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第4章 不落魔王ここにあり

Ver.3/第40話

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 ハンゾウとピインが増えたことで、シャムの上に全員乗るには少々手狭になってきた。そこで、道中はズキンがカラスになって、ハルマの肩の上で待機することになった。
 コナに揺られるモカを先頭に、〈大魔王イベント〉の中間発表のことを話しながら移動していく。
 ユキチは、ハルマとモカの両方に出て欲しいと思っているようだが、モカもあまり興味はないようだった。
 この辺は、出会った頃から変わらず、最強を目指すというよりも、ただただ思う存分暴れられればそれで良いというスタンスであるらしい。
 
「ぼくが聞いた話だと、森の中じゃなくて草原に出るらしいよ?」
 ウィンドレッドを抜けギャズエルに到着すると、ユキチに教えられる。
「あ!? そうなんだ? ピインが森の中にいたから、イースター・バニーも同じかと思ってたわ。そう言えば、新規プレイヤー向けなんだから、見晴らしの悪い場所に配置するはずないか……」
 転移オーブを使っての移動ではなかったため、ギャズエルに入っても込み合っている雰囲気はなかった。
 それでも時折、新規プレイヤーと思しき集団が、エリアボスを抜けて来ては歓喜の声を上げている。
 そういった集団の邪魔にならないように、そそくさと移動を再開させ、エリア中央に広がる草原地帯を目指すことになった。

「じゃあ、手分けして探そうか?」
 草原地帯に到着すると、ユキチから提案される。
「オッケー。あ、でも、どうしよう? パーティ組んだままでいいのかな?」
 ハルマもモカも単独行動には慣れている。ユキチも基本はソロプレイヤーであるものの、ふたりと比べるとまだまだの部分も多い。
 ただ、今回パーティを組んでいるのは、ユキチの借りているテイムモンスターが騎乗できるタイプではなかったため、トワネに乗る権限を与えることが目的だった。
 ハルマの仲間を分散して動かすにも限度がある。基本的にハルマの付属品に近い扱いであるため、離れすぎると瞬間移動でハルマの所まで戻ってきてしまうのだ。
「そっか。トワネちゃんに乗って探すとなると、ハル君からあんまり離れられないのか……。この辺のモンスターなら、ぼくひとりでも大丈夫だろうけど、念のために解散して、サポキャラとサポモン出しておこうか。ふたりと違って、普通にイースターエッグも集めたいし」
 ユキチのレベルは、すでにハルマと同じ31にまで上がっている。しかし、スキルや装備品は初心者の域を出ていないため、戦闘力という意味では頼りなさが残っているのだ。
 そのため、現在、ユキチが主に行っていることは金策であった。
 手持ちの所持金でもそれなりの装備品をそろえられるのだが、出回っている中級装備は飛ばして、上級装備を狙っているため、効果の低い部位は初期装備のままなのだ。しかし、そういった部分を上手く補助してくれるのがサポートNPCであり、サポートモンスターであった。
 こうして3人別行動となって、広い草原地帯を捜索することになった。
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