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第5章 光の導き
Ver.3/第61話
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「わかりましたよ!」
スズコ達の元にチャットが届くと、外にいた4人は急いでハルマの待つ小屋に駆けつけていた。
「どこにあったの!?」
ほぼ同時に5人がそろったところで、開口一番スズコが声を上げた。
「あ、いや。別に隠されてなかったです。後、まだ途中なので、手伝ってもらえます?」
狭いスペースに、ひとつだけ置かれていた小さなテーブルに乗せられていたのは、陶器の破片の山だった。
その側には、いくつか破片が並べられ、文字が記されているのも見える。
「これって……。床に落ちてたやつ?」
ミコトがハッとしながら、きょろきょろと周囲を見回した。破片は全部拾い切れておらず、あちこちに散乱したまま残っている物もある。
「そうなんですよ。ただの演出オブジェクトだと思ってたけど、素材は陶器っぽいのに、ジグソーパズルですね、これ。あちこち繋げてみたら、さっきのメモに関係しそうな文章が見つかりました」
比較的大きな破片が繋がる部分があり、それがいくつか塊となって並べられている。それでも全体の3割といったところだろうか。まだまだ何を伝える文章なのか、はっきりとしない。
何をするかが決まれば、行動に移るのは早かった。
ただ、ゴリだけは「図体がデカくて邪魔」と、スズコに文句を言われ、泣く泣く外の捜索を再開することになってしまった。
それでも、残った4人で手分けしてパズルを組み上げていくこと約20分。
細かいところは残っているが、全体像を把握することはできるようになった。
「えーと? 朝日差す時、一番長い影が伸びる位置を起点とし、時計回りに言葉は並ぶ。何番目のテントであるかを理解したならば、イとロが何であるかわかるだろう。後は、イとロの間を塞ぐ岩を砕くのみ?」
スズコが代表して読み上げるも、4人とも難しい顔になるだけだった。
「とりあえず、朝になるのを待たないと、かな?」
サエラは窓を見上げ、星も見えない闇夜が広がっているのを確認する。ハルマがピースを見つけた時には太陽の光が薄っすら差し込んでいたが、再び日が昇るまではもうしばらくかかりそうであった。
4人は小屋から出ると、まずはテントの数を数えることにした。
「わかったんですか?」
周囲の捜索を続けていたゴリが、ハルマ達に気づき走り寄ってきた。スズコとミコトが残り説明することになり、残りのふたりでテントを数え始める。
「どうだった?」
「湖を囲むテントだと、26個ですかね? ここ以外にもありました?」
「いや。テントも小屋も、ここ以外にはなかったぞ。なんか、色んな動物のオブジェなら、あちこちにあったけど」
「あー。猫とか蟷螂とか、かわいいのが一杯あるよね」
「蟷螂もかわいい? まあ、いいわ。とりあえず、26個ってことは、シンプルにアルファベットでしょうね。うん。見えてきた」
「だね」
しばらく待機していると、空が白んできた。この世界の1日は72分。夏至も冬至もないので、いつでも36分ごとに昼夜が入れ替わる。つまり、毎日同じところから陽が昇るわけだ。
カルデラの淵はなだらかだが、朝日が昇る方角に1か所だけぴょこんと飛び出した場所がある。その影が湖を突っ切り、ハルマ達が待つ小屋の近くのテントを指し示した。
「あそこは『緑の本棚を置いてあるテント』だ。ってことは、イ-③はAってことね」
26個あるテントのひとつひとつにアルファベットが振り分けられており、メモはそれを示していたと推理したわけだが、ずばり的中だったらしい。
スズコの発言を皮切りに、メモに記されていたテントが何番目で、どのアルファベットなのかを把握していく。
「つまり? イがWHALEで、ロがFROGってことね」
スズコのまとめを耳にして、今度はゴリが声を上げていた。
「先輩! クジラとカエルなら、あっちの崖に彫ってありましたよ」
なぜだか大柄なゴリの姿が尻尾を振りまく健気な子犬に見えたのは、ハルマだけではなかっただろう。
スズコ達の元にチャットが届くと、外にいた4人は急いでハルマの待つ小屋に駆けつけていた。
「どこにあったの!?」
ほぼ同時に5人がそろったところで、開口一番スズコが声を上げた。
「あ、いや。別に隠されてなかったです。後、まだ途中なので、手伝ってもらえます?」
狭いスペースに、ひとつだけ置かれていた小さなテーブルに乗せられていたのは、陶器の破片の山だった。
その側には、いくつか破片が並べられ、文字が記されているのも見える。
「これって……。床に落ちてたやつ?」
ミコトがハッとしながら、きょろきょろと周囲を見回した。破片は全部拾い切れておらず、あちこちに散乱したまま残っている物もある。
「そうなんですよ。ただの演出オブジェクトだと思ってたけど、素材は陶器っぽいのに、ジグソーパズルですね、これ。あちこち繋げてみたら、さっきのメモに関係しそうな文章が見つかりました」
比較的大きな破片が繋がる部分があり、それがいくつか塊となって並べられている。それでも全体の3割といったところだろうか。まだまだ何を伝える文章なのか、はっきりとしない。
何をするかが決まれば、行動に移るのは早かった。
ただ、ゴリだけは「図体がデカくて邪魔」と、スズコに文句を言われ、泣く泣く外の捜索を再開することになってしまった。
それでも、残った4人で手分けしてパズルを組み上げていくこと約20分。
細かいところは残っているが、全体像を把握することはできるようになった。
「えーと? 朝日差す時、一番長い影が伸びる位置を起点とし、時計回りに言葉は並ぶ。何番目のテントであるかを理解したならば、イとロが何であるかわかるだろう。後は、イとロの間を塞ぐ岩を砕くのみ?」
スズコが代表して読み上げるも、4人とも難しい顔になるだけだった。
「とりあえず、朝になるのを待たないと、かな?」
サエラは窓を見上げ、星も見えない闇夜が広がっているのを確認する。ハルマがピースを見つけた時には太陽の光が薄っすら差し込んでいたが、再び日が昇るまではもうしばらくかかりそうであった。
4人は小屋から出ると、まずはテントの数を数えることにした。
「わかったんですか?」
周囲の捜索を続けていたゴリが、ハルマ達に気づき走り寄ってきた。スズコとミコトが残り説明することになり、残りのふたりでテントを数え始める。
「どうだった?」
「湖を囲むテントだと、26個ですかね? ここ以外にもありました?」
「いや。テントも小屋も、ここ以外にはなかったぞ。なんか、色んな動物のオブジェなら、あちこちにあったけど」
「あー。猫とか蟷螂とか、かわいいのが一杯あるよね」
「蟷螂もかわいい? まあ、いいわ。とりあえず、26個ってことは、シンプルにアルファベットでしょうね。うん。見えてきた」
「だね」
しばらく待機していると、空が白んできた。この世界の1日は72分。夏至も冬至もないので、いつでも36分ごとに昼夜が入れ替わる。つまり、毎日同じところから陽が昇るわけだ。
カルデラの淵はなだらかだが、朝日が昇る方角に1か所だけぴょこんと飛び出した場所がある。その影が湖を突っ切り、ハルマ達が待つ小屋の近くのテントを指し示した。
「あそこは『緑の本棚を置いてあるテント』だ。ってことは、イ-③はAってことね」
26個あるテントのひとつひとつにアルファベットが振り分けられており、メモはそれを示していたと推理したわけだが、ずばり的中だったらしい。
スズコの発言を皮切りに、メモに記されていたテントが何番目で、どのアルファベットなのかを把握していく。
「つまり? イがWHALEで、ロがFROGってことね」
スズコのまとめを耳にして、今度はゴリが声を上げていた。
「先輩! クジラとカエルなら、あっちの崖に彫ってありましたよ」
なぜだか大柄なゴリの姿が尻尾を振りまく健気な子犬に見えたのは、ハルマだけではなかっただろう。
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