魔王の右腕、何本までなら許される?

おとのり

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第2章 生と死と

Ver.2/第13話

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「スキル〈覆面〉は、っと。覆面の種類によって特定のステータスを自身のステータスの中で、もっとも高い数値に変化させることができる。その代わり、他のステータスは半減し、これによって上がった数値で新たにスキルを取得することはない、か。俺みたいに偏ったステータスだと、面白いことできそうだなー。DEXが下がる以外、デメリットもデメリットじゃないし。ってか、満遍なく育ててる人だと、使う意味ないスキルか。しかし、これが先にあったら、知恵と力で封じられし遺跡も楽にやれたかもしれないのになあ……」
 狼の場合、ワーウルフとなりSTRが上がる。
 兎の場合、ワーラビットとなりAGIが上がる。
 狐の場合、妖狐となりINTが上がる。
 牛の場合、ミノタウロスとなりVITが上がる。
 猿の場合、ハヌマーンとなりDEXが上がる。
 闘技場で戦った五闘士も、この数値が高い相手だったことが窺える。そのため、妖狐は魔法を使ってきたのだろう。
 新しいスキルに興味もあったが、ハルマの意識はすぐに本来の目的に戻っていた。
「それはそうと、今回も百厄の薬取れなかったじゃないか。こりゃ、しばらく通わないと数がそろいそうにないな」
 
 それから数日、足繁く雨降りの迷宮に通っては百厄の薬を集めていた。途中から、難易度をひとつ上げても労力に大差がない上に、ドロップ率も上がることがわかったので、みのかさタウロスの迷宮を卒業し、ミノタウロスの待つ迷宮を主に周回することになっていた。
 この間、〈トラップ解除〉のスキルはⅡからⅣにまで成長していた。

「さて。〈贋作〉でコピーした天冥の霊水だと、蘇生薬としては最低限の性能とはいえ、回復効果が半分もなかったから、生き返った直後にまた死んじゃう可能性が大きい。ちゃんとした作り方を確立しないとな」
 素材は、思っていた以上にシンプルなものだ。
 ポーションとMPポーションの素材に、百厄の薬を加えるだけである。
 しかし、素材が4つもあると、組み合わせや加工の仕方はいくものパターンが考えられた。
 ただ、いくつかヒントのようなものはあった。
 単純にポーションを作ってから、MPポーションを追加で加えても、失敗に終わった経験がすでにあるからだ。これだけでだいぶパターンは絞られる。
 問題は、ポーションとMPポーションのどちらをベースに仕上げていくのが正解か、という点である。ここから先は、地道な作業のくり返しである。
 そこが〈調合〉の難しいところでもあり、面白いところでもあった。
「ポーションとMPポーションを直接混ぜると失敗するから、ポーションを作って百厄の薬に混ぜてから、MPポーション、もしくは抽出したMPをそのまま加える。それか、MPポーションに百厄の薬を混ぜてから、ポーションを加える。このどれかだとは思うんだよな」
 ポーションとMPポーションは、生産職として繰り返し作ってきたアイテムであり、ハルマの活動を資金面で支えてくれているアイテムでもある。
 日々、品質向上のために改良を繰り返しているのだ。これまで培ってきた感覚が、自然と正解へのルートを示してくれている気がした。
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