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第2章 謎は霧の中に
Ver.3/第16話
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ハルマ達一行が向かったのは、ダークッタンである。
闇の大陸の初期エリアであるが、ユキチはともかく、モヤシのレベルは20に到達したばかりであるので、エリアボスを越えるのは危険であろうという判断になっていた。
むろん、モヤシひとりでも次のエリアに進めるレベルである。加えて、こういう新規プレイヤーのために〈冒険者ギルド〉と〈モンスター牧場〉が追加されているので、先輩プレイヤーが手を貸す必要もなくなっている。実際、ユキチとモヤシも、〈モンスター牧場〉でテイムモンスターを借りてきているので、かなりの大所帯となっていた。
ただし、今回は村にできそうな場所が限られていることの方が大きかった。
「この先に廃村なんてあったか?」
チップはトワネに揺られながら訊いてきた。トワネの上には、チップ達とユキチが乗っており、ハルマとモヤシはシャムでの移動である。こちらには、ふたりだけでなくズキンとニノエも一緒で、ヤタジャオースとユララは宙を飛んでの移動となっている。
「いや。俺も廃村なのかよくわからん。とりあえず、所有地にできても、村として認定されるまでは移動が面倒だから、一番近いところから行ってみるだけ。もしかしたら、別のイベント用かもしれないからチップ達も誘ったんだよ」
「ああ……。そういうことね」
「ねえ? ハル君。ってことは、候補地は他にもあるの?」
チップ達も詳細は聞かされていないが、ユキチは尚更知らされていない。
「いくつかあるぞ? でも、スタンプの村だけでも手一杯だから、下手に他の所を見つけちゃうと面倒なことになりそうだから、試してないんだよ」
マリーに切り株のあった場所が故郷だと教えられ、村を作ってからは、採取のためにあちこちを巡る時に気にかけるようになっていた。結果、火の大陸以外の初期エリアで、所有地に出来そうな場所をいくつか見つけていたのだ。ウィンドレッドのエリアにもあるのだが、そこはかなりの僻地のため、時間の都合で見送っていた。
出発した時間も悪かったのだろうが、基本的に時間帯を気にせず動き回るのがプレイヤーであるため、目的地に到着すると辺りはすっかり夜になっていた。
森の中にぽっかりできた広場は、あちこちに倒壊寸前の家屋が並び、薄っすらと霧が立ち込めている。
「はー。やっぱり、オレ達も騎乗できるテイムモンスター欲しいなあ」
チップはトワネから降り、労いの言葉をかけると独り言ちる。チップの相棒はリザードマンであるし、アヤネの相棒はミズチ、シュンの相棒はサンドマンで、どれも騎乗できるタイプではなかった。ただ、アヤネの相棒であるミズチのカルムは、もう少し大きくなれば移動に使えるようになりそうな気配があった。
「あれ? あんな建物あったっけな?」
チップがトワネの頭をなでながら全員が降りるのを待っていると、ハルマは前回通った時には見かけなかった建物があることに気づいていた。
「ん? どうしたんだ?」
「いや。あっちに大きな洋館があるだろ? あれ、前に何度か通った時には、なかったと思うんだよな。あんだけ目立つ建物なら覚えてるはずだけど、記憶にない」
夜の闇と霧のせいでシルエットしか確認できないが、ハルマの示す方向に廃墟とは思えないサイズの屋敷が建っていることが確認できたのだ。
「ホントだな。オレもこんなところにダンジョンあるとは聞いた記憶がないな。まあ、初期エリアの探索って、ほとんどやってないから、もしかしたら情報出てるのかもしれないけど」
「んー? いやー。ぼくも初期エリアの情報はけっこうチェックしてるけど、見た記憶ないよ?」
ユキチは額に手を当てながら、目を凝らして洋館を眺めている。
「あ、あのー? ハルマさん? どうしましょう?」
今回の主役であるモヤシは、戸惑いを隠せない様子である。
「どうしようかね?」
ハルマも想定外のため、判断に困る。
……が。
「そりゃ、行くっしょ」
「行くに決まってるじゃん」
チップとユキチは、ほぼ同時に答えるのだった。
闇の大陸の初期エリアであるが、ユキチはともかく、モヤシのレベルは20に到達したばかりであるので、エリアボスを越えるのは危険であろうという判断になっていた。
むろん、モヤシひとりでも次のエリアに進めるレベルである。加えて、こういう新規プレイヤーのために〈冒険者ギルド〉と〈モンスター牧場〉が追加されているので、先輩プレイヤーが手を貸す必要もなくなっている。実際、ユキチとモヤシも、〈モンスター牧場〉でテイムモンスターを借りてきているので、かなりの大所帯となっていた。
ただし、今回は村にできそうな場所が限られていることの方が大きかった。
「この先に廃村なんてあったか?」
チップはトワネに揺られながら訊いてきた。トワネの上には、チップ達とユキチが乗っており、ハルマとモヤシはシャムでの移動である。こちらには、ふたりだけでなくズキンとニノエも一緒で、ヤタジャオースとユララは宙を飛んでの移動となっている。
「いや。俺も廃村なのかよくわからん。とりあえず、所有地にできても、村として認定されるまでは移動が面倒だから、一番近いところから行ってみるだけ。もしかしたら、別のイベント用かもしれないからチップ達も誘ったんだよ」
「ああ……。そういうことね」
「ねえ? ハル君。ってことは、候補地は他にもあるの?」
チップ達も詳細は聞かされていないが、ユキチは尚更知らされていない。
「いくつかあるぞ? でも、スタンプの村だけでも手一杯だから、下手に他の所を見つけちゃうと面倒なことになりそうだから、試してないんだよ」
マリーに切り株のあった場所が故郷だと教えられ、村を作ってからは、採取のためにあちこちを巡る時に気にかけるようになっていた。結果、火の大陸以外の初期エリアで、所有地に出来そうな場所をいくつか見つけていたのだ。ウィンドレッドのエリアにもあるのだが、そこはかなりの僻地のため、時間の都合で見送っていた。
出発した時間も悪かったのだろうが、基本的に時間帯を気にせず動き回るのがプレイヤーであるため、目的地に到着すると辺りはすっかり夜になっていた。
森の中にぽっかりできた広場は、あちこちに倒壊寸前の家屋が並び、薄っすらと霧が立ち込めている。
「はー。やっぱり、オレ達も騎乗できるテイムモンスター欲しいなあ」
チップはトワネから降り、労いの言葉をかけると独り言ちる。チップの相棒はリザードマンであるし、アヤネの相棒はミズチ、シュンの相棒はサンドマンで、どれも騎乗できるタイプではなかった。ただ、アヤネの相棒であるミズチのカルムは、もう少し大きくなれば移動に使えるようになりそうな気配があった。
「あれ? あんな建物あったっけな?」
チップがトワネの頭をなでながら全員が降りるのを待っていると、ハルマは前回通った時には見かけなかった建物があることに気づいていた。
「ん? どうしたんだ?」
「いや。あっちに大きな洋館があるだろ? あれ、前に何度か通った時には、なかったと思うんだよな。あんだけ目立つ建物なら覚えてるはずだけど、記憶にない」
夜の闇と霧のせいでシルエットしか確認できないが、ハルマの示す方向に廃墟とは思えないサイズの屋敷が建っていることが確認できたのだ。
「ホントだな。オレもこんなところにダンジョンあるとは聞いた記憶がないな。まあ、初期エリアの探索って、ほとんどやってないから、もしかしたら情報出てるのかもしれないけど」
「んー? いやー。ぼくも初期エリアの情報はけっこうチェックしてるけど、見た記憶ないよ?」
ユキチは額に手を当てながら、目を凝らして洋館を眺めている。
「あ、あのー? ハルマさん? どうしましょう?」
今回の主役であるモヤシは、戸惑いを隠せない様子である。
「どうしようかね?」
ハルマも想定外のため、判断に困る。
……が。
「そりゃ、行くっしょ」
「行くに決まってるじゃん」
チップとユキチは、ほぼ同時に答えるのだった。
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