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第5章 ダークエルフの集落
Ver.2/第37話
しおりを挟む「父……上?」
むくりと起き上がった男性に、ニノエは惚けたように呟いた。
「ニノエ。お前が治してくれたのか?」
生き返った男性が一番、何が起こったのか理解不能な様子である。それもそのはずだ。死んでいたのだから。
「いえ。私ではありません。こちらの旅のお方が……。風喰いも、こちらの方が倒してくれたようです」
ニノエの言葉をキッカケに、その場に衝撃とどよめきが駆け抜けた。
ハルマにも何がどうなってるのかわからないお祭り状態になってしまい、気づけば集落の広場で神様扱いされてしまっていた。
「ええぇぇぇ……」
ハルマ一行は、ダークエルフ達に囲まれ、お供え物をされていた。
「いやー。要らないですよ?」
風喰いを倒した英雄扱いされているが、自分は何もしていない。しいて言うなら、蘇生薬を使って死者をひとり生き返らせたくらいである。しかも、彼らにとっては一族の宝レベルの貴重品らしいのだが、ハルマにとっては売っても余るほど持っている消耗品のひとつにすぎない。
また、ニノエの父親が、この集落の長アルベルトだったのも、話が大袈裟になっている要因でもあった。
「なんと!? それでは道義に反します。我らエルフの一族は、永きにわたりこの森を風食いから守ってまいりました。ところが、ここ数十年、どういうわけか凶暴化しており、里にまで被害が及ぶところだったのです。何とかギリギリのところで踏み止まっておりましたが、満身創痍な者も増え、いよいよ覚悟も必要な時かと考えていたところなのです」
「気にしないでください。こっちは仲間がドラゴンの肉が欲しかっただけなので、それでじゅうぶんですよ?」
食べ物を差し出されても、ハルマでは味も匂いも食感もわからない。鉱石類もたくさん積まれているが、この森で採取できるものと変わりがないため、さほど魅力を感じていなかったのだ。
「ドラゴンの肉、ですか……。しかし、それだけでは……」
アルベルトは何とか感謝を形にして渡したいと頭を抱える。
と、そこに歩み寄る人物がいた。
「父上。それでしたら、私がハルマ様のお側でお仕えするというのはどうでしょうか?」
スッと地に片膝をついて、首を垂れる。
「おお! それは良い考えだ! どうでしょう? ハルマ様。このニノエ、まだ年若いとはいえ、弓と短剣の扱いには秀でております。ここでは珍しく、魔法も一通り使えますので、お役に立てると思うのですが」
ニノエはエルフ族らしく小柄であるが、見た目だけならハルマと同い年くらいだろうか。ダークエルフという割には肌も透き通るように白である。人間種との違いも、パッと見ただけでは耳の形状が違うくらいだ。しかし、エルフ族は長命であることで有名なので、彼らの年若いの基準は当てにならない。
どうするべきか悩んでいたハルマだったが、話しは選択を待つことなく進んでいく。
「それではハルマ様。このニノエ、命ある限りお供させていただきます」
父親にするのと同等か、それ以上の丁寧さを持ってニノエは宣言してしまったのである。
「おっと、これも拒否権ないパターンかあ……」
あらー、と思ったが、こういう流れにもすっかり慣れっこである。
「はあ、わかったよ。よろしくお願いします」
他のお供に比べると、一緒に行動しても不自然さはあまりないため、案外重宝するかもしれないなと思いながら、ハルマは片膝をついてかしこまったままのニノエに立ち上がるように促す。
ニノエはハルマの言葉に従い立ち上がると、それまでどことなく上品さが漂っていた表情を崩し、ニカッとした笑顔を作るのだった。
そこで、視界の中にアナウンスが表示された。
『クエスト/風喰いの脅威をクリアしました』
『クリア報酬として、ダークエルフとの盟約が結ばれました』
『ダークエルフのニノエが仲間になりました』
『詳細はなかまメニューから確認できますが、テイムモンスターと同じ扱いになります』
『ニノエはプレイヤーと同じ経験値を獲得し、プレイヤーと同様に成長していきますが、ステータスポイントの振り分けは行えません』
こうして、思わぬ仲間がまたひとり増えたのだった。
むくりと起き上がった男性に、ニノエは惚けたように呟いた。
「ニノエ。お前が治してくれたのか?」
生き返った男性が一番、何が起こったのか理解不能な様子である。それもそのはずだ。死んでいたのだから。
「いえ。私ではありません。こちらの旅のお方が……。風喰いも、こちらの方が倒してくれたようです」
ニノエの言葉をキッカケに、その場に衝撃とどよめきが駆け抜けた。
ハルマにも何がどうなってるのかわからないお祭り状態になってしまい、気づけば集落の広場で神様扱いされてしまっていた。
「ええぇぇぇ……」
ハルマ一行は、ダークエルフ達に囲まれ、お供え物をされていた。
「いやー。要らないですよ?」
風喰いを倒した英雄扱いされているが、自分は何もしていない。しいて言うなら、蘇生薬を使って死者をひとり生き返らせたくらいである。しかも、彼らにとっては一族の宝レベルの貴重品らしいのだが、ハルマにとっては売っても余るほど持っている消耗品のひとつにすぎない。
また、ニノエの父親が、この集落の長アルベルトだったのも、話が大袈裟になっている要因でもあった。
「なんと!? それでは道義に反します。我らエルフの一族は、永きにわたりこの森を風食いから守ってまいりました。ところが、ここ数十年、どういうわけか凶暴化しており、里にまで被害が及ぶところだったのです。何とかギリギリのところで踏み止まっておりましたが、満身創痍な者も増え、いよいよ覚悟も必要な時かと考えていたところなのです」
「気にしないでください。こっちは仲間がドラゴンの肉が欲しかっただけなので、それでじゅうぶんですよ?」
食べ物を差し出されても、ハルマでは味も匂いも食感もわからない。鉱石類もたくさん積まれているが、この森で採取できるものと変わりがないため、さほど魅力を感じていなかったのだ。
「ドラゴンの肉、ですか……。しかし、それだけでは……」
アルベルトは何とか感謝を形にして渡したいと頭を抱える。
と、そこに歩み寄る人物がいた。
「父上。それでしたら、私がハルマ様のお側でお仕えするというのはどうでしょうか?」
スッと地に片膝をついて、首を垂れる。
「おお! それは良い考えだ! どうでしょう? ハルマ様。このニノエ、まだ年若いとはいえ、弓と短剣の扱いには秀でております。ここでは珍しく、魔法も一通り使えますので、お役に立てると思うのですが」
ニノエはエルフ族らしく小柄であるが、見た目だけならハルマと同い年くらいだろうか。ダークエルフという割には肌も透き通るように白である。人間種との違いも、パッと見ただけでは耳の形状が違うくらいだ。しかし、エルフ族は長命であることで有名なので、彼らの年若いの基準は当てにならない。
どうするべきか悩んでいたハルマだったが、話しは選択を待つことなく進んでいく。
「それではハルマ様。このニノエ、命ある限りお供させていただきます」
父親にするのと同等か、それ以上の丁寧さを持ってニノエは宣言してしまったのである。
「おっと、これも拒否権ないパターンかあ……」
あらー、と思ったが、こういう流れにもすっかり慣れっこである。
「はあ、わかったよ。よろしくお願いします」
他のお供に比べると、一緒に行動しても不自然さはあまりないため、案外重宝するかもしれないなと思いながら、ハルマは片膝をついてかしこまったままのニノエに立ち上がるように促す。
ニノエはハルマの言葉に従い立ち上がると、それまでどことなく上品さが漂っていた表情を崩し、ニカッとした笑顔を作るのだった。
そこで、視界の中にアナウンスが表示された。
『クエスト/風喰いの脅威をクリアしました』
『クリア報酬として、ダークエルフとの盟約が結ばれました』
『ダークエルフのニノエが仲間になりました』
『詳細はなかまメニューから確認できますが、テイムモンスターと同じ扱いになります』
『ニノエはプレイヤーと同じ経験値を獲得し、プレイヤーと同様に成長していきますが、ステータスポイントの振り分けは行えません』
こうして、思わぬ仲間がまたひとり増えたのだった。
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