魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり

文字の大きさ
上 下
119 / 276
第3章 トリック・オア・トリート!

Ver.2/第20話

しおりを挟む
 始まりの町であればどこでも良かったのだが、何となく縁のあるウィンドレッドに向かう。ここは、マリーと出会った町でもある。
「マリーはお菓子いらないのか?」
 今ではいたずら天使に進化しているが、元は、いたずらゴーストだったのだ。
「ん? マリーはいつももらってるから、だいじょうぶだよ?」
 食べる必要はないが、食べられると知ってからは何となく定期的にプレゼントするようにしていた。その際、これも何となくだが、お菓子を購入するのは大工道具を譲ってくれたケーキ屋を利用している。
 ただ、ハルマが与えなかったとしても、知らぬ間にズキンが持ち込んだものを分けてもらっているので、それでじゅうぶんな様子ではあった。

 ラフは仕舞ってあるが、カラス姿のズキンは肩に載せたままである。トワネにユララ、ヤタジャオースは町に向かう前に自宅に戻り、置いてきた。町の中もハロウィン仕様であちこちに人形やぬいぐるみと飾り付けがされていたこともあり、上手いこと紛れることができたかもしれないが、さすがに数が多いと目立ちすぎると思ったのである。

「プリンと他のお菓子、交換できる人いませんかー?」
「コウモリの使い魔の情報、探してます! ネタバレありのため、詳しくは直接聞きに来てください!」
「お菓子、買いまーす! 値段は相談にのります!」

 予想していた通り、町中ではお菓子を巡ってトレードが行われたり、探す手間を省いてゴールドで集めようとしたりする者でにぎわっていた。
 そんな町中の様子を感じながら、転移してきた中心地から少し歩くと、イベント用の〈いたずらゴースト〉はすぐに見つけることができた。
 マリーとは少し雰囲気の違う、小さな男の子のゴーストだ。
「トリック・オア・トリート! ぼくはね。プリンが大好物!」
 近寄っただけで挨拶代わりにお菓子を要求された。
「はいよ。プリンな」
 チップだけでなく、集めたお菓子の中からプリンを選択し、男の子のゴーストに渡すと、ハロウィンコインなるアイテムを入手した。
「コイン3枚か。ゴーストによって変わるのかな?」
 町の至る所で同じような光景が散見される中、次の〈いたずらゴースト〉を探していく。宿屋の軒先、教会跡地、ただの路地裏。普段、この〈いたずらゴースト〉達はどうやって過ごしているのか気になったが、何か問題をかかえているのかもしれないし、ただのイベント用NPCかもしれない。ひとつだけハッキリしていることは、マリーとは同じ種類ではないということくらいだろう。
 そうやって町中を探し、手持ちのお菓子も少なくなってきた頃、新しい〈いたずらゴースト〉を見つけていた。
「おーい。あなたは、どのお菓子が欲しいの?」
「トリック・オア・トリート! あたしはね。クッキーとシュークリームとイチゴのタルトが大好物なの!」
 お菓子を複数要求されることは今までにもあった。しかし、イチゴのタルトはジャック・オー・ランタンから見つかったことはなかった。
「あちゃー。レアなお菓子もやっぱりあったのかー」
 呑気にチップが頭をかいていたが、近くから不穏な声が聞こえてきた。
「くそー。こんな町中でボス出るとか、予想外だぞ!?」
 誰とも知れぬプレイヤーの声が耳に届くのと同時だった。
「お菓子くれないの? だったら、イタズラしちゃえー!!」
 刹那。ハルマ達は見知らぬ空間に飛ばされていた。
「「「「「「「「え?」」」」」」」」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...