251 / 276
第5章 光の導き
Ver.3/第56話
しおりを挟む
オンソンに入るための関所で待っていたのは、クライムソーサラーという、闇の神官といった雰囲気のエリアボスだった。
「打ち合わせ通り、行くよ!」
フルレイド戦の時にはなかった安定感が、そこにはあった。
指揮を執ることに優れた人物がいるだけで、各自の判断は早くなる。
スズコの号令に合わせ、ゴリとガッツンは後列のミコトやハルマを守りながら走り出し、相手の魔法攻撃を受けても怯むことなく距離を詰め切ってしまった。自身が受けるダメージも、即座に回復してもらえるという信頼関係に裏打ちされた迷いのない動きだ。
壁役の重要な役割は、相手の攻撃を受け止めて、仲間にダメージが入るのを防ぐことだけではない。
相手の行動を阻害するというのも、大切な役割のひとつなのである。
クライムソーサラーを盾で押し込み、戦闘エリアの境界線まで移動させる。こうすることで、後衛に攻撃が届かないようにするとともに、ターゲットが後衛に移っても射程不足で行動不能になるという状況を作り出せるのだ。
「さっすが、モカさんに勝ったことがあるだけはあるね。上手い」
肩慣らし程度の戦闘では本領発揮とはいかなかったため、スズコパーティの本当の実力を目の当たりにして、サエラも感心しきりである。
「オッケーです。今のうちにガンガンやっちゃってください!」
足止めに成功したゴリが声を上げると、攻撃開始である。
スキルによってガッツンにターゲットが集中し、それをゴリのスキルでダメージを軽減しながら時間稼ぎする。これが最近のスズコパーティの鉄板戦略である。
今回はミコトの魔法攻撃が上手く機能しないため、スズコの負担が大きくなるが、ハルマとサエラのサポートが入ることで全体として上手く回っていた。
スズコとファングによる近距離物理攻撃に、ズキンとヤタジャオースも加わり火力はじゅうぶん。更に、ハルマとニノエの弓、ハンゾウのブーメランによる遠距離物理攻撃も加わり、ガリガリとクライムソーサラーのHPは削られていく。
サエラも大楯を装備できるため、前衛と後衛の中間位置で流れ弾に近い攻撃を防ぐ役割を担っていた。
彼女がいなければ、ハルマも安心して攻撃に参加できなかっただろう。
ミコトも最初こそ回復に専念していたが、ニノエとピインも光魔法で回復に回れたため手が空くことがあり、補助系の魔法を使う余裕ができていた。
こうして、前衛、中衛、後衛がきれいに機能して、戦いは大きく崩れることもなく勝利で終わることになるのだった。
「いやー。さすがに楽勝だったね」
もともとスズコ達3人でも突破できた相手である。ハルマとサエラが加わることで強さが変わるわけでもなかったので、当然といえば当然の結果であった。
「本職の盾職の動き、勉強になりました。ちょっと、質問いいですか?」
サエラも盾は使うが、ソロプレイヤーとしての生存能力を高めるための道具にすぎないこともあり、仲間を守ることを意識して動くことは少ない。その点、ゴリは完全にパーティプレーによって培ってきた技術なので、根本的に役割が異なる。
サエラもニャル達と行動することが増えてきたこともあり、ゴリに戦い方をあれこれ質問している。
「うーん。サエラちゃん、うちのパーティに欲しいな」
ゴリとサエラのやり取りを少し離れた位置で眺めていたスズコがつぶやいたのを、ミコトは聞き逃さなかった。
「ふふふ。慌てない慌てない。今回のサエラちゃんのポジションは、ナツキちゃんとノジロー君にやってもらう予定でしょ?」
「まあ、そうだね。ふたりとも筋は良いから、夏までには仕上がるかな?」
「次こそは! だね」
「次こそは! だな」
次が何を意味するのかは、訊かずともわかっていた。
自分は出たくて出たことはなかったが、多くのプレイヤーにとって大きな目標であることは間違いない。そのことに、何となく居心地の悪さを感じてしまうハルマなのであった。
「打ち合わせ通り、行くよ!」
フルレイド戦の時にはなかった安定感が、そこにはあった。
指揮を執ることに優れた人物がいるだけで、各自の判断は早くなる。
スズコの号令に合わせ、ゴリとガッツンは後列のミコトやハルマを守りながら走り出し、相手の魔法攻撃を受けても怯むことなく距離を詰め切ってしまった。自身が受けるダメージも、即座に回復してもらえるという信頼関係に裏打ちされた迷いのない動きだ。
壁役の重要な役割は、相手の攻撃を受け止めて、仲間にダメージが入るのを防ぐことだけではない。
相手の行動を阻害するというのも、大切な役割のひとつなのである。
クライムソーサラーを盾で押し込み、戦闘エリアの境界線まで移動させる。こうすることで、後衛に攻撃が届かないようにするとともに、ターゲットが後衛に移っても射程不足で行動不能になるという状況を作り出せるのだ。
「さっすが、モカさんに勝ったことがあるだけはあるね。上手い」
肩慣らし程度の戦闘では本領発揮とはいかなかったため、スズコパーティの本当の実力を目の当たりにして、サエラも感心しきりである。
「オッケーです。今のうちにガンガンやっちゃってください!」
足止めに成功したゴリが声を上げると、攻撃開始である。
スキルによってガッツンにターゲットが集中し、それをゴリのスキルでダメージを軽減しながら時間稼ぎする。これが最近のスズコパーティの鉄板戦略である。
今回はミコトの魔法攻撃が上手く機能しないため、スズコの負担が大きくなるが、ハルマとサエラのサポートが入ることで全体として上手く回っていた。
スズコとファングによる近距離物理攻撃に、ズキンとヤタジャオースも加わり火力はじゅうぶん。更に、ハルマとニノエの弓、ハンゾウのブーメランによる遠距離物理攻撃も加わり、ガリガリとクライムソーサラーのHPは削られていく。
サエラも大楯を装備できるため、前衛と後衛の中間位置で流れ弾に近い攻撃を防ぐ役割を担っていた。
彼女がいなければ、ハルマも安心して攻撃に参加できなかっただろう。
ミコトも最初こそ回復に専念していたが、ニノエとピインも光魔法で回復に回れたため手が空くことがあり、補助系の魔法を使う余裕ができていた。
こうして、前衛、中衛、後衛がきれいに機能して、戦いは大きく崩れることもなく勝利で終わることになるのだった。
「いやー。さすがに楽勝だったね」
もともとスズコ達3人でも突破できた相手である。ハルマとサエラが加わることで強さが変わるわけでもなかったので、当然といえば当然の結果であった。
「本職の盾職の動き、勉強になりました。ちょっと、質問いいですか?」
サエラも盾は使うが、ソロプレイヤーとしての生存能力を高めるための道具にすぎないこともあり、仲間を守ることを意識して動くことは少ない。その点、ゴリは完全にパーティプレーによって培ってきた技術なので、根本的に役割が異なる。
サエラもニャル達と行動することが増えてきたこともあり、ゴリに戦い方をあれこれ質問している。
「うーん。サエラちゃん、うちのパーティに欲しいな」
ゴリとサエラのやり取りを少し離れた位置で眺めていたスズコがつぶやいたのを、ミコトは聞き逃さなかった。
「ふふふ。慌てない慌てない。今回のサエラちゃんのポジションは、ナツキちゃんとノジロー君にやってもらう予定でしょ?」
「まあ、そうだね。ふたりとも筋は良いから、夏までには仕上がるかな?」
「次こそは! だね」
「次こそは! だな」
次が何を意味するのかは、訊かずともわかっていた。
自分は出たくて出たことはなかったが、多くのプレイヤーにとって大きな目標であることは間違いない。そのことに、何となく居心地の悪さを感じてしまうハルマなのであった。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。


【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる