魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり

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第1章 新たな一歩

Ver.3/第7話

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「ハルマ君、ね。あの不落魔王と同じ名前とは、覚えやすい」
 ツルハシのレシピを教わった後で自己紹介を互いに済ませると、フレンド登録を行うことになった。
「あ、あはははは……。よくある名前ですけどね。あれ? でも、マカリナさんも聞いたことあるような?」
 フレンド一覧に新たに加わった少女の名前を確認して、記憶を辿る。
「あ、いや……。珍しいこともあるものだよね。〈魔王イベント〉で全勝したプレイヤーと同じ名前同士の生産職なんて」
「あー、はいはい。そうだ。あの見たことない武器を使って全勝した人と同じ名前なのか」
 マカリナはカード型の投擲武器を使い、召喚スキルも合わせて戦う一風変わったプレイヤーだった。ただ、どういうスキルなのかは謎に包まれ、ハルマと違い、安定した戦いぶりというイメージではなかった。
「有名プレイヤーと名前が同じだと苦労も多いでしょ? だから、あたしのことはリナって呼んでもらった方が助かるかな? 仲間からも、そう呼ばれてるし」
「そうなんですね。わかりました。俺は、ハルマでもハルでも、どっちでもいいですよ」
「オッケー、ハルね。それと、敬語も気にしなくていいよ。同い年みたいだし」
「あ、そうなんだ。了解。じゃ、ツルハシできたら、使い魔に伝言飛ばせばいいかな?」
「そうね。だいたいログインしてることが多いけど、使い魔の方が手っ取り早いかな? お願いするわ。素材は、どうする?」
「あー。それは気にしなくていいよ。レシピを探す手間が省けたお礼ってことで」
「いいの? あたしとしても〈細工〉のランク上げる手間が省けたから、儲けものなんだけど」
「いいの、いいの。気にしないで。俺、わりとゴールドには余裕があるし、採取も趣味みたいなものだから負担にならないからさ」
「そうなのね。じゃ、お言葉に甘えて……。それにしても、あたし以外でツルハシ必要としてるプレイヤーに出会うとは思わなかったわ。何に使うか、聞いてもいい?」
「ん? 俺は〈発見〉のスキルが成長して、採掘ポイント見つけられるようになったから、それで、だけど。リナは?」
「え!? 〈発見〉って、成長したら採掘ポイント見つけられるの? あたしも〈発見Ⅳ〉まで成長してるけど、覚えてないわよ? ハルって、けっこうなガチ職人なのね……。あたしは、単純にツルハシ手に入れたら、〈採掘〉ってスキルが取得できるんじゃないかな? って思っただけ。〈鍛冶〉やってると、鉱石系の素材すぐなくなるでしょ? このエリアに来てみたら鉱山だらけじゃない。これは、自分で掘らない訳にはいかない! って思ったのよ」
「なるほど……。そういうアプローチもあるのか。確かに〈採掘〉のスキルはありそうだし、それ取得したら採掘ポイントも見つけられるようになるかも」
「でしょ? でも、良いこと聞けた。〈採掘〉のスキルが取得できなくても、〈発見〉育てていったら、いつかは採掘ポイントは見つけられるのよね? 最悪、ハルにお願いすれば良さそうだし」
 マカリナの笑みは、どことなくモカに近い無邪気なものに感じられた。
「ハハハハハ。〈発見〉を成長させるのは、けっこう大変かもよ? とりあえず、早いところツルハシ作ってみるよ。〈採掘〉のスキルがあるといいな」
「そうね。ま、でも、そんなに急がなくても大丈夫だからね。春休みまでに準備してもらえたら、助かるけど」
「オッケー。俺はそんなに戦闘ガンガンするタイプじゃないから、そんなに待たせずに作れると思うよ」
 そうやって、この日はここで別れることになり、ハルマはすぐに自宅に戻ってツルハシの作製に取り掛かるのだった。
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