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異世界転移のコンビニ店員はとにかくのんびり暮らしたい!
【視点:???】
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あと1週間程で王都に着くであろうと見越し、私たちは遥かに広がる砂漠にようやく見つけたオアシスで野営の準備をしていた。
「······殿下、申し訳ございません」
「どうした?」
いつになく面目なさそうだな······。
「···恐れながら。···食料が尽きました。資金はまだ余裕がありますが、、」
「···何故それを早く言わない?」
「殿下!それは俺の責任なんですっ!」
唯一連れてきた近衛の青年兵であるハルクは涙目で俺に訴えた。
「何があった」
「ぅっ、え、っと、ちょっと目を離した隙に、、そう!野犬に食われて!」
「ふむ···」
何が歯切れが悪いな···。
第一、食料は魔法道具に入っているのだから野犬になどに食われる訳が無い。それに念を含めて1ヶ月分は用意していたはずだ·。
思うに、恐らく昨日まで滞在していた街の環境を見てどこかに寄付でもしてきてしまったのかもしれない。まぁ、俺の小遣いでひっそりと用意して貰ったもんだ。別に無くても問題はない。食料調達くらい出来る。
「······殿下、どうか御容赦を」
リィードでさえ、目頭を抑えて険しい顔をしている。リィードは事情を知っているのであろう。いや、これは怒りと言うより呆れの顔だな···。
恐らくは食料の残量を甘んじて見ていたんだろう。
「···分かった。ハルク、もう気にするな。無いは無いで仕方がない。面目ないと思うなら丁度、そこに湖もある。魚でも取ってこい」
「は、はい!!」
そう言うとハルクはパァァァとでも効果音が付きそうなほど表情が明るくなった。リィードもその美しい顔を和らげて微笑んでいる。
「それと、ハルク」
「はい!何ですかっ?」
「この国の民の安寧が私や父上に掛かっているのは重々承知だ。だが、お前の優しさだけではいつかは身を滅ぼすぞ」
「っ、、、·········はい」
「ハルク。殿下の仰る通りです。以後、気をつけるように」
「はいっ!」
大きく返事をするとタッタッと走っていった。
「リィードも苦労するな」
「いえ、このくらいは苦労に入りませんよ。···申し訳ございませんでした」
「いやいや謝るな。だいたい残ったら残ったで屋敷の使用人たちに分けてやるつもりだった。与える者が違うだけで、役立ったならそれでいい」
俺とリィードとハルクは幼なじみだ。
同年のリィードと三つ下のハルク。彼らは俺の友人として城に集められた子供らのうちの2人だ。まぁ、幼い頃は色々と馬鹿やってたし、気の合うヤツらがこの2人であったわけで今の今までの腐れ縁だ。
ハルクは可愛い弟のようなもんだが、剣術に至っては優秀。もしかしたら俺を凌ぐかもしれん。まぁ、俺に剣を向けられるならばの話だが。
リィードはとても頼りになる。その頭脳はこの国にとって必要だ。数年前に周国に攻められた際、若干16にして軍神とまで言われたその頭脳故、こんな俺の忠臣としていてくれるのはとても心強い。
「殿下ぁ!!」
「ん?ハルク。どうした」
「ハルク。落ち着きなさい」
「そんなことよりそんなことよりっ」
ハルクはつまづきながら急いで戻ってきた。
「そんなことよりどうしました?殿下の御前ですよ」
「あ。ご、ごめん?でもねあのね、あっち!」
リィードに叱られるが、それよりも気になることがあるらしい。
ハルクは駆けて行った方を指さした。
「あっちに光が見えたんだよっ。もしかしたら誰かの家があるのかもしれない!···って思って来たんだけど···」
漸くにこやかに拳を上げるリィードを認識したのか、声が徐々に小さく震えだすハルク。ハルクのいつもピンッと立った耳がペタンと折れている。
「···ハルク?」
「ひゃ、ひゃいっ!」
「殿下の御前ですよ?」
「あ、うっ、」
ハルクはぷるぷると震えて私を見る。
······助けてやるか。
「リィード。今は公の場でないし、その辺で許してやれ」
「しかし、殿下」
「ふっ、それに今の私たちにとっては渡りに船。ハルク、よく見つけてくれた。案内を頼む」
私の言葉にリィードは渋々引き下がった。ハルクは途端に耳をピンッと張り、尾を振ってコクコクと頷く。
「今回は殿下のお言葉に従いますが、ハルクを甘やかすのは大概にして下さい。ハルクの為にもなりませんから」
「分かっている」
「······殿下、申し訳ございません」
「どうした?」
いつになく面目なさそうだな······。
「···恐れながら。···食料が尽きました。資金はまだ余裕がありますが、、」
「···何故それを早く言わない?」
「殿下!それは俺の責任なんですっ!」
唯一連れてきた近衛の青年兵であるハルクは涙目で俺に訴えた。
「何があった」
「ぅっ、え、っと、ちょっと目を離した隙に、、そう!野犬に食われて!」
「ふむ···」
何が歯切れが悪いな···。
第一、食料は魔法道具に入っているのだから野犬になどに食われる訳が無い。それに念を含めて1ヶ月分は用意していたはずだ·。
思うに、恐らく昨日まで滞在していた街の環境を見てどこかに寄付でもしてきてしまったのかもしれない。まぁ、俺の小遣いでひっそりと用意して貰ったもんだ。別に無くても問題はない。食料調達くらい出来る。
「······殿下、どうか御容赦を」
リィードでさえ、目頭を抑えて険しい顔をしている。リィードは事情を知っているのであろう。いや、これは怒りと言うより呆れの顔だな···。
恐らくは食料の残量を甘んじて見ていたんだろう。
「···分かった。ハルク、もう気にするな。無いは無いで仕方がない。面目ないと思うなら丁度、そこに湖もある。魚でも取ってこい」
「は、はい!!」
そう言うとハルクはパァァァとでも効果音が付きそうなほど表情が明るくなった。リィードもその美しい顔を和らげて微笑んでいる。
「それと、ハルク」
「はい!何ですかっ?」
「この国の民の安寧が私や父上に掛かっているのは重々承知だ。だが、お前の優しさだけではいつかは身を滅ぼすぞ」
「っ、、、·········はい」
「ハルク。殿下の仰る通りです。以後、気をつけるように」
「はいっ!」
大きく返事をするとタッタッと走っていった。
「リィードも苦労するな」
「いえ、このくらいは苦労に入りませんよ。···申し訳ございませんでした」
「いやいや謝るな。だいたい残ったら残ったで屋敷の使用人たちに分けてやるつもりだった。与える者が違うだけで、役立ったならそれでいい」
俺とリィードとハルクは幼なじみだ。
同年のリィードと三つ下のハルク。彼らは俺の友人として城に集められた子供らのうちの2人だ。まぁ、幼い頃は色々と馬鹿やってたし、気の合うヤツらがこの2人であったわけで今の今までの腐れ縁だ。
ハルクは可愛い弟のようなもんだが、剣術に至っては優秀。もしかしたら俺を凌ぐかもしれん。まぁ、俺に剣を向けられるならばの話だが。
リィードはとても頼りになる。その頭脳はこの国にとって必要だ。数年前に周国に攻められた際、若干16にして軍神とまで言われたその頭脳故、こんな俺の忠臣としていてくれるのはとても心強い。
「殿下ぁ!!」
「ん?ハルク。どうした」
「ハルク。落ち着きなさい」
「そんなことよりそんなことよりっ」
ハルクはつまづきながら急いで戻ってきた。
「そんなことよりどうしました?殿下の御前ですよ」
「あ。ご、ごめん?でもねあのね、あっち!」
リィードに叱られるが、それよりも気になることがあるらしい。
ハルクは駆けて行った方を指さした。
「あっちに光が見えたんだよっ。もしかしたら誰かの家があるのかもしれない!···って思って来たんだけど···」
漸くにこやかに拳を上げるリィードを認識したのか、声が徐々に小さく震えだすハルク。ハルクのいつもピンッと立った耳がペタンと折れている。
「···ハルク?」
「ひゃ、ひゃいっ!」
「殿下の御前ですよ?」
「あ、うっ、」
ハルクはぷるぷると震えて私を見る。
······助けてやるか。
「リィード。今は公の場でないし、その辺で許してやれ」
「しかし、殿下」
「ふっ、それに今の私たちにとっては渡りに船。ハルク、よく見つけてくれた。案内を頼む」
私の言葉にリィードは渋々引き下がった。ハルクは途端に耳をピンッと張り、尾を振ってコクコクと頷く。
「今回は殿下のお言葉に従いますが、ハルクを甘やかすのは大概にして下さい。ハルクの為にもなりませんから」
「分かっている」
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