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第3章 兎追いし
Ver.3/第35話
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「ちょっと待った」
思わず、相手の腕をつかんで引き留める。
自分でも理解が追いつかなかったこともあり、つかんでから「しまった」と、反射的に手を放していた。同時に、本来つかめないはずの腕をつかめたことにびっくりする。
……が。
「おや。つかまってしまったか。そうか。キミが長年、ワタシが待ち望んだ相手だったのだね」
初期装備の男は不思議そうに首を傾げると、感慨深げに数度頷いたかと思ったら、モザイクがかかっていくように姿を歪めながら姿を変えていく。
「「「「あ!?」」」」
ハルマだけでなく、ズキン、ニノエ、ハンゾウも口をそろえて驚いてしまう。
そこに現れたのが、先ほどまで追いかけていた、上品なジャケットを着たウサギだったからである。
直後、視界の中にアナウンスが表示された。
『クエスト/兎にも角にも鬼ごっこをクリアしました』
『クリア報酬として、光の大陸の森の守り神ピインとの盟約が結ばれました』
『詳細はなかまメニューから確認できますが、テイムモンスターと同じ扱いになります』
『特定の条件を満たすと、能力が解放されていきます』
「いやいやいや……。さすがの俺も、理解が追いつかねえぇ」
相手が、どうしてマリーのことがわかったのかは、これで謎が解けた。しかし、イースターイベントの一環だと思っていたクエストが、全く関係のないものだったことに目を白黒させてしまう。
「森の守り神?」
ハルマの言葉に、その場の全員がNPCらしくない表情を作り驚きを表現した。
「「森の守り神!? ということは、ピイン様なのですか!?」」
「おや? ワタシのことを知っているということは、キミ達はトワネとユララなのかい? ずいぶん、珍妙な姿になっているものだね。まあ、かくいうワタシも、今はこの程度の大きさの姿でないと、安定して維持できないのだけどね」
「じゃあ、ピインも、やっぱり魔王に?」
聞けば、ピインも魔王の手によって封印されてしまっているのだそうだ。
しかも、トワネやユララと違い、本体が封印されてしまっており、どこに自分の体があるのかもわからないらしい。
それでも、完全に封印される直前に、何とか魂と精神の一部を切り離し、逃げ出すことに成功しているところを見ると、それなりに優秀な神だったのであろう。
ただ、本来のちからの一部しか切り離せなかったために、非常に力が弱まっているとのことだ。
トワネとユララの話からすると、ズキンの父であるカルラよりも森の守り神としては経験が長く、同じ森の守り神でありながら、格上の存在であるようだ。
「しかし、良かった。ワタシが力を貸すのに、相応しい御仁を見つけることができて。まさか、いたずら天使と心を通わせる者がいるとは、考えてもいなかった。いやはや、僥倖、僥倖」
ウサギの愛らしい姿に似つかわしくない口調に、微苦笑が浮かんでしまうが、ハルマも、この出会いは僥倖だったのだと思うしかなかった。
こうして、春の訪れに合わせて、エルシア、ハンゾウだけでなく、光の大陸の森の守り神ピインが、新たにハルマの仲間に加わったのだった。
思わず、相手の腕をつかんで引き留める。
自分でも理解が追いつかなかったこともあり、つかんでから「しまった」と、反射的に手を放していた。同時に、本来つかめないはずの腕をつかめたことにびっくりする。
……が。
「おや。つかまってしまったか。そうか。キミが長年、ワタシが待ち望んだ相手だったのだね」
初期装備の男は不思議そうに首を傾げると、感慨深げに数度頷いたかと思ったら、モザイクがかかっていくように姿を歪めながら姿を変えていく。
「「「「あ!?」」」」
ハルマだけでなく、ズキン、ニノエ、ハンゾウも口をそろえて驚いてしまう。
そこに現れたのが、先ほどまで追いかけていた、上品なジャケットを着たウサギだったからである。
直後、視界の中にアナウンスが表示された。
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『特定の条件を満たすと、能力が解放されていきます』
「いやいやいや……。さすがの俺も、理解が追いつかねえぇ」
相手が、どうしてマリーのことがわかったのかは、これで謎が解けた。しかし、イースターイベントの一環だと思っていたクエストが、全く関係のないものだったことに目を白黒させてしまう。
「森の守り神?」
ハルマの言葉に、その場の全員がNPCらしくない表情を作り驚きを表現した。
「「森の守り神!? ということは、ピイン様なのですか!?」」
「おや? ワタシのことを知っているということは、キミ達はトワネとユララなのかい? ずいぶん、珍妙な姿になっているものだね。まあ、かくいうワタシも、今はこの程度の大きさの姿でないと、安定して維持できないのだけどね」
「じゃあ、ピインも、やっぱり魔王に?」
聞けば、ピインも魔王の手によって封印されてしまっているのだそうだ。
しかも、トワネやユララと違い、本体が封印されてしまっており、どこに自分の体があるのかもわからないらしい。
それでも、完全に封印される直前に、何とか魂と精神の一部を切り離し、逃げ出すことに成功しているところを見ると、それなりに優秀な神だったのであろう。
ただ、本来のちからの一部しか切り離せなかったために、非常に力が弱まっているとのことだ。
トワネとユララの話からすると、ズキンの父であるカルラよりも森の守り神としては経験が長く、同じ森の守り神でありながら、格上の存在であるようだ。
「しかし、良かった。ワタシが力を貸すのに、相応しい御仁を見つけることができて。まさか、いたずら天使と心を通わせる者がいるとは、考えてもいなかった。いやはや、僥倖、僥倖」
ウサギの愛らしい姿に似つかわしくない口調に、微苦笑が浮かんでしまうが、ハルマも、この出会いは僥倖だったのだと思うしかなかった。
こうして、春の訪れに合わせて、エルシア、ハンゾウだけでなく、光の大陸の森の守り神ピインが、新たにハルマの仲間に加わったのだった。
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