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第5章 光の導き

Ver.3/第62話

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「どっせい!」
 スズコの気合とともに両手斧が振られ、岩壁が破壊されていく。
 ゴリの案内で向かった先にあったのは、クジラとカエルのレリーフが彫られた場所だった。よくよく観察してみると、確かに、その間には不自然な大岩が置かれていた。
 ハルマも、最初はツルハシの出番か? と、準備しようと思ったのだが、このオブジェクトはクエスト用の特別仕様らしく、通常の武器でも破壊できたため、この中で最も火力の高いスズコに任せているところだ。
 勢いよく振り回される斧の破壊力は上々で、数分でそれは起こった。
「お!?」
 ビキビキと音を発したかと思ったら、一気にヒビが走り、ガコンと真っ二つに割れた後、役目を終えたオブジェクトは消失してしまったのだ。
 そこに現れたのは、隠し通路と呼べるもので、奥へと続いている。
「山の中に通じてる感じ?」
 口を開けた通路の前に立ち、奥を覗き込みながらミコトがつぶやく。
「ま、行ってみましょう」
 スズコの一声で進み始める。当然、クエストボスが待ち構えている可能性もあるため、ゴリを先頭にゆっくりと進むことになった。
「あれ? もう、着いたみたいですよ?」
 真っ直ぐな通路を進むこと3分ほど、視線の先に扉があるのが見えてきた。
「どうやら、あの岩を砕くまでが関門だったみたいね。それとも、あの先にボスがいるのかしら?」
 薄暗い通路をそのまま進み、周囲を警戒しながら扉が開かれた。
 しかし……。
「わあぁ」
 待っていたのは、幻想的な景色だった。
 先ほどまでいた、小規模なカルデラ湖とは比べものにならない大きさの湖が静かに広がり、鏡面となって空の姿を反射している。惜しいかな、曇天の空しか映し出されないため、幻想的と呼ぶには些か味気ない。
 湖の周囲には針葉樹が並び、穏やかな空気を漂わせている。どことなく、モヤシが開拓を始めたエリアに似ているだろうか。
「あそこに集落があるみたいだよ」
 通路は、このエリアの少し高台に繋がっており、カルデラ湖全体を見下ろすことができたのだが、サエラが針葉樹の中に小さな集落があるのを見つけていた。

 高台に設置されていた階段を下りていくと、目的の集落まではすぐだった。
 ところが、近づいていくと、上から眺めた幻想的な印象とは違った場所であることがわかってきた。
「こいつは……」
 ゴリは途中で言葉を失ってしまう。
 明らかに、魔物に襲われた場所だったからだ。
「これは、ひどいわね」
 スズコも、集落に入りながら顔を歪める。ここがゲームの世界であるとわかっていても、居た堪れない気持ちになる無残さだったのだ。

 と……。ここで、思わぬ人物が口を開いた。

「ようこそ。我が忍びの隠れ里へ。ご覧の通り、何のおもてなしもできませぬが、ゆっくりしていってくだされ」
 それまで無言を貫いていたハンゾウだった。
「ふぁ!? ここ、ハンゾウの故郷?」
 驚いたのはハルマだけではなく、一斉に視線がハンゾウに集まった。
「左様でござる。あの謎を解かれたからには、ここにあるものは好きにして構いませぬぞ? 持ち出されて困るものは、すでに封印しているか、別の場所に隠しております故」
「何なの、ハンゾウの謎解きキャラ……」
 思えば、出会ったのも謎解き脱出クエストである。
「何を申されます。忍びに暗号や密書は不可欠。初めて見る暗号であっても、解読せねばならぬ時もあります故、日々鍛錬が必要なのでござるよ」
 こんなに早くハンゾウの話していた隠れ里を見つけることになるとは思ってもおらず、一行は唖然となってしまうが、徐々に落ち着きを取り戻し、改めて集落の探索を始めることにするのだった。
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