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第7章 大魔王誕生

Ver.3/第74話

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『魔王テスタプラスVS魔王ネマキによる準決勝第1試合は、最後まで目の離せない戦いの末、僅差でテスタプラス軍が決勝進出を果たしました。今回は、魔王モカの時とは違った対策をしてきましたね』
 会場のどことなく盛り上がりに欠ける雰囲気を感じながらも、実況として誠実に仕事をこなす。ただ、それだけでなく、本心から目の前で行われていた戦いに心を奪われていたのも事実だ。
『そうですね。テスタプラスさん達にとって幸運だったのは、モカさんもネマキさんも、最高クラスの火力の持ち主であるが故に、対策も立て易かった点です』
『と、言いますと?』
『現状、大ダメージを出すには、ある程度特化した部分が必要になります。それが、モカさんだと物理攻撃であり、ネマキさんだと魔法攻撃になると思うんです。その中でも、ネマキさんは更に特化させて、火属性に絞っているんです。なので、テスタプラスさん達は、事前に火属性に対抗できる準備をしておくことができた、というわけです。もちろん、ネマキさんもその辺はわかっていて、それでも打ち破れる自信があったみたいですが、今回は……』
『テスタプラス軍の堅牢な守りを崩すことが叶わなかった、ということですね』
『そうですね。私も、ちょっと正確に何が行われたのかは、じっくり振り返ってみないとわからない部分もあるのですが、最低でも5人の連携で防いでいたように思います。こちらが仕様として組み込んでいる合わせ技とは違う使い方もあったと思いますので、タイミングを合わせるのは、本当に難しかったと思いますが、この辺の意思疎通の高さは、さすがとしか言えませんね。それにしても、ネマキさんの魔法を無効化できるほどとなると、ほとんどの属性攻撃は無効化されてしまうかもしれませんねえ』
『そこまでですか!? そうなると、テスタプラス軍は、限定的ではあると思いますが、物理攻撃も魔法攻撃も無効化できる手段がある、ということになりますね』
『そういうことになりますね。個人の技量を高めることに特化した相手に対して、テスタプラスさん達は連携に特化してきたことで生まれた、対応力の高さが持ち味です。ここまで勝ち上がってきた質の高いパーティプレーは、決勝でも楽しみですね』
『決勝のお話が出ましたが、テスタプラス軍の相手が決まる準決勝第2試合も、面白い組合せになりましたね』
 準決勝第1試合の振り返りが終わったタイミングと判断した実況は、タイムスケジュールも気にしながら問いかける。第1試合が制限時間ギリギリまでもつれたこともあり、インターバルの時間は短くなっている。
 残されたわずかな時間で、観客の意識を次の戦いに引き込ませないとならないのだが、それは、何の問題もなさそうである。
 何しろ、とっくに観客の興味は不落魔王ハルマで満ちているからだ。
『そうですね。ハルマさんにかんしては、多くの方がご存知だと思いますが、マカリナさんは、前回の〈魔王イベント〉で急きょ頭角を現してきました。ただ、両者ともに、謎の多いプレイヤーということは共通していますね』
『片や不落魔王の異名を持つハルマは、理解不能な数のNPCを仲間に従え、圧倒的な制圧力で相手を叩き潰すだけでなく、第1回の〈魔王イベント〉で見せた鉄壁のガード、準々決勝で見せた異次元の戦い方と、常に我々を驚かせてきました。対する魔王マカリナは、先ほどの説明の通り、第2回〈魔王イベント〉で彗星のごとく現れ、いきなりの全勝デビュー。戦闘中、次から次にモンスターを召喚し、相手を圧倒していく戦いは、魔王ハルマにも劣らない迫力があります。さあ、そろそろ時間がきたようです』
 ここで、画面は実況と解説のふたりから、闘技場へと切り替わった。
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