上 下
234 / 276
第4章 不落魔王ここにあり

Ver.3/第39話

しおりを挟む
 行き先は、ウィンドレッドの隣のエリア、ギャズエルに決まった。
 とはいえ、イースター・バニーがどこで出るかは不明な点も多いため、転移せずにスタンプの村から直接移動することになった。
「ぼくも早く騎乗できるテイムモンスター欲しいなあ」
 モカが相棒のティラノビーストのコナに騎乗し、ハルマもヒュージシャドースライムのシャムに乗り込んだところで、ユキチが羨ましそうにつぶやいた。
「ハハハ。こればかりは運だからね。でも、タロットカード集めは順調なんだろ?」
 ユキチ用にトワネを用意しながら問いかける。
「そうだけどお……。ハル君がトワネちゃん手に入れたの、ゲーム始めて1週間くらいだったんでしょ? ぼくが始めて、もう2週間以上だよ? 改めてハル君のエグさが分かってきたよ」
 ユキチの思わぬ反応に微苦笑を浮かべるしかない。確かに、2週間というタイミングでの話となると、レベルに関しては今のユキチの方がはるかに成長しているが、トワネどころか、ズキンまで居座り始めた時期である。
 加えて言えば、NPCだけでなく、MPポーションの作製も軌道に乗り、スタンプの村の開拓も終わっている頃だ。
「それは……、たまたまだから……。ところで、モカさんは始めて2週間くらいって、どんなプレーしてたんですか?」
 我ながら規格外だと自覚できるようになっているため、話を逸らす。
「んー? うち? その頃はたぶん、エリアボスに戦いを挑んでは死にまくってたかな? あ、いや、ちょうど初めてエリアボス倒した頃だね。懐かしいなー。これから向かう関所のボスだよ」
「「え!? 意外」」
「そお? うち、ゲームってあんまりやってこなかったから、勝手がわからなくてね。レベルの概念もよくわからない内から、とにかく全力で暴れたくて、エリアボスに戦いを挑みに行ったわけよ。そりゃ、当然、勝てるはずもないんだけど。負けても負けても同じエリアボスにだけ挑戦し続けてたら、何か色々スキル覚えて……。その時だっけな? 〈デュラハン〉覚えたの。違うか? エリアボスに勝った時に取得したんだっけ? それも違うか? あの頃に取ったのは取ったんだけどな。どのタイミングだったっけな?」
「え? ちょっと待ってください。その話ぶりだと、ゲーム始めて最初に戦ったのが、エリアボス?」
「そうだよ? っていうか、エリアボスに勝つまで、レベルが上がるシステム知らなかったもん」
「は!? え? レベル1で、エリアボスに勝ったってことですか!? ここのエリアボスって、まあまあ強い方だったはずじゃ?」
 疑問に対する答えを聞いて、更に疑問が生じたのはユキチも同様だった。
「いやー、勝てちゃうもんだよねえ。にゃっはっはっは。ああ、でも、レベルを上げると強くなるってわかってからは、ちゃんとレベル上げもやってるよ? まあ、本腰を入れてレベリングするのは苦手だけど」
 モカの屈託のない笑顔を見つめ、ユキチは死んだ魚のような目になっていた。
 ハルマも、モカのことを非常識扱いできない自覚があるため、下手に慰めることもできず「な、なんか……、ごめん」と、視線を逸らしながら告げることしかできないのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

売れない薬はただのゴミ ~伯爵令嬢がつぶれかけのお店を再生します~

薄味メロン
ファンタジー
周囲は、みんな敵。 欠陥品と呼ばれた令嬢が、つぶれかけのお店を立て直す。

高校では誰とも関わらず平穏に過ごしたい陰キャぼっち、美少女たちのせいで実はハイスペックなことが発覚して成りあがってしまう

電脳ピエロ
恋愛
中学時代の経験から、五十嵐 純二は高校では誰とも関わらず陰キャぼっちとして学校生活を送りたいと思っていた。 そのため入学試験でも実力を隠し、最底辺としてスタートした高校生活。 しかし純二の周りには彼の実力隠しを疑う同級生の美少女や、真の実力を知る謎の美人教師など、平穏を脅かす存在が現れ始め……。 「俺は絶対に平穏な高校生活を守り抜く」 そんな純二の願いも虚しく、彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。 やがて純二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。 実力を隠して平穏に過ごしたい実はハイスペックな陰キャぼっち VS 彼の真の実力を暴きたい美少女たち。 彼らの心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。

陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。

電脳ピエロ
恋愛
藤堂 薫は大学で共に行動している陽キャグループの男子2人、大熊 快児と蜂羽 強太から理不尽に追い出されてしまう。 ひとりで気ままに大学生活を送ることを決める薫だったが、薫が以前関わっていた陽キャグループの女子2人、七瀬 瑠奈と宮波 美緒は男子2人が理不尽に薫を追放した事実を知り、彼らと縁を切って薫と積極的に関わろうとしてくる。 しかも、なぜか今まで関わりのなかった同じ大学の美女たちが寄ってくるようになり……。 薫を上手く追放したはずなのにグループの女子全員から縁を切られる性格最悪な男子2人。彼らは瑠奈や美緒を呼び戻そうとするがことごとく無視され、それからも散々な目にあって行くことになる。 やがて自分たちが女子たちと関われていたのは薫のおかげだと気が付き、グループに戻ってくれと言うがもう遅い。薫は居心地のいいグループで楽しく大学生活を送っているのだから。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

処理中です...