271 / 276
第7章 大魔王誕生
Ver.3/第76話
しおりを挟む
『これは、どうしたことでしょうか。一方的な展開になってしまいました……』
気合を入れて試合を見守っていた実況も、どこか肩透かしを食らったような結末に、不完全燃焼といった雰囲気である。
『えーと。実は、ですね。おそらく、マカリナさん達も、こうなることは覚悟していたんじゃないかな? と、思います』
解説のチーフプランナーは、眉尻を下げながら口を開いていた。
『何か、両者の間に、因縁的なものでもあったのでしょうか? 試合開始前に、何やら意味深なやり取りもありましたが……』
『ああ、いやいや。あのやり取りに関しては、私も、ちょっと図りかねますが、単純に、マカリナさんとハルマさんの相性の問題なんですよ』
『つまり、勝負が始まる前から決まっていた、と?』
『それに近いですね。マカリナさんの取得しているスキルは大変強力なもので、準々決勝ではナイショさん相手に、いかんなく発揮されたのですが、ハルマさんの場合は不発に終わってしまった、というところです。最後に〈敗戦の記憶〉を使って、何とか起死回生を狙ったみたいですが、こちらも不発に終わってしまいましたね』
『その〈敗戦の記憶〉というのが、最後に浮かび上がった魔法陣ですね? どういったスキルなのでしょうか?』
『このスキルは、〈魔王イベント〉で獲得できるエンブレムと交換できるスキルです。今回の〈大魔王決定戦〉で、魔王スキルが使われたのは初めてですかね? なかなかトリッキーなスキルですが、魔王スキルのひとつとして、大変強力な効果があります。マカリナさん達が取得しているのも、相性の良いスキルだと思いますよ。実際、上手く発動していれば、戦況はガラリと変わっていたかもしれません。ただ、ちょっと、使った相手が悪かったですね。このレベルの戦いで不発に終わることは、まず考えられないスキルですので……』
敵プレイヤーが全滅させられたことのあるモンスターを召喚して1分半戦わせることができるスキル。それが〈敗戦の記憶〉である。
ハルマも興味を引かれていたスキルであるのだが、ランダムに召喚されるモンスターに対して信頼できない点と、そもそもPVPに興味がなかったこともあり、取得の選択肢から外れた経緯があった。
しかし、実際は、召喚されるモンスターは高い確率で最近全滅させられたモンスター群から選ばれるように設定されており、始めたての頃に全滅させられたような低ランクモンスターが召喚されることはない。
つまり、召喚に成功すれば、かなりの戦力になることが期待できるスキルなのだ。
ただ、チーフプランナーの言葉の通り、使った相手が悪かった。
何しろ、全滅を経験したことのない、唯一の魔王プレイヤーだからだ。
『そういうことだったんですね。マカリナ軍も、少し不本意な結末でしたかね?』
『ハルマさんとの対戦さえ避けられれば、大魔王の座も狙えた実力があっただけに、残念でしたね』
『組合せの妙というところですかね……。さて! しかし、これで決勝のカードが決まりました! この組合せになることは、もしかしたら、一番望んでいた方が多かったのではないでしょうか?』
『そうですねえ。前評判の高かったハルマさん、モカさんのずば抜けたソロプレイヤーか、パーティプレーを突き詰めてきたテスタプラスさん達。この3者のいずれかの組合せを期待されている方は、うちのスタッフでも多かったですからね』
『そう考えると、〈大魔王決定戦〉の開幕が、魔王モカVS魔王テスタプラスであったことは、すごいことですよね』
『モカさんを倒した勢いのまま、ネマキさんに続いてハルマさんも倒して、名実ともに大魔王に君臨するのか。それとも、ソロプレイヤーであるハルマさんが、異次元の戦いでパーティプレー最強の軍勢をはね返すのか、大変興味深い決勝になりそうです』
ハルマVSマカリナの戦いは、準決勝第1試合と打って変り、早めの決着となったため、決勝までは長めの時間が取られることになった。
そのせいで、待たされる時間が増えた観客は、行き場のない感情をため込むことになり、熱気だけがコロシアムの中にどんどん充満していく。
そうして、時はきた。
気合を入れて試合を見守っていた実況も、どこか肩透かしを食らったような結末に、不完全燃焼といった雰囲気である。
『えーと。実は、ですね。おそらく、マカリナさん達も、こうなることは覚悟していたんじゃないかな? と、思います』
解説のチーフプランナーは、眉尻を下げながら口を開いていた。
『何か、両者の間に、因縁的なものでもあったのでしょうか? 試合開始前に、何やら意味深なやり取りもありましたが……』
『ああ、いやいや。あのやり取りに関しては、私も、ちょっと図りかねますが、単純に、マカリナさんとハルマさんの相性の問題なんですよ』
『つまり、勝負が始まる前から決まっていた、と?』
『それに近いですね。マカリナさんの取得しているスキルは大変強力なもので、準々決勝ではナイショさん相手に、いかんなく発揮されたのですが、ハルマさんの場合は不発に終わってしまった、というところです。最後に〈敗戦の記憶〉を使って、何とか起死回生を狙ったみたいですが、こちらも不発に終わってしまいましたね』
『その〈敗戦の記憶〉というのが、最後に浮かび上がった魔法陣ですね? どういったスキルなのでしょうか?』
『このスキルは、〈魔王イベント〉で獲得できるエンブレムと交換できるスキルです。今回の〈大魔王決定戦〉で、魔王スキルが使われたのは初めてですかね? なかなかトリッキーなスキルですが、魔王スキルのひとつとして、大変強力な効果があります。マカリナさん達が取得しているのも、相性の良いスキルだと思いますよ。実際、上手く発動していれば、戦況はガラリと変わっていたかもしれません。ただ、ちょっと、使った相手が悪かったですね。このレベルの戦いで不発に終わることは、まず考えられないスキルですので……』
敵プレイヤーが全滅させられたことのあるモンスターを召喚して1分半戦わせることができるスキル。それが〈敗戦の記憶〉である。
ハルマも興味を引かれていたスキルであるのだが、ランダムに召喚されるモンスターに対して信頼できない点と、そもそもPVPに興味がなかったこともあり、取得の選択肢から外れた経緯があった。
しかし、実際は、召喚されるモンスターは高い確率で最近全滅させられたモンスター群から選ばれるように設定されており、始めたての頃に全滅させられたような低ランクモンスターが召喚されることはない。
つまり、召喚に成功すれば、かなりの戦力になることが期待できるスキルなのだ。
ただ、チーフプランナーの言葉の通り、使った相手が悪かった。
何しろ、全滅を経験したことのない、唯一の魔王プレイヤーだからだ。
『そういうことだったんですね。マカリナ軍も、少し不本意な結末でしたかね?』
『ハルマさんとの対戦さえ避けられれば、大魔王の座も狙えた実力があっただけに、残念でしたね』
『組合せの妙というところですかね……。さて! しかし、これで決勝のカードが決まりました! この組合せになることは、もしかしたら、一番望んでいた方が多かったのではないでしょうか?』
『そうですねえ。前評判の高かったハルマさん、モカさんのずば抜けたソロプレイヤーか、パーティプレーを突き詰めてきたテスタプラスさん達。この3者のいずれかの組合せを期待されている方は、うちのスタッフでも多かったですからね』
『そう考えると、〈大魔王決定戦〉の開幕が、魔王モカVS魔王テスタプラスであったことは、すごいことですよね』
『モカさんを倒した勢いのまま、ネマキさんに続いてハルマさんも倒して、名実ともに大魔王に君臨するのか。それとも、ソロプレイヤーであるハルマさんが、異次元の戦いでパーティプレー最強の軍勢をはね返すのか、大変興味深い決勝になりそうです』
ハルマVSマカリナの戦いは、準決勝第1試合と打って変り、早めの決着となったため、決勝までは長めの時間が取られることになった。
そのせいで、待たされる時間が増えた観客は、行き場のない感情をため込むことになり、熱気だけがコロシアムの中にどんどん充満していく。
そうして、時はきた。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。


【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる