210 / 276
第2章 謎は霧の中に
Ver.3/第15話
しおりを挟む
「それで? 何でユキチちゃんもついてくるんだ?」
立て続けに新たな出会いがあったハルマだが、今回一緒に行動することになったのは、チップ達パーティとモヤシ。それに加えてユキチだった。
目的は、モヤシが希望した〈大工の心得〉の取得である。
春休みに入り、本格的に育成を始めたユキチとモヤシだったが、ユキチはモカのスタイルに近いソロプレーを選択し、モヤシは生産職をメインに遊んでいくつもりのようだ。
ユキチのソロプレー選択にアヤネはぶーぶー文句を言っていたが、たまには一緒に遊んであげるからという譲歩を引き出し、何とか機嫌を直していたのはここだけの話である。
戦闘に関しては有益な情報を持っていない自覚があるハルマだが、生産職としての知識はトップレベルにあると自負している。モヤシも、そんなハルマの教えを受け、メキメキと上達していた。
ただ、生産職の基礎〈錬金〉〈調合〉〈木工〉〈裁縫〉〈鍛冶〉〈魔加術〉〈細工〉のスキルを一通り取得した後は、ハルマの家に置いてある職人設備を使って比較的自由に遊ばせており、全てを教える、というやり方はとっていない。
職人の醍醐味は、自分で気づき見つけることにあるとハルマ自身が感じているからだ。そのため、モヤシから質問された時にヒントだけ教えるということが多かった。それでも、自ら生産職を選択するだけあり、モヤシの筋は良く、また、ゲーム慣れしていることもあり、システムに馴染むのも早かった。
そうやって、ある程度職人の腕を上げたところで、モヤシは自立を考えるようになっていた。
つまりは、スタンプの村ではなく、自分の村を持ちたいと思うようになっていたのだ。
そうなると〈大工の心得〉が必要となるのだが、そこで困ったことが起こったのである。
「〈大工の心得〉って、どこからが取得のフラグなんだ?」
スキル取得の条件はある程度知っている。知っているのだが、自分が通ってきた道のりを考えると、はて? と、なってしまったのだ。
直接スキルを取得したのは、家を作った段階である。
しかし、家を作るには大工道具が必要であり、大工道具の獲得には図書館で本を読む必要があった。そうなると、本を読むために文字が読めるようにならなければならないのだが、ここで困ったことになる。
文字が読めるようになる条件がわからないのである。
時間をかけて本とにらめっこしていれば、おそらく読めるようになるのだろうが、それに何時間費やさなければならないのかが、さっぱりわからなかったのだ。
本を読む工程をすっ飛ばして、直接大工道具をもらえないか試してみたが、やはり本を読むというフラグを立てなければもらうことはできないらしく、お菓子屋でモヤシが話しかけても、怪訝な顔をされるだけで終わってしまった。
ならば、地道に文字を読めるように勧めるべきなのだろうが、ハルマという先駆者がいるからこそ試せることがあったのだ。
「だって。ハル君が何か試してみるんでしょ? 面白そうじゃん」
ユキチは両手を後頭部に回しながらチラリと視線を向けてきた。
「別に、特別珍しいことじゃないぞ? 俺が作った大工用のアイテムを使ってもらうだけだから」
最初に〈大工の心得〉で覚えることができるレシピの中には、大工専用の道具である〈大きな木づち〉も含まれているのだ。これは、発展可能なレシピであり、ハルマが現在使っているものも初期の〈大きな木づち〉ではなく〈じょうぶな木づち〉という上位種であった。
今回は、ハルマの作った〈大きな木づち〉をモヤシに譲渡して使わせることで、〈大工の心得〉が取得できるのかを試すことが目的であったのだ。
立て続けに新たな出会いがあったハルマだが、今回一緒に行動することになったのは、チップ達パーティとモヤシ。それに加えてユキチだった。
目的は、モヤシが希望した〈大工の心得〉の取得である。
春休みに入り、本格的に育成を始めたユキチとモヤシだったが、ユキチはモカのスタイルに近いソロプレーを選択し、モヤシは生産職をメインに遊んでいくつもりのようだ。
ユキチのソロプレー選択にアヤネはぶーぶー文句を言っていたが、たまには一緒に遊んであげるからという譲歩を引き出し、何とか機嫌を直していたのはここだけの話である。
戦闘に関しては有益な情報を持っていない自覚があるハルマだが、生産職としての知識はトップレベルにあると自負している。モヤシも、そんなハルマの教えを受け、メキメキと上達していた。
ただ、生産職の基礎〈錬金〉〈調合〉〈木工〉〈裁縫〉〈鍛冶〉〈魔加術〉〈細工〉のスキルを一通り取得した後は、ハルマの家に置いてある職人設備を使って比較的自由に遊ばせており、全てを教える、というやり方はとっていない。
職人の醍醐味は、自分で気づき見つけることにあるとハルマ自身が感じているからだ。そのため、モヤシから質問された時にヒントだけ教えるということが多かった。それでも、自ら生産職を選択するだけあり、モヤシの筋は良く、また、ゲーム慣れしていることもあり、システムに馴染むのも早かった。
そうやって、ある程度職人の腕を上げたところで、モヤシは自立を考えるようになっていた。
つまりは、スタンプの村ではなく、自分の村を持ちたいと思うようになっていたのだ。
そうなると〈大工の心得〉が必要となるのだが、そこで困ったことが起こったのである。
「〈大工の心得〉って、どこからが取得のフラグなんだ?」
スキル取得の条件はある程度知っている。知っているのだが、自分が通ってきた道のりを考えると、はて? と、なってしまったのだ。
直接スキルを取得したのは、家を作った段階である。
しかし、家を作るには大工道具が必要であり、大工道具の獲得には図書館で本を読む必要があった。そうなると、本を読むために文字が読めるようにならなければならないのだが、ここで困ったことになる。
文字が読めるようになる条件がわからないのである。
時間をかけて本とにらめっこしていれば、おそらく読めるようになるのだろうが、それに何時間費やさなければならないのかが、さっぱりわからなかったのだ。
本を読む工程をすっ飛ばして、直接大工道具をもらえないか試してみたが、やはり本を読むというフラグを立てなければもらうことはできないらしく、お菓子屋でモヤシが話しかけても、怪訝な顔をされるだけで終わってしまった。
ならば、地道に文字を読めるように勧めるべきなのだろうが、ハルマという先駆者がいるからこそ試せることがあったのだ。
「だって。ハル君が何か試してみるんでしょ? 面白そうじゃん」
ユキチは両手を後頭部に回しながらチラリと視線を向けてきた。
「別に、特別珍しいことじゃないぞ? 俺が作った大工用のアイテムを使ってもらうだけだから」
最初に〈大工の心得〉で覚えることができるレシピの中には、大工専用の道具である〈大きな木づち〉も含まれているのだ。これは、発展可能なレシピであり、ハルマが現在使っているものも初期の〈大きな木づち〉ではなく〈じょうぶな木づち〉という上位種であった。
今回は、ハルマの作った〈大きな木づち〉をモヤシに譲渡して使わせることで、〈大工の心得〉が取得できるのかを試すことが目的であったのだ。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。


【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる