僕にも聞こえた。
ガチャンと玄関の扉が閉まる音がした。
数分後、誰かが階段を上がって僕の部屋のドアの前に来た。
足音から母さんだろうなと思った。
「・・・瑠衣ちゃん。入るよ」
「っ!!・・・海渡?」
海渡の声がした。
母さんだと思っていた足音は海渡だった。
鍵をかけていなかったため、ドアは簡単に開いた。
母さんだと思って油断していた。
なんでっ?
海渡は帰ったはずじゃ!?
混乱している僕はドアの前から動くことしか出来ず、海渡が部屋に入ってくると言う危機的状況に対処できなかった。
そっと開いたドアから静かに入ってきた海渡はドアを閉めて、鍵をかけた。
ようやく事の重大さを理解した僕は海渡と距離をとった。
「・・・帰れって言ったじゃん」
「うん」
「母さんじゃなかったんだな・・・」
「お義母さんと妹さん達はちょっと外出中」
は?・・・はぁ!?
「驚いたって顔してる。俺が帰ったって思って安心した?・・・お義母さんが話し合った方がいいねって言ってくれたんだ。だから、帰ったふりして代わりにお義母さん達が外出したんだよ」
海渡は怒っているようだった。
イライラに近いそんな感じ。僕は何故だか、海渡を怖いと感じた。
「・・・なんで最後まで聞いてくれなかったの?」
今度は寂しそうに、悲しそうに言う。
また胸の奥がギューってなる感じがした。
「俺は瑠衣ちゃんがこんなに好きなのに!!・・・分かってほしくて、瑠衣ちゃんに嫌われたくなくて、離れないでほしくて・・・」
っ・・・また、こんなのっ!!
「さっきのプレゼンね。まずメリットとしては収入、家庭の幸福、できる範囲瑠衣ちゃんをサポートする、大きくまとめるとこれ。・・・で、デメリットとしては、逆に瑠衣ちゃんに迷惑をかけると思う。俺は副社長に就任するから帰宅は遅くなるかも・・・あと、瑠衣ちゃんが寂しいときに一緒にいられないかもしれない・・・これが一番辛いけどあり得ること。外はとっても快適、でも内面・・・心の問題。瑠衣ちゃんを傷つけるくらいなら・・・俺は瑠衣ちゃんの幸福を優先するよ。でも、分かってるのに離れらんない、離したくない――。・・・・・・ごめんね・・・くだらない独占欲ってことは分かってる。言いたかったのはこれが全部・・・ごめんね」
海渡は謝った。
これだけ熱い気持ちで僕に語りかけていたのに。
「今日はもう、帰るね・・・さよなら」
海渡はドアの鍵を解錠し出ていこうとした。
「待ってっ!!」
僕は海渡の服の袖を掴んだ。
――体が勝手に動いて、海渡を引き留めた。
「瑠衣ちゃん・・・袖、伸びちゃうから」
「っ!!・・・待って、ごめん!!話、聞かなくてっ」
「大丈夫だよ。・・・もう行くからさ、放して」
いつもと違う海渡の冷たい声。
心の底から冷え込んでくる・・・こんな冷気。
僕は気づけば『放して』いた。
目の前に海渡はもういなかった。
どれほど、放したまま、突っ立ったまんまで居たのか。
痛い・・・。
妹達に言われた言葉よりも痛かった。
こんなの初めての感情で何もかも分かんなくなる。
『恋って言うのはね、胸がギューって締め付けられたり、痛く感じたり、するんだって』
海渡が前にこんなことを言っていたのを思い出した。
「僕は・・・海渡のことをまだ好きなの・・・?」
分からない。
でも、海渡に冷たくあしらわれて感覚が麻痺するように重力を感じられないようになったのに胸は痛くて痛くてたまらなくなった。
僕は静かに座り込んだ。
頭を抱えて、部屋の真ん中で座り込んだ姿は昨日の僕が見れば滑稽に思うだろう。
・・・今頃、気づくなんて・・・。
ーーーーーーーーーーーー
瑠衣ちゃんに嫌われた。
もう二度と俺の思いを伝えられない・・・。
そう思ったら口が勝手に動いてた。
――瑠衣ちゃんとお話しさせてください。
お義母さんは一度目をぱちくりさせていたがそんな俺に耳打ちした。
――話し合った方がいいね。一度帰ったふりをしなさい。口をあわせて。
俺は頷いた。
「いえ、大丈夫です。・・・それじゃ、失礼します」
そんな声が玄関の辺りから聞こえてきた。
海渡のプレゼンを途中で終わりにしてしまい、自室に籠った僕をさすがの母さんも怒っているらしい。
海渡の寂しそうな声と母さんの無機質な声はドアの側にうずくまった僕にも聞こえた。
ガチャンと玄関の扉が閉まる音がした。
数分後、誰かが階段を上がって僕の部屋のドアの前に来た。
足音から母さんだろうなと思った。
「・・・瑠衣ちゃん。入るよ」
「っ!!・・・海渡?」
海渡の声がした。
母さんだと思っていた足音は海渡だった。
鍵をかけていなかったため、ドアは簡単に開いた。
母さんだと思って油断していた。
なんでっ?
海渡は帰ったはずじゃ!?
混乱している僕はドアの前から動くことしか出来ず、海渡が部屋に入ってくると言う危機的状況に対処できなかった。
そっと開いたドアから静かに入ってきた海渡はドアを閉めて、鍵をかけた。
ようやく事の重大さを理解した僕は海渡と距離をとった。
「・・・帰れって言ったじゃん」
「うん」
「母さんじゃなかったんだな・・・」
「お義母さんと妹さん達はちょっと外出中」
は?・・・はぁ!?
「驚いたって顔してる。俺が帰ったって思って安心した?・・・お義母さんが話し合った方がいいねって言ってくれたんだ。だから、帰ったふりして代わりにお義母さん達が外出したんだよ」
海渡は怒っているようだった。
イライラに近いそんな感じ。僕は何故だか、海渡を怖いと感じた。
「・・・なんで最後まで聞いてくれなかったの?」
今度は寂しそうに、悲しそうに言う。
また胸の奥がギューってなる感じがした。
「俺は瑠衣ちゃんがこんなに好きなのに!!・・・分かってほしくて、瑠衣ちゃんに嫌われたくなくて、離れないでほしくて・・・」
っ・・・また、こんなのっ!!
「さっきのプレゼンね。まずメリットとしては収入、家庭の幸福、できる範囲瑠衣ちゃんをサポートする、大きくまとめるとこれ。・・・で、デメリットとしては、逆に瑠衣ちゃんに迷惑をかけると思う。俺は副社長に就任するから帰宅は遅くなるかも・・・あと、瑠衣ちゃんが寂しいときに一緒にいられないかもしれない・・・これが一番辛いけどあり得ること。外はとっても快適、でも内面・・・心の問題。瑠衣ちゃんを傷つけるくらいなら・・・俺は瑠衣ちゃんの幸福を優先するよ。でも、分かってるのに離れらんない、離したくない――。・・・・・・ごめんね・・・くだらない独占欲ってことは分かってる。言いたかったのはこれが全部・・・ごめんね」
海渡は謝った。
これだけ熱い気持ちで僕に語りかけていたのに。
「今日はもう、帰るね・・・さよなら」
海渡はドアの鍵を解錠し出ていこうとした。
「待ってっ!!」
僕は海渡の服の袖を掴んだ。
――体が勝手に動いて、海渡を引き留めた。
「瑠衣ちゃん・・・袖、伸びちゃうから」
「っ!!・・・待って、ごめん!!話、聞かなくてっ」
「大丈夫だよ。・・・もう行くからさ、放して」
いつもと違う海渡の冷たい声。
心の底から冷え込んでくる・・・こんな冷気。
僕は気づけば『放して』いた。
目の前に海渡はもういなかった。
どれほど、放したまま、突っ立ったまんまで居たのか。
痛い・・・。
妹達に言われた言葉よりも痛かった。
こんなの初めての感情で何もかも分かんなくなる。
『恋って言うのはね、胸がギューって締め付けられたり、痛く感じたり、するんだって』
海渡が前にこんなことを言っていたのを思い出した。
「僕は・・・海渡のことをまだ好きなの・・・?」
分からない。
でも、海渡に冷たくあしらわれて感覚が麻痺するように重力を感じられないようになったのに胸は痛くて痛くてたまらなくなった。
僕は静かに座り込んだ。
頭を抱えて、部屋の真ん中で座り込んだ姿は昨日の僕が見れば滑稽に思うだろう。
・・・今頃、気づくなんて・・・。
ーーーーーーーーーーーー
瑠衣ちゃんに嫌われた。
もう二度と俺の思いを伝えられない・・・。
そう思ったら口が勝手に動いてた。
――瑠衣ちゃんとお話しさせてください。
お義母さんは一度目をぱちくりさせていたがそんな俺に耳打ちした。
――話し合った方がいいね。一度帰ったふりをしなさい。口をあわせて。
俺は頷いた。
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