魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり

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第6章 癒しの水を求めて

Ver.2/第49話

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 滑車を使い、再び長老樹の元にたどり着くと、早速用意してきたものを使ってみる。
「肥料は……っと。ああ、対象を指定できるのか」
 インベントリの中に積まれている肥料をひとつ使ってみると、視界の中にカウンターが表示された。そこには200の数字があり、使った肥料の数だけ隣に数字が加算されていく。どうやら、必要な肥料は200であるらしい。
「200で良かったのか、けっこう余るな」
 釣りが順調だったこともあり、肥料は上質なものも含めると350袋作れていたのだ。しかも、上質な肥料はカウントが2進んだので、更に必要数は少なく済む。
 200のカウントが終わると、周囲の雰囲気が切り替わった。
「ずいぶん即効性だな」
 長老樹の幹は彩りが良くなり、暗かった広場にも明るさが戻っている。
「次は、水だな」
 エルフの水瓶を取り出し、そこで手が止まる。
「あれ? 出てこない」
 水瓶を傾けたが、中から零れ落ちないのである。
「ああ。その水瓶は特殊な魔法が込められてるっす。魔力をこめると、噴き出すっすよ」
「おー。なんか、すごい。って、俺の魔力で足りるのか?」
 魔力とはMPである。当然、ハルマのMPは同じレベル帯では最低値である。
 が、それは杞憂だった。
 エルフの水瓶を使ってみると、わずかにMPを吸われただけで、水は勢いよく噴き出したのだ。
 それは長老樹の上にまで届き、雨を降らせるように全体に行き渡った。
「すごーい。ハルマ! 虹だよ!」
 降り注ぐ水は周囲の明かりに反射してキラキラと輝き、射し込む光を取り込んで虹を作り出していた。
「おー。キレイだなー」
 マリーと一緒になって景色を楽しんでいると、長老樹の活力は見る見る復活していった。
「葉っぱが青々としてきた」
 どことなく弱弱しくしなだれていた枝はピンと張りを持ち、カサカサだった表皮にもみずみずしさが戻っていた。
 何より、この場に漂う空気感が清涼さを増していた。
「これだけ元気になれば、〈癒しの水〉も戻っているはずですよ」
 トワネも気持ち良さそうに全身で長老樹から降り注ぐ優しい風を感じていた。
 
「これが……〈癒しの水〉?」
 前回来た時には緑色の濁った水だったものが、きれいな澄んだ水にはなっていた。しかし、近寄るまでもなくわかったことがある。
「湯気が出てるんですけど?」
「ハルマ様! 〈癒しの水〉っす! これに浸かると疲れなんか吹き飛ぶっす!」
 ハルマの引き攣った表情とは裏腹に、ニノエは嬉しそうに〈癒しの水〉に足を浸け、近くの岩場に座り込んで脱力する。
「足湯……かよ」
 うん。確かに〈癒しの水〉に間違いないとうな垂れるも、せっかくなので雰囲気だけでも足湯を楽しむことにするのだった。
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