魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり

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第2章 謎は霧の中に

Ver.3/第21話

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「うへぇ。この中からカギを探さないとダメなのか?」
 動けるようになってすぐ、ハルマは周囲を見渡したかと思ったら、即座に出口に向かっていた。
「開かない、か」
 シュンと同じく、机の上の宝箱には気づいていたが、本当にカギが必要なのかを確かめたのだ。警戒しなければならないことは、実はカギは閉められておらず、時間を無駄に費やすことだからだ。
 これは、何もハルマに限った行動ではない。同じ頃、チップとユキチも真っ先に確かめているからである。
 しかし、ここからが少し違ってくる。
「このカギ、自力で開けられないかな? 使えるものは何でも使って良いって言ってたし」
 謎解きゲームの根底を真っ先に無視しようと試み始めたのだ。
「カギ穴があるからには、ピッキング的な方法で開けられそうなんだよなあ。しかも、俺のDEXがあれば、わりと成功率高そうだし……」
 そう言うと、インベントリの中で使えそうな物を探し出す。
「お! いけそう」
 取り出したのは、素材として使う〈アンダーラビットのヒゲ〉という竹串くらいのサイズがある、金属並みの強度があるヒゲだった。
 とはいえ、ピッキングの技術などない。実生活でも体験したことがない以上、いくらDEXが人並み外れて高くとも、一朝一夕にできることではなかった。
「うーん。いけそうな手応えはあるんだけどなあ……」
 カチャカチャ鍵穴をいじっていたが、カギが開く気配はない。そうしていると、唯一連れて来れたマリーが声をかけてきた。
「何して遊んでるの?」
「別に遊んでるわけじゃないよ。カギが開けられないかな? って思って、試してるんだよ」
「ふーん。マリーが開けてあげようか?」
 思わぬ言葉に、一瞬、沈黙が訪れる。

 ……。

「開けられるの?」
「はい」
 ハルマの問いに、マリーは腕を扉に突っ込み、手探りで何かを探し当てたかと思ったら、カチャリとカギが開けられた音が返ってきた。
「なるほど、ね。便利な体だこと。ありがとう」
「えへへ。どういたしまして」
 マリーはゴーストの体を活かして扉をすり抜け、物理的に外からカギを開けてしまったのである。すり抜けようと思えばすり抜けられるし、触ろうと思えば触れるという、彼女ならではの芸当である。
 そうして、謎を一切解くことなく、部屋から出ることに成功することになるハルマだったが、その前にひとつ、アナウンスが表示された。
「ありゃ? この方法じゃマズかったか?」
 一瞬だけ警戒したが、全く意図しないアナウンスであった。

『スキル〈開錠Ⅰ〉を取得しました』
『ピッキングツールを使うことで、レベル1までのカギを開けることができるようになりました(DEXによって成功率が変化)』
『〈開錠Ⅰ〉専用レシピを覚えました』
『DEXが常時25増える』
【取得条件/規定値以上のDEXの時、本来とは違う方法でカギを開ける】

「お!? ラッキー。またマリーのおかげでスキル増えた。さーて、さくさく進みますか」
 思わぬスキル取得に、鼻歌混じりに部屋を出るハルマなのだった。
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