魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり

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第7章 大魔王誕生

Ver.3/第76話

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『これは、どうしたことでしょうか。一方的な展開になってしまいました……』
 気合を入れて試合を見守っていた実況も、どこか肩透かしを食らったような結末に、不完全燃焼といった雰囲気である。
『えーと。実は、ですね。おそらく、マカリナさん達も、こうなることは覚悟していたんじゃないかな? と、思います』
 解説のチーフプランナーは、眉尻を下げながら口を開いていた。
『何か、両者の間に、因縁的なものでもあったのでしょうか? 試合開始前に、何やら意味深なやり取りもありましたが……』
『ああ、いやいや。あのやり取りに関しては、私も、ちょっと図りかねますが、単純に、マカリナさんとハルマさんの相性の問題なんですよ』
『つまり、勝負が始まる前から決まっていた、と?』
『それに近いですね。マカリナさんの取得しているスキルは大変強力なもので、準々決勝ではナイショさん相手に、いかんなく発揮されたのですが、ハルマさんの場合は不発に終わってしまった、というところです。最後に〈敗戦の記憶〉を使って、何とか起死回生を狙ったみたいですが、こちらも不発に終わってしまいましたね』
『その〈敗戦の記憶〉というのが、最後に浮かび上がった魔法陣ですね? どういったスキルなのでしょうか?』
『このスキルは、〈魔王イベント〉で獲得できるエンブレムと交換できるスキルです。今回の〈大魔王決定戦〉で、魔王スキルが使われたのは初めてですかね? なかなかトリッキーなスキルですが、魔王スキルのひとつとして、大変強力な効果があります。マカリナさん達が取得しているのも、相性の良いスキルだと思いますよ。実際、上手く発動していれば、戦況はガラリと変わっていたかもしれません。ただ、ちょっと、使った相手が悪かったですね。このレベルの戦いで不発に終わることは、まず考えられないスキルですので……』
 敵プレイヤーが全滅させられたことのあるモンスターを召喚して1分半戦わせることができるスキル。それが〈敗戦の記憶〉である。
 ハルマも興味を引かれていたスキルであるのだが、ランダムに召喚されるモンスターに対して信頼できない点と、そもそもPVPに興味がなかったこともあり、取得の選択肢から外れた経緯があった。
 しかし、実際は、召喚されるモンスターは高い確率で最近全滅させられたモンスター群から選ばれるように設定されており、始めたての頃に全滅させられたような低ランクモンスターが召喚されることはない。
 つまり、召喚に成功すれば、かなりの戦力になることが期待できるスキルなのだ。
 ただ、チーフプランナーの言葉の通り、使った相手が悪かった。
 何しろ、全滅を経験したことのない、唯一の魔王プレイヤーだからだ。
『そういうことだったんですね。マカリナ軍も、少し不本意な結末でしたかね?』
『ハルマさんとの対戦さえ避けられれば、大魔王の座も狙えた実力があっただけに、残念でしたね』
『組合せの妙というところですかね……。さて! しかし、これで決勝のカードが決まりました! この組合せになることは、もしかしたら、一番望んでいた方が多かったのではないでしょうか?』
『そうですねえ。前評判の高かったハルマさん、モカさんのずば抜けたソロプレイヤーか、パーティプレーを突き詰めてきたテスタプラスさん達。この3者のいずれかの組合せを期待されている方は、うちのスタッフでも多かったですからね』
『そう考えると、〈大魔王決定戦〉の開幕が、魔王モカVS魔王テスタプラスであったことは、すごいことですよね』
『モカさんを倒した勢いのまま、ネマキさんに続いてハルマさんも倒して、名実ともに大魔王に君臨するのか。それとも、ソロプレイヤーであるハルマさんが、異次元の戦いでパーティプレー最強の軍勢をはね返すのか、大変興味深い決勝になりそうです』
 ハルマVSマカリナの戦いは、準決勝第1試合と打って変り、早めの決着となったため、決勝までは長めの時間が取られることになった。
 そのせいで、待たされる時間が増えた観客は、行き場のない感情をため込むことになり、熱気だけがコロシアムの中にどんどん充満していく。

 そうして、時はきた。
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