171 / 276
第9章 魔除けのペンダント
Ver.2/第72話
しおりを挟む
ウィンドレッドに到着し、馴染みとも呼べるカフェに向かう。
この店のマスターであるウィリアムが、今回のクエストの届け先だ。
「あ! ダイバーさんだ!」
店が見えてくると、見慣れた不審人物が寛いでいるのが目に入り、マリーが飛んでいく。
シルクハットに真っ白なチョビ髭、目元を隠すマスクと全身を覆うマント。ハルマの〈手品〉の師匠であるNPCであり、マリーと出会うキッカケを作った人物でもある。
マリーに気づいたダイバーは、仮面でよくわからないながらも、穏やかな笑みを浮かべ手を振ってきた。
「やあ、マリー。元気にしてたかい?」
「うん! ハルマのおかげで毎日楽しいよ! ラフも大活躍してるよ!」
「おお、おお。それは良かった」
すっかり祖父と孫の様相である。
「お久しぶりです。ダイバーさん」
ハルマも遅れて到着すると、頭を下げる。
「はい、お久しぶりです。マリーも楽しくやれているようで、何よりです」
「ははは……。確かに、楽しくやってますね。トラブルも多いですけど」
「ほっほっほ。それは、この子の本分ですからね。調子が良い証拠ですよ。ところでハルマさん。手品の腕前も上がっているようです。新しい手品をお教えしますよ。今回から、ちょっと大掛かりなものを紹介しましょう」
そういうと、ダイバーはカバンの中からいくつかのアイテムを取り出し、ハルマに渡してきた。
『スキル〈手品Ⅱ〉が〈手品Ⅲ〉に成長し、〈奇術Ⅰ〉に進化しました』
『新しい奇術専用道具のレシピを覚えました』
『DEXが常時90増える』
【取得条件/規定値以上のDEXで、規定の回数手品を披露する】
「お? 進化した」
手品と奇術の違いはよくわからないが、何となく派手になるイメージだろうか。進化と表現されているが、スキルの使い方は変わらないようである。
「水面歩行とか、普通に便利そうだな」
いくつか並んだ〈奇術〉のスキルに目を通し、〈手品〉よりも大掛かりだと説明された意味を理解した。
この他にも人体浮遊であるとか、カーテンコールというものがあるようだ。
「それでは、良いお年を」
ふむふむとスキルを確認していると、ダイバーは店を後にしてしまった。どうやらハルマへの用事が済んだらしい。
「こういうところは、やっぱりNPCなんだよな……。良いお年をー」
立ち去るダイバーの背中に向かって手を振り、本来の目的である届け物をするために店の中へと入っていく。
「やあ、いらっしゃいませ。親父達は、迷惑かけてませんか?」
ハルマの姿を見るなり、マスターは笑みを浮かべながら尋ねてきた。
「迷惑だなんて……。いつも助けられてますよ」
「そうですか。良かったです。それで、今日は?」
「ご両親から、新年の贈り物を預かっていまして。届けに来たんですよ」
インベントリから預かっていた小包を取り出し、手渡す。
「あー。もう、そんな時期か……。わざわざ、ありがとうございます」
マスターは小包を開封すると、中から緑色のツノがモチーフになっているペンダントを取り出していた。
「ペンダント?」
新年の贈り物と聞いていたので、不思議に思う。
「あれ? 知りませんか?」
そう告げると、首元から同じデザインのペンダントを取り出した。違うのは、首にあるものには、ツノがいくつもぶら下がっている点だ。
「どういう由来かは知りませんが、この緑色のツノを身につけていると、魔除けになるって言い伝えがあって、昔から親しい人に無病息災を願って、1年の終わりに贈る風習があるんですよ。で、1年使い続けたペンダントを奉納して、新しい物と取り換えるんです」
「へー。それって、誰からもらってもご利益あるんですか?」
「ご利益があるかどうかはわかりませんが、縁起物ですからね。誰からもらっても嬉しいものですよ」
そういうと、少し自慢気に、いくつも付けられたツノをジャラジャラと揺らして見せる。
それを見つめながら、ハルマは「ふーん」と、しばらく考え事をするのだった。
この店のマスターであるウィリアムが、今回のクエストの届け先だ。
「あ! ダイバーさんだ!」
店が見えてくると、見慣れた不審人物が寛いでいるのが目に入り、マリーが飛んでいく。
シルクハットに真っ白なチョビ髭、目元を隠すマスクと全身を覆うマント。ハルマの〈手品〉の師匠であるNPCであり、マリーと出会うキッカケを作った人物でもある。
マリーに気づいたダイバーは、仮面でよくわからないながらも、穏やかな笑みを浮かべ手を振ってきた。
「やあ、マリー。元気にしてたかい?」
「うん! ハルマのおかげで毎日楽しいよ! ラフも大活躍してるよ!」
「おお、おお。それは良かった」
すっかり祖父と孫の様相である。
「お久しぶりです。ダイバーさん」
ハルマも遅れて到着すると、頭を下げる。
「はい、お久しぶりです。マリーも楽しくやれているようで、何よりです」
「ははは……。確かに、楽しくやってますね。トラブルも多いですけど」
「ほっほっほ。それは、この子の本分ですからね。調子が良い証拠ですよ。ところでハルマさん。手品の腕前も上がっているようです。新しい手品をお教えしますよ。今回から、ちょっと大掛かりなものを紹介しましょう」
そういうと、ダイバーはカバンの中からいくつかのアイテムを取り出し、ハルマに渡してきた。
『スキル〈手品Ⅱ〉が〈手品Ⅲ〉に成長し、〈奇術Ⅰ〉に進化しました』
『新しい奇術専用道具のレシピを覚えました』
『DEXが常時90増える』
【取得条件/規定値以上のDEXで、規定の回数手品を披露する】
「お? 進化した」
手品と奇術の違いはよくわからないが、何となく派手になるイメージだろうか。進化と表現されているが、スキルの使い方は変わらないようである。
「水面歩行とか、普通に便利そうだな」
いくつか並んだ〈奇術〉のスキルに目を通し、〈手品〉よりも大掛かりだと説明された意味を理解した。
この他にも人体浮遊であるとか、カーテンコールというものがあるようだ。
「それでは、良いお年を」
ふむふむとスキルを確認していると、ダイバーは店を後にしてしまった。どうやらハルマへの用事が済んだらしい。
「こういうところは、やっぱりNPCなんだよな……。良いお年をー」
立ち去るダイバーの背中に向かって手を振り、本来の目的である届け物をするために店の中へと入っていく。
「やあ、いらっしゃいませ。親父達は、迷惑かけてませんか?」
ハルマの姿を見るなり、マスターは笑みを浮かべながら尋ねてきた。
「迷惑だなんて……。いつも助けられてますよ」
「そうですか。良かったです。それで、今日は?」
「ご両親から、新年の贈り物を預かっていまして。届けに来たんですよ」
インベントリから預かっていた小包を取り出し、手渡す。
「あー。もう、そんな時期か……。わざわざ、ありがとうございます」
マスターは小包を開封すると、中から緑色のツノがモチーフになっているペンダントを取り出していた。
「ペンダント?」
新年の贈り物と聞いていたので、不思議に思う。
「あれ? 知りませんか?」
そう告げると、首元から同じデザインのペンダントを取り出した。違うのは、首にあるものには、ツノがいくつもぶら下がっている点だ。
「どういう由来かは知りませんが、この緑色のツノを身につけていると、魔除けになるって言い伝えがあって、昔から親しい人に無病息災を願って、1年の終わりに贈る風習があるんですよ。で、1年使い続けたペンダントを奉納して、新しい物と取り換えるんです」
「へー。それって、誰からもらってもご利益あるんですか?」
「ご利益があるかどうかはわかりませんが、縁起物ですからね。誰からもらっても嬉しいものですよ」
そういうと、少し自慢気に、いくつも付けられたツノをジャラジャラと揺らして見せる。
それを見つめながら、ハルマは「ふーん」と、しばらく考え事をするのだった。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。


【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる