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第4章 不落魔王ここにあり
Ver.3/第43話
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『フルレイドクエスト/桜に巣食う悪魔たち』
『桜の古老樹に巣食う悪魔たちを撃退し、イースター・バニーたちのお茶会を無事に開催させてあげよう』
【クエスト達成報酬/????】
「なあ? イースターイベントの範囲なんだから、難易度は新規プレイヤー基準だよな?」
隣で同じくクエスト内容を確認していたユキチに尋ねる。
「さあ? ぼくもレイドボスいるのは知らなかったからねえ」
「確かに、新規プレイヤー向けのレイド戦だけど、フルレイドには違いないから、通常のミドルレイド並の強さらしいよ? だから、今回の人数だと、いくらモカさんがいたとしても、だいぶキツイ、というか無理ゲー。特に、こっちのパーティはけっこう初心者ばかりだから、あまり役に立てないかと……」
「あのー、わたし達のパーティもあんまり変わらないです。わたし以外、つい最近始めたばかり」
5人組のパーティのリーダーと、4人組のパーティのリーダーが、それぞれ説明してくれる。
先にレイドボスがいることを教えてくれた5人組のパーティのリーダーは、グダと名乗り、〈聖獣の門〉が開催されていた頃に始めたプレイヤーだった。それでも、ハルマよりもレベルは高く、かなりやり込んでいるようである。
連れている仲間は、グダよりも少し遅れて始めた友人ひとりと、最近始めた後輩3人で、前衛後衛バランス良くそろっているが、いかんせん経験が浅い。
4人組のパーティのリーダーはサエラと言って、女性ばかりの集団だった。
サエラは初期組だが、始めたばかりの他の3人に声をかけられ仲良くなり、先輩プレイヤーとして色々教えているところらしい。
今回は、たまたまイースター・バニーを見つけたので、イースター・エッグの確保のためにやって来たのだそうだ。
「ほー。こりゃ、なかなか厳しそうだね」
説明を聞いたモカは、なぜだか楽しそうである。
「モカさんの説明は不要として、ぼくも残念ながら2週間前に始めたばかりの新米プレイヤー。ツメがメインの近接タイプ。1対1なら、ある程度自信があるけど、このクエスト名からすると、たぶん数が多そうだから、どこまで役に立てるかわからないです。まー、でも、モカさんとハル君いれば、何とかなると思うので、よろしくです!」
ツメを両手に装備して、ウスッ! と、気合を入れてから頭を下げる。
「いや、モカさんひとりで一騎当千の頼もしさはあるけど、俺はただの生産職だぞ? まあ、俺の連れは強いので、ある程度期待してもらってもイイとは思うけど……」
どうやって自分のことを説明しようかと悩んでいたが、サエラが意を決したように尋ねてきた。
「あのー? もし違ったらごめんなさいね。ハルマさんって、あのハルマさんなんじゃないですか? グダさんは知らないみたいだったけど、不落魔王ハルマとモカさんって、第1回イベントで一緒に活躍してたから、顔馴染みだったとしても不思議じゃないし、何より、お連れの方の特徴が一致しすぎだし……」
サエラは、ハルマの側に控えるNPC達に視線を走らせる。
ここで即座に「いやー、よく言われるんですよ」とでも言えれば誤魔化しようもあったのかもしれないが、思わぬ言葉に返答に詰まってしまった。
それはすなわち、認めたようなものだった。
「え!? マジで!」
グダも驚きながら、まじまじとズキン達を観察し始めてしまう。
「あ、ああ……、えーと」
更に困った状況に陥ってしまったが、上手い切り返しは浮かばない。
「プッ! もう、白状しちゃいなさいよ。これから生死を共にする仲間だよ? 偶然一緒になっただけとはいえ、これも何かの縁だよ」
モカは吹き出しながら説得してきた。というか、もはや、これ自体が答えになってしまっていたのだが……。
「はあ……。わかりました。そうです。こんなのが不落魔王だなんて呼ばれていて、すみません」
ガクリと肩を落とし、観念するハルマなのだった。
『桜の古老樹に巣食う悪魔たちを撃退し、イースター・バニーたちのお茶会を無事に開催させてあげよう』
【クエスト達成報酬/????】
「なあ? イースターイベントの範囲なんだから、難易度は新規プレイヤー基準だよな?」
隣で同じくクエスト内容を確認していたユキチに尋ねる。
「さあ? ぼくもレイドボスいるのは知らなかったからねえ」
「確かに、新規プレイヤー向けのレイド戦だけど、フルレイドには違いないから、通常のミドルレイド並の強さらしいよ? だから、今回の人数だと、いくらモカさんがいたとしても、だいぶキツイ、というか無理ゲー。特に、こっちのパーティはけっこう初心者ばかりだから、あまり役に立てないかと……」
「あのー、わたし達のパーティもあんまり変わらないです。わたし以外、つい最近始めたばかり」
5人組のパーティのリーダーと、4人組のパーティのリーダーが、それぞれ説明してくれる。
先にレイドボスがいることを教えてくれた5人組のパーティのリーダーは、グダと名乗り、〈聖獣の門〉が開催されていた頃に始めたプレイヤーだった。それでも、ハルマよりもレベルは高く、かなりやり込んでいるようである。
連れている仲間は、グダよりも少し遅れて始めた友人ひとりと、最近始めた後輩3人で、前衛後衛バランス良くそろっているが、いかんせん経験が浅い。
4人組のパーティのリーダーはサエラと言って、女性ばかりの集団だった。
サエラは初期組だが、始めたばかりの他の3人に声をかけられ仲良くなり、先輩プレイヤーとして色々教えているところらしい。
今回は、たまたまイースター・バニーを見つけたので、イースター・エッグの確保のためにやって来たのだそうだ。
「ほー。こりゃ、なかなか厳しそうだね」
説明を聞いたモカは、なぜだか楽しそうである。
「モカさんの説明は不要として、ぼくも残念ながら2週間前に始めたばかりの新米プレイヤー。ツメがメインの近接タイプ。1対1なら、ある程度自信があるけど、このクエスト名からすると、たぶん数が多そうだから、どこまで役に立てるかわからないです。まー、でも、モカさんとハル君いれば、何とかなると思うので、よろしくです!」
ツメを両手に装備して、ウスッ! と、気合を入れてから頭を下げる。
「いや、モカさんひとりで一騎当千の頼もしさはあるけど、俺はただの生産職だぞ? まあ、俺の連れは強いので、ある程度期待してもらってもイイとは思うけど……」
どうやって自分のことを説明しようかと悩んでいたが、サエラが意を決したように尋ねてきた。
「あのー? もし違ったらごめんなさいね。ハルマさんって、あのハルマさんなんじゃないですか? グダさんは知らないみたいだったけど、不落魔王ハルマとモカさんって、第1回イベントで一緒に活躍してたから、顔馴染みだったとしても不思議じゃないし、何より、お連れの方の特徴が一致しすぎだし……」
サエラは、ハルマの側に控えるNPC達に視線を走らせる。
ここで即座に「いやー、よく言われるんですよ」とでも言えれば誤魔化しようもあったのかもしれないが、思わぬ言葉に返答に詰まってしまった。
それはすなわち、認めたようなものだった。
「え!? マジで!」
グダも驚きながら、まじまじとズキン達を観察し始めてしまう。
「あ、ああ……、えーと」
更に困った状況に陥ってしまったが、上手い切り返しは浮かばない。
「プッ! もう、白状しちゃいなさいよ。これから生死を共にする仲間だよ? 偶然一緒になっただけとはいえ、これも何かの縁だよ」
モカは吹き出しながら説得してきた。というか、もはや、これ自体が答えになってしまっていたのだが……。
「はあ……。わかりました。そうです。こんなのが不落魔王だなんて呼ばれていて、すみません」
ガクリと肩を落とし、観念するハルマなのだった。
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