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2章 失った光
3.不安
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家に帰って、入鹿さんの下着とか着替えを用意してボストンバッグに詰め込んだ。
こんな大荷物なのは2ヶ月くらい前かな?···一度、Web番組の撮影のため九州へロケに行った時以来だ。あのときは楽しかったなぁ···。ロケってロケは2日で終わって、そのあと1日はめいっぱい観光した!
また、一緒に行きたいね。って入鹿さんも言ってて···。
「······早く起きろよな······」
俺は荷物を抱え込むと外で車を出して待っててくれてる中田さんのもとへ向かった。
それから数日。
俺たちquartetteはダンスの練習やボイトレ、ポージング練習、各自の仕事に明け暮れた。入鹿さんの居ない事務所はただでさえ人手不足なのに、今まで入鹿さんが受け持ってた仕事で忙しくなって···大変そうだった。あのぽっちゃり体型の中田さんでさえ少し痩せた気がする。
この前、中田さんが「···周防さんっ!あなた有能過ぎでしょう!?こんな人と連絡取ってたんすか!?顔広すぎでしょう!?」って発狂してたのを覚えてる。たったの数日だよ?···入鹿さん、、やっぱ働きすぎなんだよ。
今日はトレーニングもやり過ぎるなって隆生に言われ、中田さんからも仕事もないからって入鹿さんのとこに来た。
······そろそろ1週間経つんだな···。
入鹿さんはまだ目が覚めないらしい。検査でも異常は無かったから、あとは目が覚めればって病院の先生は言っていた。
······こんなときまで寝坊助してるなよな。
そんなことを考えつつ入鹿さんの病室のドアをノックする。
「······入鹿さん、入るよー。着替え持ってき-」
「あら、おはよう」
「っ、、······おはよう、ございます」
中に入ると叶プロデューサーがいた。
「···周防さん、まだ目が覚めないのね」
「······そう、ですね」
この人と入鹿さんの話はしたくないし、だからって仕事の話とかするとまた入鹿さんの話になるかもだし、天気が良いですねとか?いや曇ってたし······。
俺は何を話せばいいか迷って何も言えない。
「······ハル君。でしたっけ?」
「へ、?あ、、はいっ!」
「本当は周防さんが起きてからこの話はしようと思ってたのだけれど···」
「······?」
「あなた、ドラマ···やってみない?」
ドラマ······やってみない······?
「ど、ドラマ!?」
「ええ。今進めてる企画なんだけどね。···主演の俳優をあなたにやってほしいって思ってるの」
「な、何で俺なんか······」
「最初にここで会った時-。
あなた周防さんが無事と分かって泣いたでしょう?あのときの表情が私の思う主演にシンクロしたのよ。
きっと周防さんもあなたのことを推すために私にアポを取ったんじゃないかって······。私はそう思うの。
それにその作品はタカ君-いえ、隠岐先生の作品なのよ。先生に聞いたら、別にあなたに当て書きした訳では無いと言われたけれど···。それならそれで私は構わないと思う。先生もキャスティングはこっちで決めてくれって······台本以外は全て任せてくれるそうだから。
······ハル君。考えてみてくれないかしら?」
俺はその日。···そのまま帰った。
叶プロデューサーには俺だけでは決められないと答えて、事務所に戻った。入り口の警備員さんに挨拶して事務室に向かう。
ガラスの張られた外から室内を見ると中田さんがいた。休憩中だったみたいだけど俺に気づくと手を振って中に迎えてくれた。俺は叶プロデューサーにドラマの仕事をオファーされたことを伝えた。
中田さんは驚いて飲みかけのパックのリンゴジュースを慌てて落とし、スケジュール帳を急いで開いた。俺は受けていいのか分からなくて曖昧に返事してしまったこと、少し自信でもその仕事が出来るのかを考えたいと伝えると中田さんはあとで叶プロデューサーに連絡を入れてくれると言った。
·········。
「あ?···ハルか。どうした?」
トレーニングルームへ行くと隆生がいた。タオルで額から伝い落ちる汗を拭くと前髪をかきあげる荒っぽい動作と同時に俺に気づく。
「···隆生」
「ん?」
「今日、入鹿さんの病室行った」
「···そうか。どうだった?」
「叶プロデューサーに会った」
「······」
「隆生の、、
ドラマ化する小説の主演をやらないかって言われた···」
「······やっぱりな」
「············やっぱりって···」
やっぱり···隆生が俺たちの仕事を増やすために俺に当て書きして小説を書いたのか?もしそうだとしたら入鹿さんもグルになって-。
「······やっぱりなって、隆生が俺たちの···quartetteの仕事増やすために俺に当て書きしたってことか······?」
「·······」
隆生は何も言わない。
じっ、と俺を見ているだけだ。
「·········俺···············出来ないよ······」
「俺っ、演技なんてしたことないし···。隆生の本読んだけど、あんな凄くてカッコよくて···なんて言ったらいいか分かんないけどっ、本なんてあんま読まない俺なんかでも面白いって思えるような隆生の本はほんとに凄いんだよ!······だから、、だから俺には無理だよっ。俺が、、俺なんかが·········入鹿さんだって目覚めてないのに······」
叶プロデューサーは入鹿さんが俺を推薦するためにアポを取ったんじゃって言ってたけど、それはホントだろうか?俺、本当に演技なんてした事ないし、俳優が向いてるとは思えない···。ましてや、隆生の作品だなんて-。
······入鹿さんはなんて言うかな。
············なんて、言おうとしてたのかな······。
いつも俺を励ましてくれる入鹿さんはまだ夢の中だ。こんなとき、入鹿さんだったら···。俺になんて言ってくれるかな?
·········。
「·········きっと、隆生の期待を裏切ることになる······。······怖いよっ。俺、、······どうすればいい?」
こんな大荷物なのは2ヶ月くらい前かな?···一度、Web番組の撮影のため九州へロケに行った時以来だ。あのときは楽しかったなぁ···。ロケってロケは2日で終わって、そのあと1日はめいっぱい観光した!
また、一緒に行きたいね。って入鹿さんも言ってて···。
「······早く起きろよな······」
俺は荷物を抱え込むと外で車を出して待っててくれてる中田さんのもとへ向かった。
それから数日。
俺たちquartetteはダンスの練習やボイトレ、ポージング練習、各自の仕事に明け暮れた。入鹿さんの居ない事務所はただでさえ人手不足なのに、今まで入鹿さんが受け持ってた仕事で忙しくなって···大変そうだった。あのぽっちゃり体型の中田さんでさえ少し痩せた気がする。
この前、中田さんが「···周防さんっ!あなた有能過ぎでしょう!?こんな人と連絡取ってたんすか!?顔広すぎでしょう!?」って発狂してたのを覚えてる。たったの数日だよ?···入鹿さん、、やっぱ働きすぎなんだよ。
今日はトレーニングもやり過ぎるなって隆生に言われ、中田さんからも仕事もないからって入鹿さんのとこに来た。
······そろそろ1週間経つんだな···。
入鹿さんはまだ目が覚めないらしい。検査でも異常は無かったから、あとは目が覚めればって病院の先生は言っていた。
······こんなときまで寝坊助してるなよな。
そんなことを考えつつ入鹿さんの病室のドアをノックする。
「······入鹿さん、入るよー。着替え持ってき-」
「あら、おはよう」
「っ、、······おはよう、ございます」
中に入ると叶プロデューサーがいた。
「···周防さん、まだ目が覚めないのね」
「······そう、ですね」
この人と入鹿さんの話はしたくないし、だからって仕事の話とかするとまた入鹿さんの話になるかもだし、天気が良いですねとか?いや曇ってたし······。
俺は何を話せばいいか迷って何も言えない。
「······ハル君。でしたっけ?」
「へ、?あ、、はいっ!」
「本当は周防さんが起きてからこの話はしようと思ってたのだけれど···」
「······?」
「あなた、ドラマ···やってみない?」
ドラマ······やってみない······?
「ど、ドラマ!?」
「ええ。今進めてる企画なんだけどね。···主演の俳優をあなたにやってほしいって思ってるの」
「な、何で俺なんか······」
「最初にここで会った時-。
あなた周防さんが無事と分かって泣いたでしょう?あのときの表情が私の思う主演にシンクロしたのよ。
きっと周防さんもあなたのことを推すために私にアポを取ったんじゃないかって······。私はそう思うの。
それにその作品はタカ君-いえ、隠岐先生の作品なのよ。先生に聞いたら、別にあなたに当て書きした訳では無いと言われたけれど···。それならそれで私は構わないと思う。先生もキャスティングはこっちで決めてくれって······台本以外は全て任せてくれるそうだから。
······ハル君。考えてみてくれないかしら?」
俺はその日。···そのまま帰った。
叶プロデューサーには俺だけでは決められないと答えて、事務所に戻った。入り口の警備員さんに挨拶して事務室に向かう。
ガラスの張られた外から室内を見ると中田さんがいた。休憩中だったみたいだけど俺に気づくと手を振って中に迎えてくれた。俺は叶プロデューサーにドラマの仕事をオファーされたことを伝えた。
中田さんは驚いて飲みかけのパックのリンゴジュースを慌てて落とし、スケジュール帳を急いで開いた。俺は受けていいのか分からなくて曖昧に返事してしまったこと、少し自信でもその仕事が出来るのかを考えたいと伝えると中田さんはあとで叶プロデューサーに連絡を入れてくれると言った。
·········。
「あ?···ハルか。どうした?」
トレーニングルームへ行くと隆生がいた。タオルで額から伝い落ちる汗を拭くと前髪をかきあげる荒っぽい動作と同時に俺に気づく。
「···隆生」
「ん?」
「今日、入鹿さんの病室行った」
「···そうか。どうだった?」
「叶プロデューサーに会った」
「······」
「隆生の、、
ドラマ化する小説の主演をやらないかって言われた···」
「······やっぱりな」
「············やっぱりって···」
やっぱり···隆生が俺たちの仕事を増やすために俺に当て書きして小説を書いたのか?もしそうだとしたら入鹿さんもグルになって-。
「······やっぱりなって、隆生が俺たちの···quartetteの仕事増やすために俺に当て書きしたってことか······?」
「·······」
隆生は何も言わない。
じっ、と俺を見ているだけだ。
「·········俺···············出来ないよ······」
「俺っ、演技なんてしたことないし···。隆生の本読んだけど、あんな凄くてカッコよくて···なんて言ったらいいか分かんないけどっ、本なんてあんま読まない俺なんかでも面白いって思えるような隆生の本はほんとに凄いんだよ!······だから、、だから俺には無理だよっ。俺が、、俺なんかが·········入鹿さんだって目覚めてないのに······」
叶プロデューサーは入鹿さんが俺を推薦するためにアポを取ったんじゃって言ってたけど、それはホントだろうか?俺、本当に演技なんてした事ないし、俳優が向いてるとは思えない···。ましてや、隆生の作品だなんて-。
······入鹿さんはなんて言うかな。
············なんて、言おうとしてたのかな······。
いつも俺を励ましてくれる入鹿さんはまだ夢の中だ。こんなとき、入鹿さんだったら···。俺になんて言ってくれるかな?
·········。
「·········きっと、隆生の期待を裏切ることになる······。······怖いよっ。俺、、······どうすればいい?」
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