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第2章 生と死と
Ver.2/第7話
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「え!? ハルちゃん、また増えたの?」
〈魔王城への挑戦〉の直前にハルマの村を仮拠点にしてから、モカはずっと居座っていた。本人曰く「だって、居心地いいんだもん」だそうである。
そんなモカに、スタンプの村に戻ってきたところで出くわしたので、ヤタジャオースを紹介しておく。
「いやー。もっと別のものがあると思ってたんですけどね」
ダミーで用意されていた宝箱の中身が魔法書だったこともあり、魔法職向きの何かが封印されていると予想していたのである。しかし、よくよく考えてみれば、魔法職にSTRを要求するわけもないので、出発点から間違っていたのだ。
それでも、その思い込みが良くも悪くも物事を動かすのだから、何が吉と出るがわからないものである。
「今度は正統派のドラゴンですか。そろそろ巨大ロボあたりでも連れてくると思ってたけど、それはまだ?」
「いや。何言ってるんですか? これ以上そう簡単にポンポン増えるわけないですよ。だいたい、巨大ロボはこの世界観だとダメじゃないです? マシン系のモンスターはいるみたいですけど」
「なーに言ってるのよお。次から次にポンポン増やしておいてっ! まあ、巨大ロボは確かに合わないか」
モカはイヒヒと笑ったかと思ったら、真面目な顔になって納得してみせる。
普通であれば、この後一緒にどこか行こうか? と、なることが多いのだろうが、ふたりともソロプレーが染みついていることもあり、このまま別のことを始めるためにその場でわかれることになった。
ただ、その前にひとつ頼まれる。
「そうだ。ハルちゃんってHPとMPを同時に回復できるポーション、作れない?」
「あれば便利でしょうけど、見たことないですねえ」
「やっぱりないのかなあ? うち、戦い方が雑だから、気づいた時にはヤバいことが多いんだよねぇ」
「なんか……、想像できます」
そもそもモカは、現実世界では激しい運動が苦手だという理由からGreenhorn-onlineを始めていた。
運動音痴というわけではない。むしろ、彼女は運動神経は良い方なのだが、胸がデカい、というシンプルな理由が存在した。
「ちょっと走るだけでコレが千切れそうなほど暴れるわけよ。それだけでも泣くほど痛いのに、男どもだけじゃなくて、女からも羞恥の視線で眺められるんだよ? そりゃ、運動なんかしたくなくなるわよ。その点、この体だと無茶苦茶に動いてもコレが暴れないんだから、気持ち良いわよー」
自分の胸を両手で鷲掴みしながら、圧倒的多数に理解不能なことを愚痴られ、ハルマも困ったものである。ちなみに、他のプレイヤーの体には触ることはできないので、すり抜けてしまう。自身の体は触ることができるのだが、形状が変化するほど摘まんだり引っ張たりはできない。
戦闘中であれば相手に触ることも可能なのだが、それは装備品同士がぶつかる場合に限られるので、掴んで放り投げる、というようなことはスキルを使わなければできない。NPCの場合も基本は同じなのだが、スキルなどがなくとも肩に止まったり、トワネに乗れたりするので、だいぶ融通が利くようである。
何はともあれ、そういった理由もあったせいで、モカの戦い方は派手なのだ。
とにかく良く動く。ストレス発散とばかりに暴れ回る。
自分がダメージを受けるのも気にせず攻撃し続けるのだから、ちょっと戦いが長引くと深刻なダメージを受けていることがあるのだ。
「ハイブリッドポーションは俺も興味あるので、探してみますね」
「そうしてくれると助かる。見つかったらお願いねー」
「はーい」
こうしてハルマに、目標がひとつ追加されたのだった。
〈魔王城への挑戦〉の直前にハルマの村を仮拠点にしてから、モカはずっと居座っていた。本人曰く「だって、居心地いいんだもん」だそうである。
そんなモカに、スタンプの村に戻ってきたところで出くわしたので、ヤタジャオースを紹介しておく。
「いやー。もっと別のものがあると思ってたんですけどね」
ダミーで用意されていた宝箱の中身が魔法書だったこともあり、魔法職向きの何かが封印されていると予想していたのである。しかし、よくよく考えてみれば、魔法職にSTRを要求するわけもないので、出発点から間違っていたのだ。
それでも、その思い込みが良くも悪くも物事を動かすのだから、何が吉と出るがわからないものである。
「今度は正統派のドラゴンですか。そろそろ巨大ロボあたりでも連れてくると思ってたけど、それはまだ?」
「いや。何言ってるんですか? これ以上そう簡単にポンポン増えるわけないですよ。だいたい、巨大ロボはこの世界観だとダメじゃないです? マシン系のモンスターはいるみたいですけど」
「なーに言ってるのよお。次から次にポンポン増やしておいてっ! まあ、巨大ロボは確かに合わないか」
モカはイヒヒと笑ったかと思ったら、真面目な顔になって納得してみせる。
普通であれば、この後一緒にどこか行こうか? と、なることが多いのだろうが、ふたりともソロプレーが染みついていることもあり、このまま別のことを始めるためにその場でわかれることになった。
ただ、その前にひとつ頼まれる。
「そうだ。ハルちゃんってHPとMPを同時に回復できるポーション、作れない?」
「あれば便利でしょうけど、見たことないですねえ」
「やっぱりないのかなあ? うち、戦い方が雑だから、気づいた時にはヤバいことが多いんだよねぇ」
「なんか……、想像できます」
そもそもモカは、現実世界では激しい運動が苦手だという理由からGreenhorn-onlineを始めていた。
運動音痴というわけではない。むしろ、彼女は運動神経は良い方なのだが、胸がデカい、というシンプルな理由が存在した。
「ちょっと走るだけでコレが千切れそうなほど暴れるわけよ。それだけでも泣くほど痛いのに、男どもだけじゃなくて、女からも羞恥の視線で眺められるんだよ? そりゃ、運動なんかしたくなくなるわよ。その点、この体だと無茶苦茶に動いてもコレが暴れないんだから、気持ち良いわよー」
自分の胸を両手で鷲掴みしながら、圧倒的多数に理解不能なことを愚痴られ、ハルマも困ったものである。ちなみに、他のプレイヤーの体には触ることはできないので、すり抜けてしまう。自身の体は触ることができるのだが、形状が変化するほど摘まんだり引っ張たりはできない。
戦闘中であれば相手に触ることも可能なのだが、それは装備品同士がぶつかる場合に限られるので、掴んで放り投げる、というようなことはスキルを使わなければできない。NPCの場合も基本は同じなのだが、スキルなどがなくとも肩に止まったり、トワネに乗れたりするので、だいぶ融通が利くようである。
何はともあれ、そういった理由もあったせいで、モカの戦い方は派手なのだ。
とにかく良く動く。ストレス発散とばかりに暴れ回る。
自分がダメージを受けるのも気にせず攻撃し続けるのだから、ちょっと戦いが長引くと深刻なダメージを受けていることがあるのだ。
「ハイブリッドポーションは俺も興味あるので、探してみますね」
「そうしてくれると助かる。見つかったらお願いねー」
「はーい」
こうしてハルマに、目標がひとつ追加されたのだった。
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