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第2章 謎は霧の中に
Ver.3/第13話
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「ちょっと待った。確か、昨日始めたって言ってなかったか?」
待ち合わせ場所に到着し、アヤネの妹のユキチを紹介された後の第一声である。
「ん? そうだよ?」
ユキチも、ハルマとは面識があるので緊張感はまるでない。それどころか、アヤネ以上に慣れた雰囲気まで漂わせているくらいである。
小柄なアヤネよりも更に小柄であり、ボーイッシュな見た目である。腰に装備用のツメをぶら下げているところを見ると、武闘家タイプを選択したらしい。
「なんで、もうレベル20越えてるんだよ?」
ユキチの傍らに見覚えのないテイムモンスターが佇んでいることに気づき、ユキチを調べてみると、すでにレベルが21になっていることがわかったのだ。どうやら、追加されたばかりの〈モンスター牧場〉を早速利用したらしい。
「あー。そのことか。英才教育って、怖いよねえ。ま、ぼくも半年以上もお預け食らってたからね。止まらなくって」
ユキチは納得した表情を作って視線を近くのチップに向けると、てへっと笑みを浮かべた。
「なるほど。そういうことか。にしても、1日でそこまで上がるものなんだな」
「いやー。ユキチちゃんは昔からガチゲーマー気質だろ? 教え甲斐があるから、つい……。まあ、でも、最近じゃ1日2日でこれくらいは、けっこう普通だぜ?」
「そうなのか? 俺がレベル20越えたのって、確か〈ゴブリン軍の進撃〉の防衛戦の頃だから、ゲーム始めて1か月くらいしてからだぞ?」
「いや……、ハルマ。さすがにそれは、遅すぎだから」
ハルマの言葉に、チップだけでなくシュンとアヤネも苦笑いを浮かべる。
「でも、そんなハル君が大魔王候補筆頭なんでしょ?」
ユキチは一瞬にして羨望の眼差しを作り、ハルマに向けていた。
「いやいや。その辺のことは、ある程度みんなから聞いてるんだろ? 俺じゃあ無理だよ。それに初日の集計見ただろ? 人気が集中してるのは、ほとんど有名な動画配信者の人ばかりだから、俺が選ばれることもないだろうさ。それより、ユキチちゃんもスタンプの村に行こうか」
これが本日の顔合わせの最大の目的であった。
チップ達もスタンプの村の住人であるが、土地の設定は管理者しか権限を有していないため、ハルマの許可が必要なのだ。
また、管理者だからと一方的に権利を押し付けることもできず、相互の合意が必要になる。これには直接会ってやり取りを行う必要はないのだが、フレンド登録は直接会うのが手っ取り早いため、今回の顔合わせが企画されたのだ。
ハルマをリーダーにしてパーティを組み直し、転移オーブで移動する。
「へえー。この子がマリーちゃんね。お姉ちゃんが興奮してたのも、納得の可愛さだわ」
スタンプの村に到着して、それまで我慢していたアヤネがマリーにだらしない笑みを向けているのを横目に、ユキチは呆れた表情を作りながらも、手を振って挨拶している。
マリーも初めて見る相手に、興味津々な様子である。
「もー、何言ってるのよ。マリーちゃんもかわいいけど、一番かわいいのはユキチちゃんなのは変わらないんだからね!」
だらしない笑みを一瞬で引っ込めてキリッとした表情になると、アヤネはユキチを抱きしめようと動き出す。ただ、プレイヤー同士であっても接触はできないため、ユキチにするりと逃げられて終わってしまう。
「もー。つれないなぁ。お姉ちゃんは悲しいぞお」
「はいはい。お姉ちゃんはマリーちゃん達と和んでなさい。ぼくは村を案内してもらうから」
ユキチの対応にアヤネが頬を膨らませていると、ふと、何かに気づき、視線を向ける。
釣られて、その場の全員がそちらに視線を向けていた。
「ああ。スズねえ達か」
近寄って来たのはこの村の住人であり、チップの実姉であるスズコのパーティだった。
待ち合わせ場所に到着し、アヤネの妹のユキチを紹介された後の第一声である。
「ん? そうだよ?」
ユキチも、ハルマとは面識があるので緊張感はまるでない。それどころか、アヤネ以上に慣れた雰囲気まで漂わせているくらいである。
小柄なアヤネよりも更に小柄であり、ボーイッシュな見た目である。腰に装備用のツメをぶら下げているところを見ると、武闘家タイプを選択したらしい。
「なんで、もうレベル20越えてるんだよ?」
ユキチの傍らに見覚えのないテイムモンスターが佇んでいることに気づき、ユキチを調べてみると、すでにレベルが21になっていることがわかったのだ。どうやら、追加されたばかりの〈モンスター牧場〉を早速利用したらしい。
「あー。そのことか。英才教育って、怖いよねえ。ま、ぼくも半年以上もお預け食らってたからね。止まらなくって」
ユキチは納得した表情を作って視線を近くのチップに向けると、てへっと笑みを浮かべた。
「なるほど。そういうことか。にしても、1日でそこまで上がるものなんだな」
「いやー。ユキチちゃんは昔からガチゲーマー気質だろ? 教え甲斐があるから、つい……。まあ、でも、最近じゃ1日2日でこれくらいは、けっこう普通だぜ?」
「そうなのか? 俺がレベル20越えたのって、確か〈ゴブリン軍の進撃〉の防衛戦の頃だから、ゲーム始めて1か月くらいしてからだぞ?」
「いや……、ハルマ。さすがにそれは、遅すぎだから」
ハルマの言葉に、チップだけでなくシュンとアヤネも苦笑いを浮かべる。
「でも、そんなハル君が大魔王候補筆頭なんでしょ?」
ユキチは一瞬にして羨望の眼差しを作り、ハルマに向けていた。
「いやいや。その辺のことは、ある程度みんなから聞いてるんだろ? 俺じゃあ無理だよ。それに初日の集計見ただろ? 人気が集中してるのは、ほとんど有名な動画配信者の人ばかりだから、俺が選ばれることもないだろうさ。それより、ユキチちゃんもスタンプの村に行こうか」
これが本日の顔合わせの最大の目的であった。
チップ達もスタンプの村の住人であるが、土地の設定は管理者しか権限を有していないため、ハルマの許可が必要なのだ。
また、管理者だからと一方的に権利を押し付けることもできず、相互の合意が必要になる。これには直接会ってやり取りを行う必要はないのだが、フレンド登録は直接会うのが手っ取り早いため、今回の顔合わせが企画されたのだ。
ハルマをリーダーにしてパーティを組み直し、転移オーブで移動する。
「へえー。この子がマリーちゃんね。お姉ちゃんが興奮してたのも、納得の可愛さだわ」
スタンプの村に到着して、それまで我慢していたアヤネがマリーにだらしない笑みを向けているのを横目に、ユキチは呆れた表情を作りながらも、手を振って挨拶している。
マリーも初めて見る相手に、興味津々な様子である。
「もー、何言ってるのよ。マリーちゃんもかわいいけど、一番かわいいのはユキチちゃんなのは変わらないんだからね!」
だらしない笑みを一瞬で引っ込めてキリッとした表情になると、アヤネはユキチを抱きしめようと動き出す。ただ、プレイヤー同士であっても接触はできないため、ユキチにするりと逃げられて終わってしまう。
「もー。つれないなぁ。お姉ちゃんは悲しいぞお」
「はいはい。お姉ちゃんはマリーちゃん達と和んでなさい。ぼくは村を案内してもらうから」
ユキチの対応にアヤネが頬を膨らませていると、ふと、何かに気づき、視線を向ける。
釣られて、その場の全員がそちらに視線を向けていた。
「ああ。スズねえ達か」
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