132 / 276
第5章 ダークエルフの集落
Ver.2/第33話
しおりを挟む
湖の中に入って調べてみたいという願望もあったのだが、さすがに踏み止まった。ハルマのDEXに偏ったステータスであっても泳ぎのスキルは難なく取れることは知っている。しかし、水中に連れていける仲間がいないため、単独行動しなければならないのだ。
マリーだけならついて来られるだろうが、彼女だけでは戦力にならない。当然、ハルマ自身が戦力として期待できない。ユララはくらげである上に、水の大陸の森の守り神であるので水の中の方が得意かもしれないが、残念ながら戦闘面では期待できない。
トワネの話だと、モンスターがいない可能性も高かったが、この世界の神は基本、どこかポンコツである。
水神も魔王の手にかかり、力を失っている可能性も大いにあるのだ。
「とりあえず、ここの調査は保留かな? 先に、さっきの滝から調べてみよう」
このエリアは、大雑把にだが全体を把握できていた。
あちこちに気になる場所はあったが、全部を一度に回るのは骨が折れる。
下ってきた川を遡り、滝を目指す。
落差50メートルほど、幅も15メートルはありそうな大瀑布は、水が叩きつけられる音と風、舞い散る水滴が幻想的な風景を作り出す。
滝つぼも大きく、水で削られたのかゴツゴツした岩場になっている。
「滝といえば、裏に隠された洞くつだよなー」
目を凝らすが、水量が多いためよくわからない。
近寄って確かめてみたいが、流れ落ちる水の勢いも凄まじいために、吹き飛ばされてしまいそうだ。実際、風圧によるノックバックや、水の塊による打撃系のダメージが発生することもあるので、注意しなければならない。
どこかに近寄れるルートがないかと探していると、それは突然起こった。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
余りの驚きに、変な声を出してしまう。
何しろ、滝の裏側から突如、巨大なナニカが飛び出したのだ。
「なんじゃありゃ!?」
思ってもいなかったイベントの発生に、ゲームの中であるというのに腰を抜かしそうになる。
「あやつは……。風喰いじゃな」
ヤタジャオースが教えてくれた。
「風喰い?」
「聞いたことがあります! この大陸の風を喰い、淀んだ空気に変えてしまうという邪竜です!」
「邪竜って……。ヤタジャオースの親戚か?」
「フンッ! あんな下等種に我の気高き血統が混ざっておるはずもないわ」
「あれで下等種なんだ。ヤタジャオース、全盛期はすごかったんだろうなー。でも、永いこと封印されてたんだろ? 育ってるんじゃないか?」
「ふーむ。多少デカくなっておったかの? じゃが、手に負えないほどではなかろう」
これが見栄なのか、冷静な分析なのか判断がつかないところが困ったところである。
しかし、ここで思わぬ提案が出された。
「旦那様! ドラゴンです! あれは美味しそうです! 捕まえに行きましょう!」
ずっと黙って飛び去った風喰いの後姿を目で追っていたズキンが、キラキラした眼差しを向けながら迫ってきたのである。
「えー? 嫌だよお。絶対強いだろ? あいつ」
「そんなあ。あちきも滅多に見せない本気を出しますからあ」
「いや、本気は常に出せよ。それに、ズキンだけ頑張ってもなあ……」
「我は手伝っても良いぞ? どちらが格上か教えてやろう」
「ちょ……。ヤタジャオースまで……」
「ハルマ殿。わたしからもお願いできないでしょうか? あの邪竜のせいで、この大陸の風が淀んでしまうのは、見過ごせないのです」
ズキンとヤタジャオースの我儘には付き合いきれないと思ったが、トワネからのお願いとなると少し話が変わってしまう。
「おおぅ……。わかったよ。行くよ。行きますよ!」
こうして、思わぬミッションがスタートしたのだった。
マリーだけならついて来られるだろうが、彼女だけでは戦力にならない。当然、ハルマ自身が戦力として期待できない。ユララはくらげである上に、水の大陸の森の守り神であるので水の中の方が得意かもしれないが、残念ながら戦闘面では期待できない。
トワネの話だと、モンスターがいない可能性も高かったが、この世界の神は基本、どこかポンコツである。
水神も魔王の手にかかり、力を失っている可能性も大いにあるのだ。
「とりあえず、ここの調査は保留かな? 先に、さっきの滝から調べてみよう」
このエリアは、大雑把にだが全体を把握できていた。
あちこちに気になる場所はあったが、全部を一度に回るのは骨が折れる。
下ってきた川を遡り、滝を目指す。
落差50メートルほど、幅も15メートルはありそうな大瀑布は、水が叩きつけられる音と風、舞い散る水滴が幻想的な風景を作り出す。
滝つぼも大きく、水で削られたのかゴツゴツした岩場になっている。
「滝といえば、裏に隠された洞くつだよなー」
目を凝らすが、水量が多いためよくわからない。
近寄って確かめてみたいが、流れ落ちる水の勢いも凄まじいために、吹き飛ばされてしまいそうだ。実際、風圧によるノックバックや、水の塊による打撃系のダメージが発生することもあるので、注意しなければならない。
どこかに近寄れるルートがないかと探していると、それは突然起こった。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
余りの驚きに、変な声を出してしまう。
何しろ、滝の裏側から突如、巨大なナニカが飛び出したのだ。
「なんじゃありゃ!?」
思ってもいなかったイベントの発生に、ゲームの中であるというのに腰を抜かしそうになる。
「あやつは……。風喰いじゃな」
ヤタジャオースが教えてくれた。
「風喰い?」
「聞いたことがあります! この大陸の風を喰い、淀んだ空気に変えてしまうという邪竜です!」
「邪竜って……。ヤタジャオースの親戚か?」
「フンッ! あんな下等種に我の気高き血統が混ざっておるはずもないわ」
「あれで下等種なんだ。ヤタジャオース、全盛期はすごかったんだろうなー。でも、永いこと封印されてたんだろ? 育ってるんじゃないか?」
「ふーむ。多少デカくなっておったかの? じゃが、手に負えないほどではなかろう」
これが見栄なのか、冷静な分析なのか判断がつかないところが困ったところである。
しかし、ここで思わぬ提案が出された。
「旦那様! ドラゴンです! あれは美味しそうです! 捕まえに行きましょう!」
ずっと黙って飛び去った風喰いの後姿を目で追っていたズキンが、キラキラした眼差しを向けながら迫ってきたのである。
「えー? 嫌だよお。絶対強いだろ? あいつ」
「そんなあ。あちきも滅多に見せない本気を出しますからあ」
「いや、本気は常に出せよ。それに、ズキンだけ頑張ってもなあ……」
「我は手伝っても良いぞ? どちらが格上か教えてやろう」
「ちょ……。ヤタジャオースまで……」
「ハルマ殿。わたしからもお願いできないでしょうか? あの邪竜のせいで、この大陸の風が淀んでしまうのは、見過ごせないのです」
ズキンとヤタジャオースの我儘には付き合いきれないと思ったが、トワネからのお願いとなると少し話が変わってしまう。
「おおぅ……。わかったよ。行くよ。行きますよ!」
こうして、思わぬミッションがスタートしたのだった。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。


【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる