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本編
53.蓮家に求めるもの
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『(リカ、それは“人”でも良いのか?)』
ん!?
突然頭に響く声。周りを見るとカラスと目が合った。
どうやら楼透には聞こえていないらしい。
念話?と言うやつだろうか。
『(リカは賢いな。そうだ、念話であっている)』
『(人でもいいかって·······まさか)』
『(そうだ。何かしら求めなくてはならぬのなら“人”でも構わんだろ?)』
もう一度今は楼透の肩に乗っているカラスを見る。
良い事を思いついたと言いたげなその様子、確かにこのまま話が終わらないのは困るしな。俺は止まり木になっていた楼透を一度見ると目が合った。ツイと目をそらす楼透······アイツ。
「一つ聞いてもいいですか?」
「何でしょう、何なりと仰って下さい」
俺は先ず蓮家当主へ聞きたいことを聞くことにした。
「楼透と禅羽さんはどうなるんですか?」
楼透は呪いに思考を奪われていたとは言え俺に危害を与え、禅羽さんはそれを防げなかった。本来従者は仕えている主人となる人を支え守る立場となり、主人の意向であっても決して仕える主人を危険に晒してはいけない。
何度も言うように今回の事は俺が全面的に悪いんだけど、この話し合いの場で蓮家に対しての処遇と従者である楼透、禅羽さんの処遇をどうするか決めると事前に聞いていた。だから──。
「俺が2人に何も求めず蓮家だけに何かを請求したとして、2人はその後どうなります?楼透と禅羽さんはまた俺の従者に戻りますか?それとも──」
「端的に申し上げますと律花様の従者には戻らせることは出来ません。これは蓮家の総意で、焔様との契約も御座いますから律花様には別の者を従者として派遣させて頂く予定です」
「そうなると2人は?」
「······暫くは蓮領地で各々修行させようと。その間は学園も休学、退学も視野に入れております。特に楼透は完全に同化して間もなく、楼透自身の能力も未熟です。律花様の従者として遣わすのは認められません」
「じゃ、楼透を下さい」
その答えを聞くなり楼透の態度にイラついたままの俺はそう言った。
その瞬間その場の全員が俺の顔を見る。話題にされた楼透でさえ先程の態度は何だったのか、目を見開いてこちらを見ていた。
「······律花?」
「······どういう事だ」
はっ、並々ならぬ気配の方向へ向くとお怒り兄貴と深刻な表情を浮かべた先輩がいた。な、何で怒ってるんだ?え、もしかして楼透をまた従者にって駄目だった?焦ってカラスを見るとコイツは呆れたように器用に両羽をやれやれと持ち上げている。
······あ。
「違う違う違う!!そういう事意味じゃなくて!また楼透に従者やって貰えないかなって!それが駄目なら美園家で働いて貰うことってどうなのかなって事!!」
俺は急いで弁明した。確かにそういう意味で受け取ったなら兄貴と先輩の態度も分かるし、カラスに馬鹿にされたのだって馬鹿にされて当たり前だ。
俺は改めて楼透に戻って来て貰えないか話をした。
元々俺が蓮家に向かったのだって楼透に戻ってきて貰う為だったし、事情を知って呪い自体も解呪した今なら楼透が従者として俺の近くに居たって問題無いんじゃないかと思った旨を説明した。
「······俺も呪いの一端に触れて、今まで俺が楼透にとってきた言動や態度にも原因があると思った。楼透、また友達に戻れないのか·····?態度とかイラつくこともあるけどお前のこと嫌いになれないし······ちっちゃい時から一緒だったから居なかったら居ないで正直寂しいんだよな」
後半は言ってて自分で恥ずかしくなったけど。
お金じゃなくて人を貰う。
貰うと言ってもまぁ、数年間は美園家で働いて貰うって事にすればいい。そうすれば学園だって退学する事ないし、いずれは楼透が仕えたいと思った主人の所へ行けばいいし······悪い話じゃないよな?償いはこれから俺を襲うであろう男共から守って貰えればそれでいい。加護と言うか呪いと言うか、匂いは香水で軽減されてるはずだ。兄貴や先輩とも上手くやれてるから距離とかに気をつければ楼透とも大丈夫かと思う。
『何かあれば私が坊を抑えよう』
カラスは片腕を器用にグッジョブと突き出す。
ホントにどこで覚えたんだそれ。
しかし蓮家当主は首を縦には降らなかった。やはり蓮家のルールと言うか、家風?と言うんだろうか、従者の家系である蓮家としては今回の事をその程度で済ますのは······と言う。
「律花様、私から──俺から宜しいですか」
「ん?」
「俺はまだずっと貴方を好きですよ。だから襲わないと言う自信はありませんけど、それでも俺を迎え入れますか?そんな俺を貴方は信じますか?」
突然の楼透のその言葉に皆唖然とした。
何を言うかと思えば俺への告白。しかも公開告白。兄貴は受けて立とうとでも言うような笑顔で臨戦態勢。先輩は深く考え込み、楼透の発言から我に返った蓮家一同はやや挙動不審に俺たちを見ている。
楼透の問いに俺は少し間を空けて答えた。
「好きでいれば?」
「でも俺はお前の想いには答えられない。···そのことは理解して欲しい。それに、少しでも俺に無理強いしたら俺はお前を嫌いになる。嫌われたければ襲ってみればいい······自惚れてるかもしれないが俺はお前が俺に嫌われないよう行動してくれるって信じる」
好きだから嫌い、大好きだから嫌われたくなくてわざと相手を遠ざけるみたいな······楼透がやってきたのは多分そういう事。まぁ、多少は楼透の性格ってのもあるかもな。
信じてる、じゃなくて信じる。
楼透はチクチク言ってても俺のお願いは何気に聞いてくれてたからな。
「て、事で楼透にはこれから俺の従者として馬車馬の如く働いて貰うつもりなんで宜しく!あと、それに伴って欲張りかもしれないけどもう一つ良いですか?」
俺はもう一つ蓮家当主様に提案する。
禅羽さんについて。楼透の処遇は決まったけど、禅羽さんについても出来れば楼透が安定するまで楼透の補佐と言うか、面倒を見てやって欲しいと思う。
蓮家当主様はさっきの反対した姿勢と何処へやら呆気に取られながらも反対の姿勢はおろか、俺が提案した全てのことに同意してくれた。
「律花様、私にまで目をかけて下さり有難う御座います。不肖ながら私、不知火禅羽は精一杯楼透君と共に仕えさせて頂きます」
目を潤わせた禅羽さんは深く頭を下げてそう言った。いや、だから今回は俺が悪いんだってば。禅羽さんに無理言ったのは俺!我儘言って勝手に怪我したのも俺なのに。
これじゃキリが無いって。
「楼透、おかえり。···律花に手を出したら分かってるね?」
「燈夜様にもご迷惑お掛けしてすみませんでした。分かってます、今は望み通りの答えは頂けませんでしたけど手は出しませんが好きにするよう仰せですので」
兄貴はと言うと、何故か楼透と笑顔で喧嘩してる。
楼透もそんな宣戦布告みたいな······。
なんで俺がいるとみんな喧嘩すんの?旅にでも出よか?いや駄目だ、こいつらの事だきっと追いかけてくる。最終的に何故逃げたのか問い詰められて、理由を言ったら殺し合いが始まるかもしれない。
結局話し合いの結果として蓮家へ求めるのは人質として楼透と禅羽さんの身柄の引渡し──という名の楼透と禅羽さんの条件付きの派遣だ。なお、楼透は最低でも十年は美園家で働いて貰う事となり禅羽さんは楼透の状態が安定したら自由となる。
楼透の公開告白から考え直したのか、人質って言葉にする事で検討しやすくなったのか、蓮家当主含め一同は同意した。また断られたらどうしようかと思った···。
『リカ、私の事忘れてくれるなよ?坊も酷い子だ』
あ。
話し合い終わったぁ~と肩の力を抜いたらカラス。再び俺の目の前数センチに飛んできて俺と楼透を交互に見る。同じく一瞬このカラスについて忘れかけてしまったのか楼透はその視線と目を合わさないようにしている。ぬいぐるみみたいなフォルムのくせに圧が強い。
「楼透、コイツもしかして──」
楼透は静かに頷くと話について来れていない兄貴、先輩、蓮家一同へ何があったのかを簡潔に語り出した。楼透の声に耳を傾けながら次第に表情の険しくなる一同。
楼透が目覚めてからカラス──コクヨウから聞いたと言う話。
勿論俺は初耳だが、どうやらコクヨウは本来あのまま消滅するはずだった。しかし俺が楼透に使った首輪の効果で楼透が俺に従属、俺からの魔力供給が可能となった事によりコクヨウは僅かに力を残し、首輪に残りの力を封印されるだけで済んだ······。
カラスの姿をしているのは魔力の過剰消費を避けるためで、蓮家の象徴である『鴉の一族』と言うのは遥昔にコクヨウが継承者と同化した際にこの姿で現したその名残らしい。
あの装備品······そんなヤバいもんだったんだな。出処は蓮家領地で訓練した時に魔物からドロップした事にしとこ。神様から貰ったなんて絶対言えない。
なお、俺に従属したことで俺の魔力を勝手に消費して怪我も完全治癒。まぁ命が助かったわけだから俺の微々たる魔力でも助けられたならよしとしよう。
「そして先程俺が律花様を襲う可能性が、と言いましたが正直無理です」
「·········うん?」
「律花様を試しました」
そう言うと楼透は徐ろに自身のシャツのボタンを外し、中に着ていたシャツのタートルネックで隠れた首元を顕にした。そこにはまだ成長過程の線の細い首筋からまるで茨が渦をまくような痣があった。
俺が楼透に首輪を付けた時には無かった痣。
「俺は『今現在も』律花様に従属してます」
ん!?
突然頭に響く声。周りを見るとカラスと目が合った。
どうやら楼透には聞こえていないらしい。
念話?と言うやつだろうか。
『(リカは賢いな。そうだ、念話であっている)』
『(人でもいいかって·······まさか)』
『(そうだ。何かしら求めなくてはならぬのなら“人”でも構わんだろ?)』
もう一度今は楼透の肩に乗っているカラスを見る。
良い事を思いついたと言いたげなその様子、確かにこのまま話が終わらないのは困るしな。俺は止まり木になっていた楼透を一度見ると目が合った。ツイと目をそらす楼透······アイツ。
「一つ聞いてもいいですか?」
「何でしょう、何なりと仰って下さい」
俺は先ず蓮家当主へ聞きたいことを聞くことにした。
「楼透と禅羽さんはどうなるんですか?」
楼透は呪いに思考を奪われていたとは言え俺に危害を与え、禅羽さんはそれを防げなかった。本来従者は仕えている主人となる人を支え守る立場となり、主人の意向であっても決して仕える主人を危険に晒してはいけない。
何度も言うように今回の事は俺が全面的に悪いんだけど、この話し合いの場で蓮家に対しての処遇と従者である楼透、禅羽さんの処遇をどうするか決めると事前に聞いていた。だから──。
「俺が2人に何も求めず蓮家だけに何かを請求したとして、2人はその後どうなります?楼透と禅羽さんはまた俺の従者に戻りますか?それとも──」
「端的に申し上げますと律花様の従者には戻らせることは出来ません。これは蓮家の総意で、焔様との契約も御座いますから律花様には別の者を従者として派遣させて頂く予定です」
「そうなると2人は?」
「······暫くは蓮領地で各々修行させようと。その間は学園も休学、退学も視野に入れております。特に楼透は完全に同化して間もなく、楼透自身の能力も未熟です。律花様の従者として遣わすのは認められません」
「じゃ、楼透を下さい」
その答えを聞くなり楼透の態度にイラついたままの俺はそう言った。
その瞬間その場の全員が俺の顔を見る。話題にされた楼透でさえ先程の態度は何だったのか、目を見開いてこちらを見ていた。
「······律花?」
「······どういう事だ」
はっ、並々ならぬ気配の方向へ向くとお怒り兄貴と深刻な表情を浮かべた先輩がいた。な、何で怒ってるんだ?え、もしかして楼透をまた従者にって駄目だった?焦ってカラスを見るとコイツは呆れたように器用に両羽をやれやれと持ち上げている。
······あ。
「違う違う違う!!そういう事意味じゃなくて!また楼透に従者やって貰えないかなって!それが駄目なら美園家で働いて貰うことってどうなのかなって事!!」
俺は急いで弁明した。確かにそういう意味で受け取ったなら兄貴と先輩の態度も分かるし、カラスに馬鹿にされたのだって馬鹿にされて当たり前だ。
俺は改めて楼透に戻って来て貰えないか話をした。
元々俺が蓮家に向かったのだって楼透に戻ってきて貰う為だったし、事情を知って呪い自体も解呪した今なら楼透が従者として俺の近くに居たって問題無いんじゃないかと思った旨を説明した。
「······俺も呪いの一端に触れて、今まで俺が楼透にとってきた言動や態度にも原因があると思った。楼透、また友達に戻れないのか·····?態度とかイラつくこともあるけどお前のこと嫌いになれないし······ちっちゃい時から一緒だったから居なかったら居ないで正直寂しいんだよな」
後半は言ってて自分で恥ずかしくなったけど。
お金じゃなくて人を貰う。
貰うと言ってもまぁ、数年間は美園家で働いて貰うって事にすればいい。そうすれば学園だって退学する事ないし、いずれは楼透が仕えたいと思った主人の所へ行けばいいし······悪い話じゃないよな?償いはこれから俺を襲うであろう男共から守って貰えればそれでいい。加護と言うか呪いと言うか、匂いは香水で軽減されてるはずだ。兄貴や先輩とも上手くやれてるから距離とかに気をつければ楼透とも大丈夫かと思う。
『何かあれば私が坊を抑えよう』
カラスは片腕を器用にグッジョブと突き出す。
ホントにどこで覚えたんだそれ。
しかし蓮家当主は首を縦には降らなかった。やはり蓮家のルールと言うか、家風?と言うんだろうか、従者の家系である蓮家としては今回の事をその程度で済ますのは······と言う。
「律花様、私から──俺から宜しいですか」
「ん?」
「俺はまだずっと貴方を好きですよ。だから襲わないと言う自信はありませんけど、それでも俺を迎え入れますか?そんな俺を貴方は信じますか?」
突然の楼透のその言葉に皆唖然とした。
何を言うかと思えば俺への告白。しかも公開告白。兄貴は受けて立とうとでも言うような笑顔で臨戦態勢。先輩は深く考え込み、楼透の発言から我に返った蓮家一同はやや挙動不審に俺たちを見ている。
楼透の問いに俺は少し間を空けて答えた。
「好きでいれば?」
「でも俺はお前の想いには答えられない。···そのことは理解して欲しい。それに、少しでも俺に無理強いしたら俺はお前を嫌いになる。嫌われたければ襲ってみればいい······自惚れてるかもしれないが俺はお前が俺に嫌われないよう行動してくれるって信じる」
好きだから嫌い、大好きだから嫌われたくなくてわざと相手を遠ざけるみたいな······楼透がやってきたのは多分そういう事。まぁ、多少は楼透の性格ってのもあるかもな。
信じてる、じゃなくて信じる。
楼透はチクチク言ってても俺のお願いは何気に聞いてくれてたからな。
「て、事で楼透にはこれから俺の従者として馬車馬の如く働いて貰うつもりなんで宜しく!あと、それに伴って欲張りかもしれないけどもう一つ良いですか?」
俺はもう一つ蓮家当主様に提案する。
禅羽さんについて。楼透の処遇は決まったけど、禅羽さんについても出来れば楼透が安定するまで楼透の補佐と言うか、面倒を見てやって欲しいと思う。
蓮家当主様はさっきの反対した姿勢と何処へやら呆気に取られながらも反対の姿勢はおろか、俺が提案した全てのことに同意してくれた。
「律花様、私にまで目をかけて下さり有難う御座います。不肖ながら私、不知火禅羽は精一杯楼透君と共に仕えさせて頂きます」
目を潤わせた禅羽さんは深く頭を下げてそう言った。いや、だから今回は俺が悪いんだってば。禅羽さんに無理言ったのは俺!我儘言って勝手に怪我したのも俺なのに。
これじゃキリが無いって。
「楼透、おかえり。···律花に手を出したら分かってるね?」
「燈夜様にもご迷惑お掛けしてすみませんでした。分かってます、今は望み通りの答えは頂けませんでしたけど手は出しませんが好きにするよう仰せですので」
兄貴はと言うと、何故か楼透と笑顔で喧嘩してる。
楼透もそんな宣戦布告みたいな······。
なんで俺がいるとみんな喧嘩すんの?旅にでも出よか?いや駄目だ、こいつらの事だきっと追いかけてくる。最終的に何故逃げたのか問い詰められて、理由を言ったら殺し合いが始まるかもしれない。
結局話し合いの結果として蓮家へ求めるのは人質として楼透と禅羽さんの身柄の引渡し──という名の楼透と禅羽さんの条件付きの派遣だ。なお、楼透は最低でも十年は美園家で働いて貰う事となり禅羽さんは楼透の状態が安定したら自由となる。
楼透の公開告白から考え直したのか、人質って言葉にする事で検討しやすくなったのか、蓮家当主含め一同は同意した。また断られたらどうしようかと思った···。
『リカ、私の事忘れてくれるなよ?坊も酷い子だ』
あ。
話し合い終わったぁ~と肩の力を抜いたらカラス。再び俺の目の前数センチに飛んできて俺と楼透を交互に見る。同じく一瞬このカラスについて忘れかけてしまったのか楼透はその視線と目を合わさないようにしている。ぬいぐるみみたいなフォルムのくせに圧が強い。
「楼透、コイツもしかして──」
楼透は静かに頷くと話について来れていない兄貴、先輩、蓮家一同へ何があったのかを簡潔に語り出した。楼透の声に耳を傾けながら次第に表情の険しくなる一同。
楼透が目覚めてからカラス──コクヨウから聞いたと言う話。
勿論俺は初耳だが、どうやらコクヨウは本来あのまま消滅するはずだった。しかし俺が楼透に使った首輪の効果で楼透が俺に従属、俺からの魔力供給が可能となった事によりコクヨウは僅かに力を残し、首輪に残りの力を封印されるだけで済んだ······。
カラスの姿をしているのは魔力の過剰消費を避けるためで、蓮家の象徴である『鴉の一族』と言うのは遥昔にコクヨウが継承者と同化した際にこの姿で現したその名残らしい。
あの装備品······そんなヤバいもんだったんだな。出処は蓮家領地で訓練した時に魔物からドロップした事にしとこ。神様から貰ったなんて絶対言えない。
なお、俺に従属したことで俺の魔力を勝手に消費して怪我も完全治癒。まぁ命が助かったわけだから俺の微々たる魔力でも助けられたならよしとしよう。
「そして先程俺が律花様を襲う可能性が、と言いましたが正直無理です」
「·········うん?」
「律花様を試しました」
そう言うと楼透は徐ろに自身のシャツのボタンを外し、中に着ていたシャツのタートルネックで隠れた首元を顕にした。そこにはまだ成長過程の線の細い首筋からまるで茨が渦をまくような痣があった。
俺が楼透に首輪を付けた時には無かった痣。
「俺は『今現在も』律花様に従属してます」
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