魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり

文字の大きさ
上 下
121 / 276
第3章 トリック・オア・トリート!

Ver.2/第22話

しおりを挟む
 魔女の行動パターンも把握し始め、急場の連携も上手くいくようになると火力は豊富なメンバーである。一気に魔女のHPバーは削られていき、3回目のカボチャ設置が終わった頃には半分にまで減っていた。
 ただし、魔女の魔法防御力が高く、アヤネの魔法攻撃はあまり効果がないことがわかり、途中からカボチャの処理に回っていた。代わりにズキンがモカとスズコに加わる編成に切り替わっている。
「さて……。パターンが変わるか?」
 ゴリの後ろで、全体の指揮をとっていたスズコが呟いた。
 多くのゲーム同様、ボスはHPの減少具合により、戦闘パターンを変えることが多いのだ。そして、そのタイミングは50%、25%のことが多い。
「ビンゴっす! パターン変わります!」
 大楯を構えながらゴリが叫んだ。
 これまでは、カボチャを破壊されるとしばらく間を置いてから、再びカボチャを設置するために飛び回っていたのだが、HPが半分を切り、周囲のカボチャが全て破壊されたところで杖を取り出したのだ。
「魔法が強力になる?」
 ミコトが予測を口にするが、半分正解、半分外れであった。
 それまで火属性の魔法主体だったところに、複合属性の魔法に切り替わったのだ。複数の属性を持つ魔法は、往々にして強力なことが多い。
「何? この魔法」
 魔女が杖を振り上げると、頭上に雨雲のようなものが広がり、ボトリと黒い塊が落下してきた。その数は3つあり、他にも落下位置がランダムと思われる雷も降り注ぐ。
「わかんないけど、あまり良い予感はしないわね」
 スズコは油断なく周囲を見回す。
「コウモリ?」
 ボトリと落ちた影は、宙に浮かびコウモリの形となって飛びかかってきた。
「ちょっ!? これ、受け止めちゃって大丈夫っすか!?」
「わかんないけど、犠牲になれ!」
「そんなあぁ」
 ゴリは非難めいた声を発したが、しっかりと大楯で受け止める。
 直後。
「い!?」
 コウモリの影はゴリにべちゃりと張り付いてしまった。
 それを逃さず、魔女の火球が飛んでくる。
「先輩! とても嫌な予感がします!」
「気が合うわね。あたしもよ!」
 魔法を受けてはいけないと皆が思ったが、しかし、ゴリは律儀に大楯使いの使命を果たして見せた。
「いぎゃー!」
「わお」
 モカが思わず声を上げたのも仕方ない。これまで魔法を受けても半分も削られなかったゴリのHPが、一気に尽きてしまったからだ。
「あのコウモリ受けると、魔法防御力が大幅に減少するのね。ゴリの犠牲は無駄にはしないわ」
「いやいや。蘇生薬なら余裕がありますから」
 呆気なくスズコに見捨てられたゴリだったが、すぐさまハルマの作った天冥の霊水が使われる。ハルマが貢献できることといったら、消費アイテムをばんばん使うことくらいであると、途中からMPポーションを大盤振る舞いしていた。それもあってMPを気にせず大技を使えているという面もある。
「助かった、ハルマ君。それにしても、ひどいっすよ先輩」
「にゃははは。良いじゃないの。あたしだって使う気はあったわよ?」
「本当っすか?」
「ホント、ホント。それより、次のコウモリ、来るよ!」
 気心の知れた相手だからこその軽口も、とどまることを知らない攻撃に中断させられる。
「うぇ!? これ、物理攻撃効かないよ!?」
 今度はゴリに当たる前にモカが槍を突き立てたのだが、攻撃判定されることなくモカに張り付いてしまった。
「モカさん、後ろに!」
 魔女はコウモリを受けた相手を狙って即座に魔法を放っていた。
「ねーちゃん、どうする? コウモリ避けながらだと、近寄れないぞ?」
「そうかといって、ゴリを盾に使うわけにもいかないもんねぇ」
「とりあえず、ボクがコウモリ受けて、ゴリさんにかばってもらうよ」
 チップとスズコの方針が固まらない中、シュンがその場しのぎの案を出す。
 ところが、これでいけると思ったところで、コウモリには別の効果もあることが判明した。
「え!? ダメだ、チップ! これ、AGI低下の効果もある! 3つ受けると身動き取れなくなる!」
「マジかよ!?」
 そうして、あえなくシュンも魔女の火球に焼かれてHPをゼロにしてしまい、すぐさまハルマの蘇生薬で復活することになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...