ある日隣の変態と結婚することになりまして

紡月しおん

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1章

1.一般家庭

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「る~いっ!!」
「え?、わわっ!!」

登校中、後ろから僕に飛び付いてくるあいつ。

「あ~、これだこれ!!・・・癒されるなぁ」
「ちょっ、離してっ・・は、な、せっ!!」
「えーやだ」
「やだ、じゃないっ!!ちょっ、どこ触って」

あいつは僕の話も聞かないでべたべたと触ってくる。
・・・これは制裁を加えてもセクハラで正当防衛だから、大丈夫だな。被害者の僕を誰が責めようか。

バチっ!!

「痛ってー!!・・・何すんだよ」
「当然の報い」
「瑠衣ちゃん冷めてー」
「僕をちゃん付けで呼んだら殺すっていったよね?それとも、海渡はその赤くなった頬にもう一発平手が欲しい?」

そう言うと海渡は頬を抑えて首をふった。

これが僕の日常。



僕は宮代みやしろ瑠衣るい
静華桜蘭高校せいかおうらんこうこう2年生。今年で17歳になる。
身長158センチ、体重52キロと小柄で非力なため、よく変態・・に抱きつかれる。
さっきのように・・・。
容姿はそれほどかっこよくないし、ただ若干童顔なとこがコンプレックスだけど悪くはないと思う。

そして、さっきの変態・・こと沖江おきえ海渡かいと
同じく静華桜蘭高校の同級生。同じクラス。
身長は185センチ。――死ねっ!!
もちろん、背が高い=モテる。
また、大手企業の跡取り息子と言うことでこれまたモテる。
こいつとは家が隣同士なのと、父親同士が親友なのと僕の母の姉の義理の妹(つまり僕の母にとっても義理の妹)が海渡の母というのことで遠い親戚にあたる。

この世に生をうけ一番最悪なこと。
僕が物心つくころからこいつはいつも抱きつく。
幼い頃は僕の方が身長高かったのに・・・。


「可愛くないのっ・・・」
「ん、瑠衣ちゃんは可愛いじゃん?・・・ゴフッ」

ドサッ

はい、永遠にお休みなさいー。
今のは、海渡が僕の腹パンで崩れ落ちた音。

「瑠衣ぃ~(ちゃん)。なんで、毎朝俺をサンドバッグにすんの~?いや、嬉しいけどさっ」
「変態!!」

僕は走って逃げた。
あと、小声でちゃん付けしたの聞こえてんだからなっ!!





ーーーーーーーーーーーーーーー



最悪だ。
僕の人生終わった。



学校から家に帰った僕は冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに移してテレビが配置されているダイニングに向かった。
すでにテレビ前のソファは母と父、妹二人によって占領されていた。みんな揃ってテレビに注目していた。

「・・・みんな?何してんの?」

そう言って口に牛乳を含んだ。
僕の声でみんな一斉に振り向いて目を見開いている。

「何?」
「お兄・・・かい兄と結婚するん?」
「ゲホッゴホッ・・・何、どうしたん?」

僕は妹1。宮代みやしろ しずくの言葉に含んだ牛乳を吹いた。

「兄さん、汚ねぇよ。拭け」
「ああ、もちろん拭くよ拭く。・・・で、何?どういうこと?」

もう一人の妹。宮代みやしろ しずかに言われ(これ以上嫌われたくないので)雑巾で床に飛び散った牛乳を拭きながら聞いた。
すると、母が夕刊を持ってきた。

「これのことよ。・・・今日の午後1時くらいに法律が変わったって・・・同性同士の結婚が認められたのよっ!!」

は?

「そしたら、さっき電話があってね~。海渡君が瑠衣ちゃんと結婚したいって佐紀さんに話してたみたいでどうかしらって」

は?

「家みたいな一般家庭の子より、もっと良いとこのお嬢さんとか息子さんとかの方が良いんじゃない?とは言ったんだけど、佐紀さんがそれだったら昔から知ってる瑠衣ちゃんの方が安心だしって・・・そういえば、瑠衣ちゃんが小さいときに遊びに行ってから『瑠衣ちゃん可愛い』『家の子にしたい~』って言ってたし私も海渡君が義理とは言え息子になるとか自慢の息子じゃない~?やっだ~」

いや、『やっだ~』じゃないよ?ないですヨ?

「で、どうかなって」

もちろん僕は「いや、無理」と速答した。

「「「「え~~~~~っ!!」」」」

いやいやいや、え~じゃないから。
僕は毎朝毎朝、変態の被害にあってんだから結婚なんてしたら冗談じゃすまないでしょ!?
毎日毎日朝から晩までセクハラなんて・・・無理!!

「でっでもでも、海渡君良い子じゃない~!!」
「母さんは僕の子、つまり孫は見たくないの?」
「それがなぁ、同性同士でも子が作れるようになったらしいんだなぁ。なんでも、そんな薬が発明されたとかで。だから、法律も変えましょう!!って国会がなったらしい」

なんてもん発明してんだよっ!!

「しかも、それを発明したのが沖江グループの製薬開発部らしい。ハハハッやるなぁ鳴海」
「だよね~。かい兄が雫のお兄様になるんだぁ~」
「はぁ・・・かい兄さん、イケメンだもんな~」

と海渡が既に僕と結婚し、兄になると想定して惚けている妹二人。

「嫌だ!!」

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