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1章
10.『ごめんなさい』
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我が子ながら求愛の仕方がかなり危ないと感じたが、瑠衣ちゃんが小さな眉をへの字に曲げて一生懸命話してるのを真剣に聞いた。
「るい、かいとくんがそんなかおしてたらなんだかここがねギューってググッっていたくなったの」
瑠衣ちゃんは胸の辺りを押さえて言った。
心がギューってなった・・・か。
「それでね。かいとくんに『ごめんなさい』したの。そしたら、かいとくんのかなしいかおがねぱぁーってでもるいもむぎゅーはやめてって『おねがい』したんだっ!でね?かいとくんね。いいよって、ぼくもごめんねっていってくれたの!だからるいもねうれしくなったの!」
私は言葉を失った。
「かいとくんのおかあさんもあのときのかいとくんとおんなじかおしてるの。・・・だから
「瑠衣ちゃん~、もう帰る・・・って佐紀さんじゃない!」
瑛子さんが起きたらしく声をかけてきた。
瑠衣ちゃんはまだ何か言いたいらしく、瑛子さんの手を握りながらこっちを見ていた。
「瑛子さん・・・お久しぶりです。瑠衣ちゃん・・・またね」
「久しぶり。佐紀さんもあまり無理しないでね。・・・ほら、瑠衣ちゃん。海渡君のお母さんにバイバイは?」
「ん、かいとくんのおかあさん!バイバイ~。それとね、かいとくんがいってたの。『ごめんなさい』はまほうなんだって」
私と瑛子さんは顔を見合わせ吹き出した。
「ふふっ、この子ったら・・・。またね、佐紀さん」
「・・・はい」
そう言って、瑛子さんと瑠衣ちゃんは歩き出した。公園を出て帰路につくんだろう。
二人で手を繋いで。
「『ごめんなさい』はまほう・・・か。でも、もうきっと鳴海さんや海渡だって私を許してくれないだろうから・・・」
私も・・・まほうが使えたらな。
そろそろ、公園を出て別の場所に行こうと立ち上がったとき。
「佐紀っ!!」
「やはり、奥さんでしたか・・・良かったですね。見つかって、それでは私はこれで」
お巡りさんをつれた鳴海さんが公園に来た。
胸の奥が痛い・・・。
怒られると思いふっと目を閉じる。
手首に不思議な感触がした。
「帰る」
鳴海さんはただひと言そう言って私の手首を強く、しかし優しくつかんで引っ張っていった。
帰るのひと言は怒りと悲しさと優しさがつまっているようだった。
家に帰るとリビングのソファに座らせられた。
私はうつ向いて、瑠衣ちゃんの言葉を思い出す。
「・・・佐紀
「「ごめんなさい!!(ごめん!!)」」
「「え・・・え?」」
鳴海さんが話始める前にと言った言葉は鳴海さんとかぶった。
それから、二人して驚いた顔で目を合わせる。
「「ふっ・・・ふふっふははははっ」」
二人同時に笑い出した。
どちらかともなく、自然に。
「・・・佐紀。俺からいいか?」
鳴海さんが優しく話し出した。
「佐紀、色々と家のことばかり任せっきりでごめん。・・・海渡から聞いた。お母さんは悪くないって、僕が悪いんだって言っていた」
海渡は私を責めていないと知り自然と涙が溢れた。そっと鳴海さんが頬を伝う涙を拭ってくれた。――余計なところでイケメンなんだから。
「で、俺も今までこと考えてみた。俺はいつも会社ばかり優先で最近は佐紀を放置し過ぎてたって・・・だから、これからは甘やかすから」
ん、んんん?
私の頭を撫でる鳴海さん。
「あっ、それと子供達に塾はもういかせなくったっていいと思うぞ。代わりに家庭教師をつければいいし、そうすれば佐紀の心配も減るんじゃないかなってね」
「っ!!鳴海さんっ」
「うん、ごめんな。今まで、佐紀にばっかり
「ううん!!私こそ『ごめんなさい』っ!!鳴海のため、子供達のためって言ってただ寂しかっただけなのっ。鳴海さんは会社、会社で家に帰ってこないことも多いし、そしたら凪まで部屋に籠るようになってしまって!!・・・もうどうしたらいいのか分からなかった・・・だから――」
口から溢れ出すほんとの思い。
私は瑠衣ちゃんに教えてもらった『お願い』をしてみようと思った。
「お願い・・・私を一人に、置いてかないで」
そう、私は毎日一人取り残されるようで寂しかった。鳴海さんは会社をどんどん大きくして、忙しくなって、凪は部屋に籠ってばかりだけど、株をやってることを知って、巳波は小学校で人気者になって、海渡は塾でトップの成績で・・・。
私には何もないって思ったから。
突然、引き寄せられる感覚。
・・・鳴海さん。
「大丈夫。俺は佐紀を一人にさせない。・・・それに、子供達はもうこんなに立派に育ったんだ。これは佐紀が頑張ってくれたからだろ?・・・・・・だから佐紀、゙これ゙はもういらないね?」
そう言って、鳴海さんは離婚届を引き裂いた。
「るい、かいとくんがそんなかおしてたらなんだかここがねギューってググッっていたくなったの」
瑠衣ちゃんは胸の辺りを押さえて言った。
心がギューってなった・・・か。
「それでね。かいとくんに『ごめんなさい』したの。そしたら、かいとくんのかなしいかおがねぱぁーってでもるいもむぎゅーはやめてって『おねがい』したんだっ!でね?かいとくんね。いいよって、ぼくもごめんねっていってくれたの!だからるいもねうれしくなったの!」
私は言葉を失った。
「かいとくんのおかあさんもあのときのかいとくんとおんなじかおしてるの。・・・だから
「瑠衣ちゃん~、もう帰る・・・って佐紀さんじゃない!」
瑛子さんが起きたらしく声をかけてきた。
瑠衣ちゃんはまだ何か言いたいらしく、瑛子さんの手を握りながらこっちを見ていた。
「瑛子さん・・・お久しぶりです。瑠衣ちゃん・・・またね」
「久しぶり。佐紀さんもあまり無理しないでね。・・・ほら、瑠衣ちゃん。海渡君のお母さんにバイバイは?」
「ん、かいとくんのおかあさん!バイバイ~。それとね、かいとくんがいってたの。『ごめんなさい』はまほうなんだって」
私と瑛子さんは顔を見合わせ吹き出した。
「ふふっ、この子ったら・・・。またね、佐紀さん」
「・・・はい」
そう言って、瑛子さんと瑠衣ちゃんは歩き出した。公園を出て帰路につくんだろう。
二人で手を繋いで。
「『ごめんなさい』はまほう・・・か。でも、もうきっと鳴海さんや海渡だって私を許してくれないだろうから・・・」
私も・・・まほうが使えたらな。
そろそろ、公園を出て別の場所に行こうと立ち上がったとき。
「佐紀っ!!」
「やはり、奥さんでしたか・・・良かったですね。見つかって、それでは私はこれで」
お巡りさんをつれた鳴海さんが公園に来た。
胸の奥が痛い・・・。
怒られると思いふっと目を閉じる。
手首に不思議な感触がした。
「帰る」
鳴海さんはただひと言そう言って私の手首を強く、しかし優しくつかんで引っ張っていった。
帰るのひと言は怒りと悲しさと優しさがつまっているようだった。
家に帰るとリビングのソファに座らせられた。
私はうつ向いて、瑠衣ちゃんの言葉を思い出す。
「・・・佐紀
「「ごめんなさい!!(ごめん!!)」」
「「え・・・え?」」
鳴海さんが話始める前にと言った言葉は鳴海さんとかぶった。
それから、二人して驚いた顔で目を合わせる。
「「ふっ・・・ふふっふははははっ」」
二人同時に笑い出した。
どちらかともなく、自然に。
「・・・佐紀。俺からいいか?」
鳴海さんが優しく話し出した。
「佐紀、色々と家のことばかり任せっきりでごめん。・・・海渡から聞いた。お母さんは悪くないって、僕が悪いんだって言っていた」
海渡は私を責めていないと知り自然と涙が溢れた。そっと鳴海さんが頬を伝う涙を拭ってくれた。――余計なところでイケメンなんだから。
「で、俺も今までこと考えてみた。俺はいつも会社ばかり優先で最近は佐紀を放置し過ぎてたって・・・だから、これからは甘やかすから」
ん、んんん?
私の頭を撫でる鳴海さん。
「あっ、それと子供達に塾はもういかせなくったっていいと思うぞ。代わりに家庭教師をつければいいし、そうすれば佐紀の心配も減るんじゃないかなってね」
「っ!!鳴海さんっ」
「うん、ごめんな。今まで、佐紀にばっかり
「ううん!!私こそ『ごめんなさい』っ!!鳴海のため、子供達のためって言ってただ寂しかっただけなのっ。鳴海さんは会社、会社で家に帰ってこないことも多いし、そしたら凪まで部屋に籠るようになってしまって!!・・・もうどうしたらいいのか分からなかった・・・だから――」
口から溢れ出すほんとの思い。
私は瑠衣ちゃんに教えてもらった『お願い』をしてみようと思った。
「お願い・・・私を一人に、置いてかないで」
そう、私は毎日一人取り残されるようで寂しかった。鳴海さんは会社をどんどん大きくして、忙しくなって、凪は部屋に籠ってばかりだけど、株をやってることを知って、巳波は小学校で人気者になって、海渡は塾でトップの成績で・・・。
私には何もないって思ったから。
突然、引き寄せられる感覚。
・・・鳴海さん。
「大丈夫。俺は佐紀を一人にさせない。・・・それに、子供達はもうこんなに立派に育ったんだ。これは佐紀が頑張ってくれたからだろ?・・・・・・だから佐紀、゙これ゙はもういらないね?」
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